第317話 普通、普通、硬め!
翌日の金曜日の朝、藍大は舞とリル、ゲン、元幼女トリオとドライザーを連れてシャングリラダンジョン地下10階にやって来た。
地下10階は水晶の宮殿と呼ぶべき荘厳な空間であり、シャングリラダンジョンの中では最も幻想的なフロアだ。
「綺麗な所だね~」
「舞はここに来たのが初めてだったっけ」
「うん。遠出しなくてもこんな景色が見られるのは良いよね」
「そういう捉え方もできるな」
そんなのんびりした会話をしていたところにネメアズライオンの群れが現れた。
「硬そうなライオンだね。殴り甲斐がありそうだよ」
(物騒なコメントいただきました)
殴り甲斐なんてワードは日常生活で飛び出すようなものではないから、藍大がそんな感想を抱くのも無理もないだろう。
「フッフッフ。あのライオンは炎に弱いのよっ」
ゴルゴンは久し振りのダンジョン探索でテンションが高いらしく、<
「ゴルゴン、黒焦げにしちゃ駄目ですよ?」
「わかってるわっ。さあお前達、狩りの時間なのよっ」
ゴルゴンは炎のライオンの群れを解き放ち、ネメアズライオンと追いかけっこさせた。
ネメアズライオンは金属の毛皮のせいで熱に弱い。
それゆえ、必死にゴルゴンが創った炎のライオン達から逃げ出した。
「逃がさないです」
ゴルゴンの攻撃をサポートするため、メロが<
転んだネメアズライオンに炎のライオンがのしかかり、ネメアズライオン達の断末魔の叫びが聞こえて来た。
「「「・・・「「グルァァァァァン!」」・・・」」」
叫び声が聞こえなくなった頃にはネメアズライオン達は力尽きており、ゴルゴンとメロは得意気に胸を張った。
「コンビプレイが決まったのよっ」
「上手に焼けたです!」
「ゴルゴンちゃんもメロちゃんも可愛い顔してえげつないよね~」
「舞に言われたくないのよっ」
「舞に言われたくないです!」
「可愛いだなんてありがと~」
「つ、強いのよっ。舞のメンタルが強過ぎるのよっ」
「こ、これがプラス思考なのです・・・」
ゴルゴンとメロは舞に自分達の反論が通じないと察して戦慄した。
「よしよし。2人ともよくやったな」
「「マスター」」
藍大に褒められて2人の表情が笑顔になった。
舞のメンタルのことよりも藍大に褒められたことの方が重要だからだ。
藍大達がネメアズライオンの死体を回収していると、リルが藍大に声をかける。
『ご主人、ペンドラの群れが来てる!』
「すげえ! 滑ってる!」
ペンドラはペンギンとリザードマンを足して2で割ったような見た目だが、腹部はペンギンのようになっているので水晶の床を滑ってやって来た。
ペンドラが通って来た床は水に濡れていてその手には杖が握られていることから、そのペンドラの群れは藍大達を見つけてアビリティを使って水を被ってから滑って来たのだろう。
摩擦のことを考えた行動ができるあたり、ペンドラの群れは馬鹿ではなさそうだ。
『ボス、迎撃は任せてほしい』
『よっしゃ!Σo(*・∀・*)がんばんで!』
今度はドライザーとゼルが前に出てペンドラの群れを迎撃を始める。
ゼルが<
壁にぶつかってスピードが0になったところでゼルが壁を消し、まとまって倒れているペンドラの群れに<
『ドライザーがLv99になりました』
「ドライザーとゼルのコンビも良いじゃん」
『Thank you』
『あ(^о^*り(^∇^*が(^Ο^*とっ(^◇^*))))』
藍大にとって二度目の地下10階の探索も順調である。
ペンドラの群れの死体の回収を済ませて先に進むと、藍大達のお目当てのモンスターが大群で待ち構えていた。
数だけで言えば先程のネメアズライオンとペンドラの群れの合計数よりも多い。
「気をつけろ。ガルムLv90だ。ブラドに頼んでマシマシにしてある」
「普通、普通、硬め!」
『ガルムマシマシ!』
(俺の言い方が悪かったんだけど、ラーメン屋の注文みたいに反応しちゃったよ)
「「「・・・「「アォォォォォン!」」・・・」」」
ガルムの大群が一斉に吠えた直後、<
「やらせねえよ!」
舞が光のドームを三重に展開したことにより、重ね掛けされた<
広範囲攻撃がいくつも重なれば、その重みで外側にある光のドームは破られてしまうがそれは仕方のないことだ。
重要なのは自分達がダメージを負わないことだから、光のドームが破られたって何も問題はない。
<
「『ヒャッハァァァァァッ!』」
「「「・・・「「キャイン!?」」・・・」」」
舞とリルの気迫に押されてガルム達は逃げ出した。
自分達の<
しかし、ガルム達が逃げられるはずなかった。
「通行止めなのよっ」
ゴルゴンが通路を塞ぐように炎の壁を創り出し、ガルム達の逃げ場はなくなった。
逃げることができなくなったガルム達は迫り来る舞とリルに数で勝負するが、メロがその数的有利を崩すために援護射撃する。
「狙い撃つです」
硬い種の弾丸をスピーディーに放ち、舞とリルを襲うガルムの数を減らしていく。
「オラオラオラァ!」
『ぶっ飛べ!』
結果として、ガルムの大群は数分で藍大達の戦利品へと変わり果てた。
『ドライザーがLv100になりました』
『ドライザーがアビリティ:<
『ドライザーが称号”到達者”を会得しました』
「マジか。ドライザー、お前変則二刀流が使えるようになったじゃん」
『変則二刀流が使える従魔はお嫌いか?』
「お好きでござる」
藍大がドライザーと戯れていると、ゴルゴンとメロ、ゼルが藍大に抱き着く。
藍大とドライザーの通じ合っているやり取りに危機感を抱いたらしい。
「スレンダーなレディーはどうなのよっ」
「元気いっぱいな女の子はどうです!?」
『(´・ω・`)モキュ?』
「愛い奴等め。みんな好きに決まってるだろ」
おふざけが過ぎたと藍大は心の中で詫びながらゴルゴン達を抱き締め返した。
そんな藍大の反応に彼女達はホッと一安心した。
それから、覚醒の丸薬Ⅱ型の最後の材料であるガルムの牙を丁寧に回収し、それ以外についても収納リュックにポイポイ突っ込んだ。
その部屋には前回と変わらず炎の入れ墨が目立つ赤髪上裸のベリアルがおり、手に持った槍を振り回して暇を潰していた。
藍大達をチラッと見て槍を地面に突き刺し、今回も下卑た笑みを浮かべた。
「女、女、女! 良いじゃないか女だらけのパーティー! 選り取り見取りで最高だ!」
「ああ゛ん!? 誰がてめえみたいな下衆に意見を求めたってんだ!?」
「不愉快だわっ」
「マスターの爪の垢を煎じて飲ませても救いようがなさそうです」
『キィ―――(`皿´ ) ―――イイイイイ』
女性陣が激怒した。
ベリアルの発言がとても不愉快だったらしい。
それは藍大も同じだった。
「フゴッ!?」
「しまった。またやっちまった」
藍大は前回と同様にベリアルを狙って全力で<
舞達に気を取られていたベリアルは地面にめり込んだ。
「サンキュー藍大! おめえらやるぞ!」
「はいなっ」
「
『╰(*゚x゚*)╯ぉこだょ!!』
メロが<
それに続いてゴルゴンが全力の<
<
『ドライザー、僕達は舞達を怒らせないようにしようね』
『全面的に同意』
(俺も気をつけよう)
藍大はカッとなってベリアルを足止めしたが、その後すぐに落ち着きを取り戻せた。
その状態で流れるようにベリアルをボコボコにする舞達を見れば、この先の結婚生活で彼女達を怒らせるような事態は絶対に避けようと思うのも当然と言えよう。
何はともあれ、ベリアルとの戦いも無事に終わったので藍大は舞達を労うことにした。
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