【Web版】大家さん、従魔士に覚醒したってよ(書籍タイトル:俺のアパートがダンジョンになったので、最強モンスターを従えて楽々攻略 大家さん、従魔士に覚醒したってよ)
第322話 俺、この戦いが終わったら遥にジズの唐揚げ食べさせるんだ
第322話 俺、この戦いが終わったら遥にジズの唐揚げ食べさせるんだ
未亜と健太、アスタがパンドラに強制的に落ち着かされた後、司達はボス部屋に挑むか否か多数決を始めた。
「ジズに挑みたい人手を挙げて」
「「「・・・「「はい!」」・・・」」」
満場一致で挑戦することになった。
ダンジョン探索においてまだ行けるは引き返せという教えがあるが、今までの探索でダメージは全く受けていないし全員MPにも余裕がある。
この状態ならば強行軍には該当しないと判断し、このままジズに挑むことが決まった。
アスタがボス部屋の扉を開いてみれば、その中には巨大な白鷲と表現するに相応しいジズが待ち構えていた。
「唐揚げにする! こいつ倒してリルに食べてもらうの!」
「ハイボールに合いそう! 唐揚げ待ったなし!」
「俺、この戦いが終わったら遥にジズの唐揚げ食べさせるんだ」
やはり”楽園の守り人”のメンバーである限り、食用のモンスターと対峙した時の反応は驚きよりも食欲が勝つらしい。
健太がフラグっぽいことを口にしているが、それは遥が週刊ダンジョンの副編集長で「Let's eat モンスター!」の記事作りにも携わっているからこその発言だ。
舌が肥えている遥でも、最高級の唐揚げを食べれば絶対に喜ぶと考えてのことだった。
「キィィィ!」
自分は唐揚げなんかではないと言わんばかりに巨大な白鷲は鳴くものの、司達にジズの言っていることが通じるはずない。
無礼な連中を驚かせてやるとジズは手始めに<
「やれやれ」
硬化した羽根が竜巻に乗って司達に襲い掛かったが、パンドラが慌てずに<
「キィッ!」
<
ドームの耐久度が<
「フォローする!」
それでも、健太がエネルギーの壁を創り出して威力の減衰した<
パンドラと健太が守りを固めてくれている間に、未亜が空に向かって矢を次々に放つ。
「矢の雨を喰らってみろや!」
放物線を描くように放たれた矢は矢分身の効果で分裂し、未亜が言った通りに雨のように矢がジズの体に降り注ぐ。
「キィィィ!?」
矢が突然分裂したことに驚き、ジズは<
「キッキッキィ!」
ジズはこの程度で自分にダメージを与えられると思うなと未亜を嘲笑するが、対多数戦闘で守りに入った時点で攻撃が続くことを理解していないのだろう。
「燃えたまえ」
マージは<
「焼き鳥や!」
「焼き鳥だ!」
「まだ羽根を毟ってないわ」
「違う、そうじゃない」
未亜と健太に対して麗奈がやんわりと否定するが、そのツッコミは違うとパンドラが指摘する。
「キィ!?」
足元から複数の火柱が出現すれば、ジズも<
そうは言っても、<
火柱から慌てて出て来たタイミングを見計らい、司はヴォルカニックスピアを投擲する。
「当たれ!」
「キィ!」
甘いと言わんばかりにジズは姿勢を変えて避ける。
そして、得物を手放した司に向かって今がチャンスだと<
「甘いよ」
司はニヤリと笑みを浮かべて手元にヴォルカニックスピアを呼び戻す。
「キィィィ!?」
これにはジズも嘘だろと言わんばかりに驚くが、巨体が勢いに乗った状態で落下していればすぐには止まることはできない。
精々軌道を逸らすのがやっとだ。
「もう一丁!」
再度司がヴォルカニックスピアを投擲してそれが命中する。
「キィッ!」
ヴォルカニックスピアの刃の部分が自分の体に突き刺さり、ジズは痛みに短く叫んだ。
「追撃よ!」
麗奈は気の弾丸を放ってジズに追加でダメージを与えていく。
そこに接近していたアスタとリュカが更に追い打ちをかける。
「マッスル!」
「早く鶏肉になって!」
アスタの<
その瞬間、司達はここで畳みかけなければいつ畳みかけるんだと突撃してジズを袋叩きにした。
途中でジズが反撃しようとしても、パンドラが<
ジズはHPを削り切られて動かなくなり、司達は初見でジズを倒せたことに歓喜した。
「「「「勝ったぁぁぁぁぁ!」」」」
地下8階は
司達は素材を集めてくれた藍大達と丸薬を作ってくれた奈美に感謝した。
レンタル従魔達もジズを倒せたことで喜んでいる。
「地下8階は長かった。やっと抜け出せる」
「次の階はトリニティワイバーンがいるの! リルに美味しいお肉をあげられるわ!」
「複数属性を使うモンスターとは興味深い」
「喜びのサイドチェスト!」
アスタはもう手遅れのようだ。
その後、ジズの羽根を毟って解体作業を行ってから素材を司とパンドラが分担して収納した。
「冬に備えてジズの羽毛布団を作ろうかな。寝心地が良いって藍大から聞いたし」
「あっ、俺もそうする。今年の冬はぬくぬくするんだぁ」
「あんたらいつも人肌で温まっとるやろが」
「私も早く良い相手を見つけないと」
未亜がしれっと夜はよろしくやってるんだろうとおっさんらしいことを言うので、同じく独り身の麗奈がボソッと呟いた。
それを司が聞き逃さずに拾う。
「最近、麗奈が”迷宮の狩り人”の某奇術士とよく飲みに出かけている件について」
「それ、俺も聞いたことある」
「うっ、遂に麗奈にも先を越されるやと・・・」
「ち、違うの! 晃はお酒強いから付き合ってくれるのよ!」
「へぇ、名前を呼び捨てる程には親しくなったんだ」
「あれれ~? おっかしいぞ~? 大学生に手を出すなんてみたいなことを言ってたのはどこの誰かな? ん~?」
「なんやコイツめっちゃ腹立つ」
未亜も麗奈を揶揄おうとしたけれど、健太の煽りがあまりにもムカついて揶揄う気が削がれてしまった。
「煩い!」
「ぐはっ!?」
顔を真っ赤にした麗奈は健太の鳩尾に一撃かまし、健太は受けた痛みのせいでその場に蹲った。
勿論、麗奈が本気で健太を殴れば骨折待ったなしなので、麗奈も反射的に殴ってしまったが最低限の力加減はしている。
とは言ったものの、後衛の貧弱ボディでは力加減していようが麗奈の攻撃を受けて無事ではいられないのも事実だった。
「惜しい奴を亡くしてもうたな」
「いや、まだ死んでないから」
未亜が健太を亡き者にしようとしているから、司がちょっと待てとツッコミを入れた。
そのツッコミをスルーして未亜は麗奈に声をかける。
健太が会話から退場したことにより、未亜の中で麗奈を揶揄いたい欲求が増したのだ。
「それで、奇術士君とはどこまでいったんや?」
「べ、別に、まだお酒を一緒に飲んだりしかしてないわよ」
「えっ、違うでしょ? 酔い潰れた麗奈を背負ってシャングリラに届けてもらったことがあるよ。僕が晃に頼まれて部屋まで運んだけど」
「くぁwせdrftgyふじこlp」
司にそこまで知られているとわかって麗奈の顔から湯気が出た。
「麗奈、白状するんや。奇術士君のことをどう思っとるんや? ん?」
「ほっといて!」
「ぐへっ!?」
未亜も麗奈の一撃を喰らって地面に蹲った。
健太が煽ってやられたことを見ていたはずなのに、全く学習しない女である。
ボケ2人が退場すると、司はニッコリと笑って麗奈にとどめを刺しに行った。
「藍大から聞いたんだけど、晃って年上好きなんだってね」
「・・・ふんっ!」
「危なっ!?」
前衛の司は麗奈の一撃を見切って避けることに成功した。
後衛2人とは身体スペックが違うので、麗奈に殴られずに済んだのだ。
この後、麗奈は恥ずかしがって1人だけ先にダンジョンを脱出してしまい、司はパンドラや他の従魔達と協力して未亜と健太を回収してその後を追って脱出した。
司は未亜と健太を回収する面倒を考慮し、今度から麗奈をイジるのはダンジョンの外にしようと思うのだった。
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