第257話 藍大、誕生日おめでとう!
舞とサクラ達従魔の朝は今日だけ特に早い。
藍大をベッドに残して全員リビングに集まっていた。
「今日はみんなで藍大を精一杯もてなすよ」
「勿論。今日は私達にとって大事な日」
『ご主人に素敵な1日を送ってもらわないとね』
「眠い・・・」
「我慢しなさいよゲン。アタシも眠いんだからねっ」
「自分のためにゲンとゴルゴンが早起きしたって聞いたらマスターが喜んでくれるですよ」
『それな( ´-ω-)σ』
「それが本当なら主君は甘過ぎやしないか?」
ゲンが眠そうなのはいつものことだが、ゴルゴンが眠そうなのは冬の朝が寒いからだ。
元々の姿が9つの頭を持つ蛇なので、変温動物らしい要素が働いているらしい。
勿論、<
眠い者も頑張って朝早く起きて集まっている理由とは何か。
12月3日の今日が藍大の誕生日で彼を祝うためである。
昨日までにコツコツ計画を進め、この集まりで最終確認をしているのだ。
今日の流れを確認し終わったら早速行動を開始する。
まずは幼女トリオが寝室に藍大を起こしに行った。
彼女達は静かにドアを開けてベッドで寝る藍大に抜き足差し足で忍び寄り、藍大を踏まないようにベッドに上がって掛布団をゆっくりと剥がす。
「・・・寒い」
藍大はそれだけ言うと、ぼーっとする頭で布団を掛け直そうとして誤って一番近くにいたゴルゴンの腕を掴んで手繰り寄せた。
その結果、ゴルゴンが藍大の抱き枕になってしまった。
早速彼女達の予定外の事態が起きたことになる。
「マスター、何やってんのよっ。ふぁぁぁ、温いのよ・・・」
藍大の抱き枕になって体が温かくなり、ゴルゴンは眠気に襲われた。
「何やってるはゴルゴンです! 羨ましいです! 私と代わるです!」
『いーなーo(´>ω<`)o』
メロとゼルはゴルゴンだけ狡いと訴え、自分達も藍大に抱き着くようにして添い寝し始めた。
藍大だってそこまで騒がしくすれば起きる。
頃合いから言ってもそろそろいつも起きる時間に差し掛かっており、藍大の体内時計が働いて意識を覚醒させる。
藍大の目が開くと、それに気づいた幼女トリオが声をかける。
「「おはよう!」」
『ヾ(≧∇≦*)ゝおはよんよん♪』
「・・・おはよう。えっと、これはどういう状況?」
藍大は目が覚めたら幼女トリオ達と一緒に寝ていたことを知って困惑した。
昨日は舞とサクラと一緒に寝ていたから2人がいるのは納得できる。
しかし、幼女トリオとは一緒に寝ていないので藍大はこの状況に首を傾げた。
そこに愛のフリルエプロンを身に着けた舞がやってくる。
「ゴルゴンちゃん、メロちゃん、ゼルちゃん、まだ藍大を起こしてないの~?」
「あっ、舞。おはよう」
「おはよ~。朝ご飯できたから起きてね~」
「舞が作ってくれたの?」
舞のエプロン姿を見れば、藍大は舞が朝食を作ってくれたのだろうと推測するのは当然である。
「私とサクラ、リル君で作ったよ」
「へぇ、楽しみだな。着替えてすぐに行く」
リルが料理を一緒に作ったという事実へのツッコミはどこへ行ったのだろうか。
いや、<
藍大は舞と幼女トリオを先に行かせて着替えを済ませ、数分とかからずにダイニングへと移動した。
舞達が作ったのはブレックファーストを絵にかいたような朝食だった。
ベーコンエッグトーストにサラダ、家庭菜園で収穫した各種フルーツの入ったヨーグルトと言ったラインナップである。
「美味しそうにできてるじゃん」
「私達だって作ってもらってばっかりじゃないんだよ」
「うん。主には敵わないけど作ってみた」
『僕がベーコンを焼いたんだよ』
「ありがとな。待たせて悪かった。冷めない内に食べようか」
朝食の準備ができているのにこれ以上待つ理由もない。
「「「・・・「『いただきます!』」・・・」」」
仲良く手を合わせて号令をかけ、藍大達は朝食を食べ始めた。
藍大は舞達が見守る中、ベーコンエッグトーストを大きく頬張る。
「うん。トーストはサクッとしてるし、目玉焼きも良い感じに半熟だ。ベーコンもカリッとしてて美味しいぞ」
「やったね!」
「良かった」
『ドヤァ』
舞とサクラはホッとした様子であり、リルは褒めてもらえたことが嬉しくてドヤ顔を披露した。
その後、朝食をのんびりと済ますと舞達が藍大の前にラッピングされた箱を持って来た。
「これは?」
「藍大、誕生日おめでとう!」
「「「・・・「『おめでとう!』」・・・」」」
「あぁ、今日は俺の誕生日だったっけ」
「もう、忘れちゃ駄目だよ。大事な日なんだから」
「ごめん。最近忙しかったから曜日感覚が曖昧になってて」
「主は今日、私達と一緒にゆっくりしてて」
『今日はお休みだよ』
「毎日・・・お休み・・・」
「それはゲンだけなのよっ」
「マスターも休むです」
『 ^^) _旦~~』
「主君よ、休むのも仕事であるぞ」
「・・・そうだな。今日は皆とゆっくり過ごそう。プレゼントを開けても良いか?」
藍大が訊ねると舞達は揃って頷く。
それを見て藍大がプレゼントの箱を開けると、その中には黒を基調としたメタリックな腕時計が入っていた。
文字盤の3と6、9、12にはダイヤが上品に輝いていて高級感を漂わせている。
「う、美しい。この腕時計ってばかなり高かったんじゃないか? 俺は腕時計に詳しい訳じゃないけどすごいものだってのはわかる」
「これはね、藍大が私の誕生日にくれたデジタルフォトフレームと一緒でアダマンタイトとダイヤカルキノスのダイヤが使われてるんだよ。DMUの職人班が頑張ってくれました」
「職人班マジパねえ。大切に使わせてもらうよ」
「藍大が喜んでくれて何よりだよ」
藍大が満足した表情を見て舞達は笑顔になった。
プレゼントタイムが終わると、パンドラとリュカが102号室にやって来た。
どちらも藍大の誕生日ということで、それぞれのパーティーから休みをもらって来たのだ。
それゆえ、丁度良い機会だから司パーティーと未亜パーティーではそれぞれマージとアスタのレベル上げが行われている。
元々リルが藍大の膝の上を独占していたが、パンドラが一緒に座りたそうにするとリルも半分譲った。
『パンドラは右半分ね。僕は左半分だから』
「ありがとう」
舞がその様子を静かに写真と動画を撮っていたとだけ言っておこう。
昼になると、おにぎりパーティーを行った。
みんなでおにぎりを作り、誰がどんなおにぎりを作ったとか誰のおにぎりの形が綺麗か等を競って遊んだ。
午後は中庭からドライザーも交代で空の散歩を行ったり、102号室に戻って幼女トリオがテレビ番組で見て覚えたダンスを披露したりした。
ダンスについては舞がカメラでばっちり撮影してホクホク顔だった。
日が暮れた頃になると、102号室に来客があった。
「邪魔するぞー」
「お邪魔しま~す」
やって来たのは茂と千春だった。
「藍大、誕生日おめでとう!」
「逢魔さん、お誕生日おめでとうございます!」
「ありがとう。仕事があったのに悪いな」
「安心しろ。接待って建前で来てるから問題ない」
「逢魔さんはDMUにとっても重要人物ですからね」
DMUはダンジョンの情報やスタンピードの早期鎮圧、素材の提供とあらゆる面で藍大の力を借りている。
そういう背景があれば、”楽園の守り人”係の茂が藍大の誕生日を祝うために出かけるのは何も問題ないし、千春も茂が接待に必要という理由で連れ出せば何も問題ないのだ。
茂は藍大に持って来た物を渡した。
「とりあえずケーキだ。冷蔵庫に入れといてくれ。他の料理も千春さん作だぞ」
「ケーキ! やったね!」
『やった~!』
「楽しみに待ってたぞ」
食いしん坊ズが藍大よりも喜んでいるのはご愛敬である。
夕食は千春が作って来てくれたものを食べた。
今日は藍大のお休みということで、おにぎり以外藍大は料理を作っていない。
藍大は料理するのが好きだから負担に思ったりしないけれど、偶には作ってもらう日があっても良いなと思うのは不思議ではない。
楽しい夕食が終わると、茂は悪戯っぽい笑みを浮かべて藍大に訊ねる。
「さて、藍大に誕生日プレゼントも持って来た訳だがなんだと思う?」
「職人班が作ってくれた何か!」
「そりゃそうだがアバウト過ぎるっての」
「じゃあ真面目に考えよう。3つの質問にはいかいいえで答えてくれ。それで当てる」
「上等だ。1つ目の質問は?」
「それはシャングリラダンジョン産の素材から作られたか?」
「はい」
「それは普段使いできる物か?」
「はい」
「それは俺のパーティーが2ヶ月以内に倒したモンスターでできた品か?」
「はい」
茂が3つの質問にはいと答えると、藍大はニヤリと笑みを浮かべた。
「答えはベヒーモスの財布だ」
「・・・ファイナルアンサー?」
「ファイナルアンサー」
茂が溜めてその場にいる全員を焦らしてから降参だと言わんばかりに両手を挙げた。
「正解! 畜生、また当てられた!」
「ハーッハッハッハ! 俺を欺くなんて100万年早いわ!」
藍大と茂は学生時代、互いの誕生日にプレゼントが何か当てる遊びを毎回しているのだが藍大の正答率は9割を誇っている。
茂は悔しがったがすぐに復活して藍大にベヒーモスの財布を渡した。
こうして、藍大の誕生日は最後まで笑顔の絶えない最高の1日のまま終わりを迎えた。
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