【Web版】大家さん、従魔士に覚醒したってよ(書籍タイトル:俺のアパートがダンジョンになったので、最強モンスターを従えて楽々攻略 大家さん、従魔士に覚醒したってよ)
第297話 カップラーメンができるよりも早く片づけてやんよ
第297話 カップラーメンができるよりも早く片づけてやんよ
多摩センターダンジョン3階に足を踏み入れると、藍大達は今までと異なる点に気づいた。
「宝箱いっぱいあるね~」
舞が言った通り、宝箱が縦3個×横3個で合計9個並んでいたのだ。
「リル、宝箱って偽物が紛れてる?」
『うん。右奥の1個以外全部ミミックだよ』
「・・・ホントだ」
リルの見立てを裏付けるべく、藍大はモンスター図鑑でリルがミミックだと知らせた宝箱全てを確認した。
やはりリルの言うとおりであり、右奥の1個以外は全てミミックLv60だった。
ミミックはレアなモンスターで普通のダンジョンでは8体も同時に出て来たケースはない。
多摩センターダンジョン内で出現するモンスターを改変させただけあって、今回の”ダンジョンマスター”は他のダンジョンにいる者と比べてブラドと同様に頭を使うことができるらしい。
「ゼル、出番だぞ」
『(=゚ω゚)ノ ---===≡≡≡ 卍 シュッ!』
藍大に声を掛けられたゼルは<
攻撃する機会もなくHPを削り取られ、どのミミックも凍ったまま力尽きた。
「よくやったな、ゼル」
『σ(*´∀`照)えへへ』
藍大はゼルを労ってからミミックの死体を回収し、残った本物の宝箱もそのまま収納リュックに詰め込んだ。
いつも宝箱を開けるのはサクラに任せているため、見つけた宝箱もこの場で空けずに持ち帰るつもりである。
一般的な冒険者ならば、見つけた場所で空けなければ宝箱を持って移動する必要がある。
宝箱は嵩張るから収納袋を持たない冒険者がそんなことはせず、中身だけ回収して放置するのが普通だ。
しかし、藍大達であれば話は大きく変わってしまう。
藍大のLUKとサクラのLUKは雲泥の差という言葉では言い尽くせない程の差が開いているので、収納リュックにしまって持ち帰る方がより良いアイテムが手に入る訳だ。
回収作業を終えた一行は開けた場所の奥に続く通路を進み始めたが、少し歩いたところで3階は1階や2階と違うということを思い知ることになる。
その違いとは通路の床のことだ。
今までの通路は藍大が横に10人並んで歩ける幅だった。
ところが、その床を縦に三分割して中央以外は落とし穴になっていた。
落とし穴の下には無数の棘が敷き詰められており、落ちたらただでは済まないことが容易に想像できる。
通路の幅が狭く、向かい側から通路ギリギリのサイズのモンスターがツッコんで来れば両脇の落とし穴に落とされてしまう可能性が高い。
単純ではあるが実に効果的な仕掛けだと言えよう。
藍大達は一列になって通路を進んだ。
先頭から順番にリル、舞、メロ、藍大、ゴルゴン、ゼル、ミオとなっている。
中心にはパーティーリーダーである藍大がおり、前は索敵と防御に優れたメンバーを置いて後ろは追手が来ても時間稼ぎができるメンバーを置いた。
しばらく歩いたところでリルがピタリと止まった。
「リル、どうした?」
『ご主人、天井にモンスターがいっぱい生えてるよ』
「・・・あの植物がモンスターか。てっきり正面から来るかと思ったが」
リルが指摘した通り、天井に逆さ吊りのように植物が生い茂っていた。
よく見てみれば人間の頭のような果実を実らせており、その顔がどれも苦痛に歪んでいるようだった。
「あんな植物は見てるだけで不愉快です。マスター、撃ち落として良いです?」
「構わんぞ。ザックームLv60。デバフと魔法系アビリティを使うから注意すること」
「わかったです。狙い撃つです」
メロは<
百発百中の精度で次々に撃ち抜いていき、種がぶつかった衝撃で落下した果実はリルが<
『なんだか不気味だね。これなら食べられるとしても生で食べたくないや』
「モンスター図鑑によると、ザックームの果実は酸っぱいか苦いかでどっちにしても食用には向かないぞ。薬品の素材になるらしいから奈美さんに渡すぐらいだ」
「食べられないのは悲しいけど奈美ちゃんなら有効利用してくれるよね」
「クレイジーな薬品ができないことを祈ろう」
全てのザックームが力尽きたことを確認した後、藍大はリルの背中に乗って天井から生えていたザックームの死体を回収して通路に戻る。
ザックームと落とし穴のエリアを抜けると広間に辿り着いた。
そこには1体のモンスターが待ち構えていた。
そのモンスターは未亜パーティーが金沢のスタンピードで倒したサイクロプスだった。
「サイクロプスLv65。”掃除屋”で見ての通り接近戦が得意だ」
「じゃあ私に任せとけ」
藍大の鑑定結果を聞いてすぐに舞が反応した。
既に戦闘モードに入っており、その目は戦士の目と呼んでも過言ではなかった。
「お願いするよ」
「カップラーメンができるよりも早く片づけてやんよ」
それだけ言うと、舞は単独でサイクロプスへと駆け寄っていく。
「ゲヒッ!」
サイクロプスは舞が1人で攻め込んで来たのを馬鹿なことだと嘲笑い、手に持った狼牙棒を両手持ちにして上から振り下ろす体勢を取った。
(両手持ちの方が威力が上がるってわかってやってんのか?)
藍大はサイクロプスの両手持ちが意図的なのかなんとなくやったのか気になった。
見た目からは知性が感じられないが、もしも両手持ちの方が威力が上がることを理解して行うだけの知能があるならば、そんなモンスターを用意する”ダンジョンマスター”には注意を払わねばならない。
「ゲヒヒィィィィィ!」
「舐めんじゃねえぞゴラァ!」
サイクロプスが振り下ろす狼牙棒に対し、舞は雷光を纏わせたミョルニル=レプリカで迎え撃つ。
ただの狼牙棒では舞の攻撃に耐えられるはずがなく、狼牙棒は即座に粉砕して舞の攻撃がサイクロプスに届いた。
「ゲヒッ!?」
「チッ、浅いか。これでも喰らっとけ!」
狼牙棒を破壊する際にいくらか勢いが減衰してしまい、サイクロプスがギリギリHPを残していた。
それゆえ、舞はアダマントシールドに光を付与してサイクロプスのがら空きの胴体向かって投げ付ける。
バランスを崩してノーガード状態のサイクロプスがこれを凌ぎ切ることはできず、アダマントシールドを喰らって仰向けに倒れてそのまま動かなくなった。
『ミオがLv81になりました』
『ゼルがLv95になりました』
システムメッセージが脳に直接響くと、藍大はサイクロプスとの戦闘が終わったことを実感した。
「藍大~、終わったよ~」
「お疲れ様。サイクロプスの渾身の一撃を正面から撃ち破るとは恐れ入ったよ」
「あう」
「ん?」
「あれ?」
まさかと思って藍大が視線を下に向けると、優月が起きていて純粋な眼差しで舞を見ていた。
「今のって優月だよな?」
「うん。私の戦いを見てくれてたんだね~」
「あい」
それだけ言って優月はまた眠くなったらしく寝息を立て始めた。
「受け答えした? まだ生後8日だぞ?」
「大変だよ藍大。この子天才だよ」
藍大も舞も優月を起こさないように声を抑えているが、気持ちはとても盛り上がっていた。
既に首が据わっているということだけでも肉体的には早熟だが、喋れなくとも受け答えができるのならば知能面でも早熟であることになる。
藍大は目を丸くしており、舞はすっかり親バカになっている。
『流石は優月だね。僕に似て賢いよ』
「アタシに似て賢いのよっ」
「何を張り合ってるですかゴルゴン・・・」
リルは優月の名付け親であり、<
だが、ゴルゴンは根拠なく張り合っているだけだ。
メロからツッコミが入るのも当然だろう。
サイクロプスの死体の解体と回収を済ませた後、死体から取り出した魔石は元の姿に戻っていたゴルゴンに与えられることになった。
ミオがアビリティ面では”水聖獣”になる条件を揃えたため、ミオに集中して魔石を上げる期間は終わった訳である。
サイクロプスの魔石を飲み込んだ直後、人型になったゴルゴンの身長が小学校高学年ぐらいまで伸びていた。
『ゴルゴンがアビリティ:<
(幻影を生み出すアビリティか。ゴルゴンの戦術の幅がまた広がったな)
藍大がそんなことを考えていると、ゴルゴンが勝ち誇ったように笑みを浮かべていた。
「背が高くなったのよっ」
「そうだな。ゴルゴンは着実に大きくなってるぞ」
「フフン。一歩リードなのよ」
「むむっ、次は私の番なのです」
『いーなーo(´>ω<`)o』
ゴルゴンに差をつけられてメロとゼルが悔しそうにしていた。
藍大はゴルゴン達が喧嘩して優月が目を覚まさないようにするべく、順番に頭を撫でて彼女達の気持ちを落ち着かせるのだった。
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