【Web版】大家さん、従魔士に覚醒したってよ(書籍タイトル:俺のアパートがダンジョンになったので、最強モンスターを従えて楽々攻略 大家さん、従魔士に覚醒したってよ)
第342話 僕にとっての宝箱はここにあった!
第342話 僕にとっての宝箱はここにあった!
年が明けて2027年の元旦、藍大は昨日までにコツコツと作って来た重箱に入ったおせち料理を朝からテーブルの上に並べていた。
「うわぁ、美味しそ~!」
『僕にとっての宝箱はここにあった!』
「吾輩も同感だ! 重箱のまま宝箱としてダンジョンに設置しても良さそうではないか!」
「早く食べたいのニャ!」
『パパ、早く食べよ!』
真っ先に駆け付けた食いしん坊ズがテーブルに広げられたおせち料理に目を輝かせている。
「色鮮やかで綺麗だね」
「良い・・・匂い・・・」
「マスターが正月から頑張ってるのよっ」
「私も家庭菜園で貢献したですが、ここまでの物ができるとは驚いたのです」
『それな( ´-ω-)σ』
一足遅れてやって来たサクラ達も藍大の作ったおせち料理に目を奪われた。
黒豆と栗きんとんの栗、紅白なますの人参、酢蓮根等はメロの家庭菜園で準備されたから、<
それに加え、ブラドが全面協力してシャングリラダンジョンでおせち料理の素材になりそうなモンスターを用意したから、調味料以外シャングリラで全て調達したおせちがここにある訳だ。
「驚いてもらえたなら頑張った甲斐あったな」
「あい」
「優月もそう思ってくれるのか?」
「あい!」
「そうかそうか。優月も食べられるように栗きんとんとかは調整したから、ゆっくりと味わってくれよな」
「お~!」
みんなで美味しく食べている中、母乳がご飯の蘭は除いて優月が同じ物を食べられないのはかわいそうだ。
それゆえ、藍大は優月が仲間外れにならないように優月でも食べられるように一部のおせちを調整している。
家族と一緒の物を食べたいと料理に拘りを持つあたり、舞の血をよく引いていると言えよう。
『ふむ、本当に豪華なおせちじゃ。人の身でありながらここまでのおせちを作り上げるとは、藍大は誠に大した奴なのじゃ』
「伊邪那美様、ありがとう。お供えしたら伊邪那美様も食べられるんだろ?」
『その通りじゃ。お主の料理のおかげで妾の力の回復速度も僅かじゃが上がっておる。今日のおせちにも期待できそうじゃ』
伊邪那美は神棚に供えてもらえれば料理を食べることができる。
それゆえ、毎日三食お供えを頂いて少しずつではあるが確実に力を回復させているのだ。
さて、朝食をこれ以上お預けにする訳にもいかないから新年の挨拶を済ませて食べ始めることにした。
「あけましておめでとう」
「「「・・・『『おめでとう!』』・・・」」」
「今年も健康で充実した年になるよう頑張ろう。いただきます!」
「「「・・・『『いただきます!』』・・・」」」
藍大には挨拶を長々とするつもりはなかった。
豪華なおせち料理を目の前にして食いしん坊ズに我慢させるのは酷だとわかっているからである。
藍大が手短に挨拶を終わらせて号令をかけると、早速食いしん坊ズがおせちをバクバクと食べ始めた。
年始は朝からテレビではお笑い番組がやっているが、逢魔家では食べるのに集中するためテレビの電源は消えたままである。
ちなみに、喧嘩にならないように藍大が余分に作っているから取り合いになるようなことはない。
いや、そもそも藍大が食事を前に喧嘩させるはずがないし、もしも喧嘩しようものなら藍大から食事を没収されるかもしれないと考えて誰も揉めたりしない。
逢魔家の食卓は平和に楽しいものだった。
朝食とその片付けが終わって食休みに入ると、藍大の隣や膝の上を巡って舞と従魔達のポジション争いが始まる。
新年初めての戦いの勝者は舞とサクラ、リルだった。
藍大がソファーに座る時には、それぞれ優月と蘭を抱っこした舞とサクラがぴったりと両脇を固めており、リルは<
仲良しトリオは食後にテレビをつけて油断していたため、この戦いで出遅れてしまったのだ。
ゲンとブラド、ミオは戦いに不参加であり、フィアは膝の上を狙っていたけれどリルの速さには敵わなかった。
「くっ、紙一重だったのよっ」
「ゴルゴン、それはどれだけ分厚い紙ですか? 私達の完敗です」
『ε=o(≧皿≦○゙』
『うぅ~、リルが速いよ~』
悔しがる仲良しトリオとフィアに対して舞達はドヤ顔を披露した。
「フッフッフ。私の鉄壁の守りを甘く見たら駄目だよ~?」
「私が主の隣に座るのは運命だったの」
『ワフン♪ 疾きこと風の如くだよ♪』
年始から力の無駄遣いをしているが、藍大はツッコまないで好きなようにさせた。
しばらくテレビを見ながらのんびりしていると、初詣の人だかりをLIVE中継している番組を見て舞はふと思ったことを口にした。
「去年は初詣に行ったけど、今年は行かないよね?」
「そりゃ我が家には伊邪那美様がいるからな。神社に行くよりも家で伊邪那美様を拝んでた方がご利益はあるだろ。他にも理由はあるけど」
「他の理由?」
舞に思い当たる理由がなかったので首を傾げると、藍大は聞いていない振りをして耳をこちらに傾けている伊邪那美を指差した。
「他の神様にお祈りしてたら伊邪那美様が妬くじゃん」
「なるほど~」
『別に妬かないのじゃ!』
伊邪那美がノータイムで反応しているため、藍大も舞もやっぱり聞いていたのかと伊邪那美に温かい目を向けた。
『な、なんじゃその目は?』
「「別に」」
『伊邪那美様』
『なんじゃリル?』
『屋台の食べ物に興味はあるけど、伊邪那美様が嫌なら僕は初詣に行かないよ』
『くっ、妾の負けじゃ! 妾を置いて他の神の祀られた神社に行かないでほしいのじゃ!』
食いしん坊なリルにここまで言われれば、伊邪那美も変に意地を張ることなく自分の気持ちを正直に話した。
神と言えどリルの愛くるしさには敵わないらしい。
「・・・屋台やるか?」
「藍大? 屋台なんてやれるの?」
「確か、父さんが昔知り合いから組み立て式の屋台を貰っ立って言ってた。101号室の中にしまってたから、今は収納リュックの中に入ってたはず」
『屋台できるの!?』
リルは屋台の料理を諦めきれなかったようで、藍大が屋台の真似事ができるかもしれないとわかると尻尾を嬉しそうに振った。
「よしよし。できるかどうかも含めて調べてみよう」
『うん!』
藍大は中庭に出て収納リュックの中身を調べた。
その結果、1組だけだと思っていたのに実際は2組の屋台があった。
「父さん、なんで2組も持ってたんだよ・・・」
「クランマスター達、あけおめ。何やっとるんや?」
藍大達が屋台を収納リュックから取り出しているタイミングで、偶々203号室の中から未亜がパンドラと一緒に出て来た。
「あけおめ。シャングリラに組み立て式の屋台があるって言ったらリルが気になってな。試しにやってみようかと思って」
「ホンマ!? ウチ、タコ焼きなら定評あるで!」
「話は聞かせてもらった! 俺も組み立て式の屋台なら持ってる! シャングリラで祭りやろうぜ!」
「・・・健太、いつからそこに?」
「フッ、祭りの匂いがして外に出て来たのさ」
(流石は祭囃子。無駄に鼻が利きやがる)
藍大は健太の祭りを嗅ぎ取る嗅覚に苦笑した。
「ウチ、隣の孤児院にも声かけるわ。健太、芹江夫妻を呼ぶんや」
「合点!」
「えっ、規模デカくなってね?」
「ええやん。楽しいことは思い立った時が一番楽しいんやで」
「藍大、思い立ったが吉日。それ以外は吉日じゃねえんだ。古事記にもそう書かれてる」
「あっ、はい」
やる気満々の未亜と健太が主導し、ちょっと屋台で何か作るだけのつもりだったはずがシャングリラでお祭りをすることになった。
流石に昼には間に合わないから、午後5時からお祭りを始められるように準備が始まった。
気づけばシャングリラ総動員で食材やら機材やらの大掛かりな準備になっており、そこに茂と千春が到着した。
「「あけましておめでとう!」」
「あけましておめでとう。今年もよろしく」
やって来た芹江夫妻を藍大が迎え入れる。
「こちらこそ今年もよろしく。というか、年明け早々から何やってんだ? 面白そうだから来たけど」
「俺に言うな。気が付けば未亜と健太がやる気になってたんだ」
「健太はわかるけど天門さんがやる気なのは意外だな」
「関西人の血が騒いでタコ焼きの屋台をやりたくなったんだと」
「納得した。あれ、千春は?」
「既に未亜と健太、遥さんと合流して作業に入ってるぞ。ほら、あそこ」
「・・・行動力!」
到着してすぐにきびきびと働いている千春を見て、茂が額に手をやったのは仕方のないことだろう。
準備をしている内にあっという間に時間が流れ、準備が完了したのは開始予定時刻の15分前だった。
これから”楽園の守り人”の今年初めてのイベントが始まる。
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