【Web版】大家さん、従魔士に覚醒したってよ(書籍タイトル:俺のアパートがダンジョンになったので、最強モンスターを従えて楽々攻略 大家さん、従魔士に覚醒したってよ)
第324話 食事抜きって食いしん坊ズにとっては何よりも辛いものだよな
第324話 食事抜きって食いしん坊ズにとっては何よりも辛いものだよな
真奈のテイムに付き合った翌日、藍大は舞とリル、ゲン、ブラド、フィアを連れて函館の五稜郭ダンジョンまで来ていた。
わざわざ北海道まで藍大達がやって来た理由とは、”ブラックリバー”の
オンライン会議で”ブラックリバー”が北海道と東北の統括をすることが決まったが、実は北海道のダンジョンの数が多くて人手が足りていなかった。
本来は探索の人手を”ブラックリバー”から補充するはずだったけれど、時を同じくして仙台でもスタンピード間近と推測できるぐらいモンスターの湧いたダンジョンがあり、”ブラックリバー”はそちらにかかりきりになった。
日本で初めてのスタンピードが起きた5ヶ所に五稜郭ダンジョンも含まれており、2回目はどうにか食い止めてほしいというのが地元の声である。
重治もその声を無視できなかったから藍大達に救援を要請した訳だ。
それだけだったら”迷宮の狩り人”を派遣するのもありかもしれない。
ところが、五稜郭ダンジョンはスライム以外基本的に食べられるモンスターしか出て来ないと聞いて食いしん坊ズが函館に行く気になってしまったのだ。
こうなってしまえば、藍大も”迷宮の狩り人”に救援要請を割り振るのは困難だろう。
結果として、”楽園の守り人”から藍大のパーティーが五稜郭ダンジョンに向かうことになった。
五稜郭ダンジョンは地下に潜るタイプのダンジョンであり、ボス部屋を除いて真ん中の通路の両脇は水で満たされている。
その水の中には水棲のモンスターも待機しており、襲い掛かって来るモンスターはフィアが張り切って倒した。
今も地下3階のボス部屋でヒュージメタルスライムLv60を熔かして倒したばかりである。
『パパ~、フィアが敵をやっつけたよ!』
「よしよし、よくやったな」
自分の肩に止まって甘えるフィアに対し、藍大はその頭を撫でて可愛がった。
ヒュージメタルスライムは自分の体を巨大な鋼の球体に変え、その重みで藍大達を轢き殺そうとした。
それをフィアが<
フィアの気が済むまで撫でた後、ヒュージメタルスライムの死体を回収してすぐにリルがボス部屋の右側の壁に違和感を覚えた。
『ご主人、こっち来て~。多分壁の向こうに宝箱があるよ』
「今行く」
藍大達がリルのいる場所まで移動してみると、リルが視線をやった壁の模様が他と僅かに違った。
「舞、頼んで良い?」
「任せて!」
藍大に頼られて嬉しい舞は笑顔で応じる。
そして、深呼吸して頭のスイッチを切り替えるとミョルニル=レプリカに雷光を纏わせた。
「砕け散れ!」
重厚な音と共にボス部屋の壁の一部が崩れ去り、その奥に横穴と呼ぶべきものがあった。
その横穴には宝箱が安置されていたので、藍大は宝箱を開けないまま収納リュックにしまい込んだ。
宝箱を開けるのはサクラの役割だから、この場にいるメンバーが勝手に開けたりはしないのである。
宝箱を回収した後、藍大達は特に休む必要もなかったのでそのまま地下4階へと足を進めた。
地下4階はこれまでの階に比べて暗い内装になっていた。
足元の道はある程度の幅があるから、足を踏み外してすぐに水に落ちるなんてことはない。
そうだとしても、ダンジョン内が暗くなったことに注意する必要があるだろう。
バシャッという音が聞こえるのと同時にテッポウウオによく似たモンスターが水中から飛び出し、空中で藍大達に向かって<
「訓練には丁度良いな」
藍大はゲンの力を借りて<
テッポウウオによく似たモンスターはガンフィッシュというモンスターであり、早撃ちで獲物をしとめるのを得意とする。
Lv60にもなれば、このダンジョンに探索しに来る冒険者達に躱されることもない。
しかし、今日はいつもと違って藍大達がいるからいつも通りの結果にはならなかった。
ガンフィッシュは自身の攻撃を勢いをつけて返されて後方に吹き飛ばされた。
「やるじゃん藍大!」
『ご主人すごい!』
「ふむ。悪くないと思うぞ」
『パパ強いの~』
藍大が戦うことは滅多にないので、こんなこともできたのかと舞達は感心していた。
リルが<
『まとめて倒すよ!』
リルは<
チマチマ倒すのは面倒だと判断し、一度の攻撃で大量の戦果を挙げようと考えたようだ。
リルの作戦は成功し、感電してHPを全損したガンフィッシュの群れは水面にプカリと力なく浮かんだ。
それどころか、ガンフィッシュ以外のモンスターもその巻き添えで力尽きたのかその死体が水面に浮上した。
『フィアがLv86になりました』
『ご主人、大量だよ!』
「リルには漁師としての才能があるのかもしれない」
『僕はお魚よりもお肉が好き。だけどお寿司は例外』
「今思えばグルメに育ったなぁ」
『ご主人がいつも美味しい食事を作ってくれたおかげだよ』
「愛い奴め」
「クゥ~ン♪」
リルが嬉しいことを言ってくれるものだから、藍大はリルが気持ち良いと感じるポイントをモフった。
効果は抜群でリルはすぐに気持ち良さそうに鳴いた。
リルが満足して落ち着いた後、ガンフィッシュとスニークオクトパス、パラライズジェリーの死体を水面から回収した。
スニークオクトパスは静かに移動して奇襲を仕掛けるタコであり、パラライズジェリーは捕縛と相手を麻痺させることが得意な海月だ。
一本道を先に進んで行った所は釣り堀のようになっていて、四辺だけが足場で中央には人工の池という風に見えた。
しかし、その池は池ではなかった。
「ふむ。これはまた愉快な奴が現れたものだな」
「知ってるのかブラド」
「うむ。クリーナースライムと言って澄んだ水に化けるスライムだ。水だと思って飲んだら体内から喰われて死ぬ」
「滅茶苦茶物騒じゃねえか!」
ブラドが言ったことが事実なのか確かめるべく、藍大はモンスター図鑑で池の正体を調べた。
すると、本当にブラドの言う通りクリーナースライムと表示されて恐ろしいアビリティ構成まで確認できた。
-----------------------------------------
名前:なし 種族:クリーナースライム
性別:なし Lv:75
-----------------------------------------
HP:1,300/1,300
MP:1,300/1,300
STR:1,200
VIT:1,300
DEX:1,300
AGI:100
INT:1,000
LUK:1,000
-----------------------------------------
称号:掃除屋
アビリティ:<
<
<
装備:なし
備考:変身(水)
-----------------------------------------
(マジでモンスターじゃん。体の内側から壊す気満々で怖いわ)
<
侵入させた先で<
藍大はクリーナースライムは速やかに倒すべしと判断してブラドに命じた。
「ブラド、こいつを倒すのは任せた」
「良かろう」
ブラドは<
ちょっと力が入り過ぎてしまったらしく、クリーナースライムがいた池の底に魔石が残るだけだった。
『フィアがLv87になりました』
「むぅ。やり過ぎてしまったか」
「構わん。危険な相手なら素材よりも安全優先だ」
「それを聞いて安心したぞ。食事抜きと言われるんじゃないかとヒヤヒヤしたじゃないか」
「大丈夫だよブラド。藍大はそんな酷いことしないもん」
『そうだよブラド。ご主人はそんな絶望的なお仕置きなんてしない』
(食事抜きって食いしん坊ズにとっては何よりも辛いものだよな)
舞とリル、ブラドの話を聞いて藍大は納得した。
もっとも、家族に優しい藍大がそんなことをすることはあり得ないのだが。
とりあえず、クリーナースライムの魔石を回収した藍大達はこのフロアのボス部屋を目指して先に進んだ。
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