第299話 最後まで戦うです! 恋愛は戦争です!

 昼食後、舞はサクラと幼女トリオに連れられて寝室にやって来た。


 藍大はリルとゲン、ブラド、ミオと一緒に優月の世話をしつつリビングでのんびりしている。


「サクラ、ゴルゴンちゃん、メロちゃん、ゼルちゃん、どうしたの?」


「ゴルゴン達が舞に話したいことがあるんだって」


「そうなのよっ」


「そうなのです!」


『(*ノω・*)テヘ』


「何かな? 好きな時に抱き着いても良いっていうお知らせとか?」


「違うからねっ」


「違うです」


『チャウ(・_・ 三・_・)チャウ』


 舞が期待に目を輝かせて言った言葉にゴルゴン達は瞬時に否定した。


 舞が自分達を可愛いと思ってくれるのが嫌という訳ではないが、舞にぬいぐるみにするように抱きつかれるのは勘弁してほしいからだ。


「そっかぁ・・・」


「そんなに抱き着きたいの?」


「可愛いものはいつ抱き着いても良いものなんだよ」


「確かに私もちょくちょく優月を抱っこしたくなる」


「でしょ?」


「サクラ、流されちゃ駄目なんだからねっ」


「気をつけるです! それが必殺、舞のペースです!」


『ヾ(・ω・`;)ノぁゎゎ』


 サクラが舞に説得されそうになったところにゴルゴン達が慌てて待ったをかける。


 従魔最強のサクラまで舞の味方をするようになれば、自分達に対抗する手段がなくなってしまうからだ。


「それはそれとして、ゴルゴン達は本題に入らなくて良いの?」


「そうだったわっ」


「やるですね、舞。そうやって私達が本題に入れないようにするとはガードが堅いです」


『ΣΣヽ(・Д´・゚+。)ェっ‥マジっ』


「え~? 私は何もやってないよ? とりあえず、話があるのはわかったからちゃんと聞くよ」


 それは誤解だとやんわり告げた上で舞が話を聞く態度を取った。


 すると、ゴルゴン達がオホンと咳払いをしてから本題に入った。


「アタシ達もマスターのお嫁さんになりたいのよっ」


「私達もマスターと結婚したいです!」


『。+゚((ヾ(o・ω・)ノ ))。+シュキーー!』


「良いんじゃない?」


「納得してもらうまで引き下がらないんだからねっ」


「最後まで戦うです! 恋愛は戦争です!」


『p(・∩・)q』


「あれ、聞こえてなかった? 藍大さえ良ければ良いと思うよ?」


「「え?」」


『え?(・◇・。)?』


 自分が許可したのにゴルゴン達が認めないと言われたのだと勘違いされてしまったため、舞はもう一度認める旨を伝えた。


 流石に二度目は聞き間違えることがなく、ゴルゴン達は鳩が豆鉄砲を食ったような顔になった。


 難航すると思っていた交渉があっさりと成立して拍子抜けしたのだ。


「だから言ったのに」


「サクラは事前に聞いてたんだ?」


「うん。昨日相談されたから私も主さえ良ければ認めるって言ったの。ゴルゴン達が主のことを異性として見てるのはわかってたし」


「そうだよね~。バレバレだよね~」


「覚悟を決めてたのに酷いのよっ」


「本当です! ”ダンジョンマスター”を倒す時と同じぐらい覚悟をしてたです!」


『(๑`^´๑)プンプン‼‼』


「そこで文句を言われるのは理不尽だと思うな」


 いや、そうじゃないだろう。


 まずは”ダンジョンマスター”と同じぐらい警戒されていたことにツッコむべきだ。


 もっとも、ツッコミ属性でもない舞にツッコミを求めるのは難しいのだが。


 困惑する舞とプリプリ起こるゴルゴン達という状況を収めるのはサクラの仕事となった。


「落ち着いて。舞がゴルゴン達も主と結婚しても良いって言ってくれたんだから、前向きな話をしないと時間が勿体ないよ」


「そうだったわねっ」


「落ち着いたです」


『(○=3=○)フゥ*:..。o』


 サクラの言葉でゴルゴン達は落ち着きを取り戻した。


 3人が落ち着いたところでサクラが話を進める。


「ゴルゴンとメロ、ゼルが主に結婚してほしいと告白した時、主が確実に首を縦に振るようにしたいよね?」


「絶対に失敗したくないのよ」


「そうです。フラれたら萎れるです」


『( ・ω・ )(´・ω・ )(´;ω; )(´;д; )ふぇぇ…』


「私の見立てでは主は今のところゴルゴン達を恋愛対象として見てないわ。向けられてる眼差しは娘に対するそれだね。舞もそう思うでしょ?」


「正直そうだと思う」


 サクラと舞の言葉にゴルゴン達は膝から崩れ落ちた。


「む、娘じゃ駄目なのよ・・・」


「妹ですらなかったです・・・」


『_| ̄|○ガーン』


「でも、まだ希望は残ってる」


「そうだね」


「希望を教えてほしいのよっ」


「舞に抱き着かれてでも教えてほしいです!」


『_|\○_オネガイシヤァァァァァス!!』


 ゴルゴン達がガバッと起き上がってサクラと舞にくっつきそうなぐらい詰め寄った。


 すぐに抱き着ける位置までゴルゴン達がいるものだから、舞は自分の欲求に素直に3人をまとめて抱き締めた。


「大満足~」


「舞、落ち着いて。一旦離して」


「・・・あと1分」


「長い」


「10秒」


「それぐらいならしょうがない」


 サクラが折れて10秒待った。


 きっかり10秒後にゴルゴン達は解放された。


 いつもなら舞に抱き着かれればぐったりしていたが、舞がおとなしく抱きついたことと藍大と結婚するための手段があると言う希望のおかげで3人は元気だった。


「早速教えてほしいのよっ。ギブ&テイクなのよっ」


「そうです! 抱き着いたからには対価を求めるです!」


『(〃'ω')ヨロ(〃・ω・)シク(o〃_ _ )oデスッ♪』


「わかってるって。と言ってもゴルゴンちゃん達も既にやってる方法だよ。魔石を食べれば良いんだよ」


「私も一番最初はゼルぐらい小さかったもの」


「サクラが小さかったなんて信じられないんだからねっ」


「こんなに大きくなったですか・・・」


『゚+.(o,,〃ω〃)o スゴォ~ィ♪゚+.*』


 衝撃の事実にゴルゴン達は驚かずにはいられなかった。


 ゴルゴンが藍大の従魔になった時、サクラは既に女子大生と称しても全く違和感のない見た目をしていた。


 それゆえ、ゴルゴン達は小さかった頃のサクラを知らないので驚いたのである。


「昔のサクラはゴスロリを着たサクラちゃんって呼ぶのが相応しい姿だったよね」


「私が出会った当初から舞はすぐに抱き着こうとする癖があった」


「舞は進歩しないわねっ」


「あれれ~? ハグされたいのはゴルゴンちゃんかな~?」


「ごめんなさいっ」


 手をワキワキさせて近づく舞に対し、ゴルゴンは秒で謝った。


「許さないよ~」


「力がっ、強いっ、のよっ・・・」


「ゴルゴンの屍を乗り越えて私とゼルはマスターと結婚するです。安らかに眠るですよ、ゴルゴン」


『バ━━ヽ(。´□`)ノ━━イ バ━━ヽ(。´□`)ノ━━イ』


「勝手に、殺さないで、ほしいわっ」


 ゴルゴンが余計なことを言って痛い目に遭うのは割とよくあることだから、メロとゼルはあっさりと見捨てた。


 舞も本気で怒っている訳ではないのですぐに力を緩めた。


「とまあ、冗談はここまでにしてゴルゴンちゃん達がやるべきは魔石をたくさん食べることだね。理想なのは強いモンスターの魔石をガンガン食べることだけど、こうなったら明日の多摩センターダンジョンの4階から先で手に入れた魔石をガンガン食べてみよっか。塵も積もれば山となるって言うし」


「私もそれが良いと思う。主は変態紳士ロリコンだと思われたくないみたいだから、3人が大きくなれば主は告白しても断りにくくなるはず」


「わかったのよっ」


「はいです!」


 ゴルゴンとメロが元気良く返事をする一方で、ゼルだけが困ったような顔文字を出していた。


『あ…えと…その(((ーдー;』


「どうかしたのゼルちゃん?」


「・・・あっ」


 サクラはゼルが何に困っているのか心当たりがあった。


 舞はそれに思い当たらず訊ねる。


「サクラ、何かわかったの?」


「ゼルは魔石が要らないみたいだよ。そうでしょ?」


『(o・ω・))-ω-))うん』


 ゼルは頷くと<傲慢プライド>を発動した。


 その直後からゼルの体が幼女から少女、そして大人の女性へと変わっていった。


 幼女の見た目の時はサクラに似た顔立ちだったが、大人の姿になるとサクラを童顔のまま大きくしたような見た目になった。


 ある程度出る所は出て引っ込むところは引っ込んでいるが、”色欲の女王”のサクラや舞よりはおとなしい体つきである。


 ゼルは<傲慢プライド>の自分がこうあるべきという姿を取れると言う効果を発動したのだ。


 ゼルの変化を目の当たりにしたゴルゴンとメロはショックを受けていた。


「こうしちゃいられないわっ。メロ、明日は魔石を食べまくるのよっ」


「ゼルに置いてかれたです! ゴルゴン、明日はマスターに魔石をおねだりしまくるです!」


 その日、幼女トリオはゼルの脱退によって解体となった。


 ゴルゴンとメロが藍大に泣きつき、明日は2人に魔石が与えられることが決まったため、ゼルの行動は2人にとっても良い方向に働いた。


 ゴルゴン達の決戦の日は近い。

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