【Web版】大家さん、従魔士に覚醒したってよ(書籍タイトル:俺のアパートがダンジョンになったので、最強モンスターを従えて楽々攻略 大家さん、従魔士に覚醒したってよ)
第307話 真奈さん、秘策ってそれかよ!?
第307話 真奈さん、秘策ってそれかよ!?
真奈が調教士に転職した30分後、藍大は舞とリル、ゲン、ブラド、真奈と一緒に道場ダンジョンに来ていた。
ゲンはいつも通り藍大の服に<
サクラ達留守番組が優月の面倒を見ると言ってくれたので、優月はシャングリラに残っている。
茂はこの後仕事があるということだったため、藍大達がシャングリラを出るタイミングで分かれた。
「じゃあ最上階に行きましょう」
「はい」
藍大達に連れられて、真奈も一緒に道場ダンジョンの最上階に転移した。
「ウィアァァァァァ!」
『お肉~!』
ボス部屋にはワイバーンがいたが、リルが<
藍大達がワイバーンを回収し終えたタイミングで真奈がリルに話しかける。
「リル君、お疲れ様。カッコ良かったね」
『・・・ワフン。べ、別に褒められても嬉しくないんだからねっ』
「リル君がゴルゴンちゃんみたいになってる」
(真奈さんを警戒してるけど褒められたこと自体は気分が良いんだろうな)
藍大も舞と同じ感想を抱いたが、リルが素早く自分の後ろに隠れたので大丈夫だという気持ちを込めてその頭を撫でた。
「う~ん。やはりリル君の警戒が解けませんね。どうすればリル君は私に心を開いてくれるのかな?」
真奈がリルに訊ねるが、目を合わせるのも危険だと思ってリルは視線を逸らした。
そこで藍大が代わりに答えてみた。
「モフラーじゃなくなれば良いんじゃないですか?」
「それは無理ですね。モフモフは私の生き甲斐ですし、その中でもリル君は私の理想のモフモフです」
「クゥ~ン」
「よしよし、怖くないぞ~。俺が一緒にいるから大丈夫だ」
尻尾を股の間に挟み込むリルに対し、藍大はリルを優しく撫でてストレスを軽減させた。
「主君よ、そろそろ良いか? いい加減待つのも飽きたぞ」
「ごめんよブラド。頼んで良いか?」
「うむ」
横道にそれてしまったが、藍大達は道場ダンジョンに真奈のお願いを叶えに来たのだ。
そのお願いとは、調教士として最初にクレセントウルフをテイムしたいというものだった。
リルと仲良くなりたい気持ちは変わらないけれど、本気で警戒されている現状ではリルを撫でるのは夢のまた夢である。
リルと仲良くなれないならば、自分専用のモフモフをテイムすれば良いじゃないのと真奈は考えたのだ。
そのモフモフはできるだけリルと同じフェンリルが良いから、最終的にフェンリルに進化するクレセントウルフをテイムしたいと藍大にお願いした。
藍大も1億円貰ったことに加え、リルの身代わりとなるモフモフが現れるならそれぐらいのアフターサービスはしても良いだろうと判断して真奈をこの場に連れて来た。
そして今、”アークダンジョンマスター”のブラドがDPを使ってボス部屋にクレセントウルフを創り出した。
(クレセントウルフLv15の雄か)
ブラドはDPでモンスターを創り出す際、レベル指定はできても性別や”希少種”か通常種なのかまでは選択できない。
創り出して初めて性別がわかる。
真奈はクレセントウルフの性別についてどちらでも構わないと言ったため、1回限りの召喚である。
「グルゥ」
クレセントウルフは真奈を見て警戒した。
舞よりも警戒されているあたり、モフモフにとって真奈は本当に天敵らしい。
「真奈さん、めっちゃ警戒されてますけど大丈夫ですか?」
「大丈夫です。私、秘策を考えて来ましたから」
「秘策?」
「まあ見てて下さい」
自信あり気にそう言うと、真奈は右手でビースト図鑑を開いた状態で持ったまま藍大達から離れた。
クレセントウルフは真奈から目を離すことなく、距離を保ったまま移動する真奈を近寄らせまいと体の向きを変える。
「真奈さんはどうするつもりかな?」
「わからん。秘策って言うからには自信があるんだろうけど」
舞に訊ねられても藍大だって真奈が何をするつもりなのかはわからない。
とりあえず見守ろうと藍大達は静かに待機した。
次の瞬間、真奈が目を見開いて動き出した。
「ダン〇ン! フィー〇キー! ドゥー〇ディーサーザコンサ!」
(真奈さん、秘策ってそれかよ!?)
唐突に以前ブレイクした芸人のリズムネタを披露し始めた真奈に対し、藍大は自分の目を疑った。
舞達も真奈の秘策を目にしてポカンとしていた。
クレセントウルフも最初はポカンとしていたがすぐに警戒し、踊っている真奈に近づくものかと気を強く持っていた。
しかし、2回目にリズムを聞いている内にクレセントウルフもリズムに乗って体を揺らし始めてしまう。
3回目になると、クレセントウルフは真奈のダンスに釣られて自分から近寄ってしまう。
「テイム!」
(そこはニー〇ラじゃないんだ)
真奈がクレセントウルフの頭にビースト図鑑に被せた直後、クレセントウルフの体がモンスター図鑑の中に吸い込まれていった。
「ふぅ。上手くいきましたね。リル君、私やったよ!」
『ご主人、危険だよ! あの踊りは危ないよ!』
「リルもちょっとソワソワしてたもんな」
『やっぱり天敵だったんだ!』
「よしよし。俺がいるから大丈夫だぞ」
『ご主人~』
藍大は不思議なリズムに釣られかけたリルの頭を撫でて落ち着かせた。
「あの面妖な踊りでテイムするとはな。騎士の奥方と違った意味で恐ろしいぞ」
「ブラド~、私は怖くないよ?」
「そ、そうであるな。だから吾輩を抱き締める力は強めなくて良いのだぞ?」
ブラドのVITの数値は高いけれど、舞に全力で可愛がられたらVITの高さなんて関係ないからブラドは焦る。
藍大達が戯れていると、真奈がテイムしたクレセントウルフを召喚していた。
「【
藍大達の目の前にはガルフと名付けられたクレセントウルフが現れた。
「オン!」
先程の警戒していた様子とは異なり、ガルフは真奈が近づいても全く動じない。
真奈はしゃがんでゆっくりとガルフの頭を撫でる。
「これからよろしくね、ガルフ」
「オン!」
「リル君みたいにツンツンしてない! モフっても良い?」
「・・・オ、オン」
ガルフは返答に詰まったが来るなら来いと言わんばかりに頷いたので、モフラーは相棒のモフモフを堪能し始めた。
その直後、ガルフはほんの数秒前の自分の返答に後悔していた。
『ガルフ、心を強く持つんだよ。頑張れ』
「クゥ~ン」
「リル、良かったな。これで真奈さんに追われなくて済むじゃん」
『うん。すっごくホッとした。ガルフには是非とも頑張ってもらいたいな』
願わくばそのまま自分の身代わりとして役割を全うしてほしいという気持ちがそのコメントから滲み出ていた。
真奈が満足するまでモフられ続けたことにより、ガルフはその場に座り込んでしまった。
どっと疲れた様子である。
「真奈さん、最初からそんな飛ばしてたんじゃガルフが懐かなくなりますよ?」
「それは大変です! ごめんねガルフ!」
「ウォン・・・」
わかってもらえたかとガルフは力なく鳴いた。
ガルフが休んでいる間、藍大は真奈に対して改めて注意をした。
「良いですか、真奈さん。わかってると思いますけど従魔は家族です。仲良くしたい気持ちはよくわかりますが、今みたいにやり過ぎたら駄目です」
「わかりました。ところで逢魔さん、私にもオススメのモンスターを教えていただけませんか? シンシアから聞きましたよ。リーアム君にオススメのモンスターを紹介したんですよね?」
「モフラー同士で今もやり取りしてるんですね」
「趣味の合う友達は大事にするべきでしょう? このご時世外国の友達って貴重なんですよ。得ようと思っても得られないコネクションでもありますし」
「それはそうですが」
藍大も学生時代はそこそこ友達もいたけれど、今となっては茂と健太ぐらいしか付き合いがない。
そう考えると真奈の言い分には一理あると思えた。
「では教えて下さい。私、ガルフと一緒にテイムしに行きます」
「そうですね・・・。真奈さんが弓を使うならば、ガルフが回避盾になってくれますね。もう1体前衛がいてくれるとなお安心って感じですか?」
「確かにガルフ以外にも前衛がいてくれると嬉しいですけど、弓士の
「パンドラみたいな従魔が良さそうですね。ガルフとは違って支援に重点を置きますが」
「パンドラさんも撫でてみたいです。でも、元々はトレジャーミミックですよね? 私じゃテイムできません」
真奈はトレジャーミミックはテイムできないのでしょんぼりしながら答えた。
従魔士の藍大ならテイムするモンスターに制限はないが、調教士には獣型モンスターしかテイムできないという制限がある。
藍大は少し考えてから私見を述べた。
「バブルシープですかね。幻惑効果のあるアビリティを持ってますし」
「わかりました。心当たりがあるので暇を見つけてテイムしに行ってきます」
真奈は次にバブルシープをテイムしようと決めた。
とにもかくにも、藍大達はやるべきことを終えたので道場ダンジョンから脱出してそのまま別れた。
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