第252話 キレてるっ、キレてるよぉ!?

 翌日水曜日の朝、藍大達はゼルを加えてシャングリラダンジョンの地下6階にやって来た。


 それは未亜パーティーと司パーティーに貸し出す従魔を探すためだ。


 昨日はハルキジャミアーという結論を急ぎ過ぎたモンスターを出してしまったため、藍大がブラドにあれこれと注文して地下6階に望んだモンスターを出してもらっている。


 藍大達の目の前にはオウルベアLv35とオルトロスLv45が1体ずついた。


『主君よ、まずはこの2体で良いのか?』


「ああ。これで良い」


 どちらのモンスターも月曜日の地下2階と地下4階に現れる既出のモンスターだ。


 ブラドによってこの場に出現させられた2体は、藍大達を敵だと認識して襲いかかろうとした。


 しかし、サクラとリルがそれを許さない。


「動かないで」


『動いちゃ駄目』


 サクラが<透明多腕クリアアームズ>でオウルベアを押さえつけ、リルが<仙術ウィザードリィ>でオルトロスを押さえつけた。


 藍大はオウルベアとオルトロスに近づき、左手はオウルベアで右手はオルトロスに触れてテイムを実行した。


『オウルベアのテイムに成功しました』


『オウルベアに名前をつけて下さい』


『オルトロスのテイムに成功しました』


『オルトロスに名前をつけて下さい』


「オウルベアはサベージ、オルトロスはハウルと名付ける」


 名付けを求められると、藍大は事前に考えていた名前をそれぞれに名付けた。


『オウルベアの名前をサベージ、オルトロスの名前をハウルとして登録します』


『サベージとハウルは名付けられたことで強化されました』


『サベージとハウルのステータスはモンスター図鑑の従魔ページに記載され、変化がある度に更新されていつでもその情報を閲覧できます』


『詳細はサベージとハウルのページで確認して下さい』


 藍大はステータスを確認することなく次のステップへと進む。


「【召喚サモン:サベージ】【召喚サモン:ハウル】【融合フュージョン:サベージ/ハウル】」


 藍大が矢継ぎ早に呪文を唱えた直後、光が辺りを包み込んでその中でサベージとハウルのシルエットが重なっていく。


 そのシルエットは梟の頭と背中から翼、尻尾の代わりに蛇を生やした二足歩行の犬と表現すべき合成獣だった。


 光が収まることで、ダークブルーと呼ぶべき体表のそれが荒ぶる鷹のポーズを取って藍大達の前に現れた。


「フォォォォォッ!」


「オウルベア成分が強過ぎやしないか?」


「荒ぶりたい年頃なのかな?」


『元気だけはあるね』


『煩い』


「アタシも返した方が良いのかしらっ」


「ゴルゴン、やらなくて良いですよ」


『(。+・`ω・´)シャキィーン☆』


 藍大とサクラ、リルは苦笑いでゲンに至っては鬱陶しがっていた。


 幼女トリオはゴルゴンがお返しに自分も荒ぶる鷹のポーズをしようとしたのをメロが遮るも、反対側でゼルが顔文字でドヤ顔と共に荒ぶる鷹のポーズを決めていた。


『サベージ、ハウルの融合に成功してマギカデーモンになりました』


『マギカデーモンに名前をつけて下さい』


「名前はマージにする」


『マギカデーモンの名前をマージとして登録します』


『マージは名付けられたことで強化されました』


『マージのステータスはモンスター図鑑の従魔ページに記載され、変化がある度に更新されていつでもその情報を閲覧できます』


『詳細はマージのページで確認して下さい』


 システムメッセージが鳴り止むと、藍大は早速マージのステータスを確認し始めた。



-----------------------------------------

名前:マージ 種族:マギカデーモン

性別:雄 Lv:40

-----------------------------------------

HP:600/600

MP:800/800

STR:500

VIT:700

DEX:800

AGI:700

INT:800

LUK:700

-----------------------------------------

称号:藍大の従魔

   融合モンスター

アビリティ:<多重思考マルチタスク><火球ファイアーボール><氷矢アイスアロー>   

      <拘束バインド><瞑想メディテート

装備:なし

備考:高揚

-----------------------------------------



 (ポーズが決まってテンションが上がってるんですね、わかります)


 藍大はマージの備考欄に高揚と記された理由に心当たりしかないため、本日2回目の苦笑いをした。


「主、マージに服を着させないと」


「そうだな。こいつも雄だし全裸はちょっとな」


「フォンフォンフォン」


 マージはサクラと藍大の会話を聞き、マージは服を着るなんてノンノンノンでしょみたいな態度で元々は右前脚だった手を左右に振った。


 その仕草にイラっと来たため、藍大はすぐにマージの召喚を解除した。


 なんとなく歩く変態キャラな気がしたこともあり、藍大の決断から実行にかけての時間はほぼノータイムだったと言っておこう。


『これはまた強烈な奴が仲間になったな。やり直すか?』


「ブラド、マージをシャングリラダンジョンに放ったことを想像してみろ。どこかの階が変態によってフィーバーして乗っ取られるぞ」


『・・・う、うむ。それは避けねばなるまい。派遣先の女顔の槍使いと酒豪が矯正してくれることを祈ろう』


「そうだな」


 自分のダンジョンに変態を放たれたくないから、ブラドは自らの提案をすぐに取り下げた。


 気分転換をするべく、藍大達は次に未亜パーティーに派遣する新たな従魔を手に入れることにした。


 未亜パーティーに派遣する予定の従魔も、司パーティーに派遣するマージと同様に融合したモンスターの予定だ。


 ブラドがDPを操作することで、藍大達の前にチタンリザードマンLv40とミノタウロスLv40が現れる。


 サクラとリルが動きを止め、藍大がテイムするまで流れるように進む。


『チタンリザードマンのテイムに成功しました』


『チタンリザードマンに名前をつけて下さい』


『ミノタウロスのテイムに成功しました』


『ミノタウロスに名前をつけて下さい』


「チタンリザードマンはタンク、ミノタウロスはテリーと名付ける」


 名付けを求められると、藍大は今回も事前に用意していた名前をそれぞれに名付けた。


『チタンリザードマンの名前をタンク、ミノタウロスの名前をテリーとして登録します』


『タンクとテリーは名付けられたことで強化されました』


『タンクとテリーのステータスはモンスター図鑑の従魔ページに記載され、変化がある度に更新されていつでもその情報を閲覧できます』


『詳細はタンクとテリーのページで確認して下さい』


 藍大はそのまま次のステップへと進む。


「【召喚サモン:タンク】【召喚サモン:テリー】【融合フュージョン:タンク/テリー】」


 藍大が一気に呪文を唱えると、光が辺りを包み込んでその中でタンクとテリーのシルエットが重なっていく。


 シルエットのベースはミノタウロスだったが、光が収まると全身がチタンの鱗に覆われたミノタウロスになっていた。


 手に持っている両手斧はテリーが元々持っていた物よりも上等になっており、近接戦闘で力を発揮してくれそうな見た目である。


 マージと違っていきなり叫び出さないのはポイントが高い。


『タンク、テリーの融合に成功してチタンミノスになりました』


『チタンミノスに名前をつけて下さい』


「名前はアスタにする」


『チタンミノスの名前をアスタとして登録します』


『アスタは名付けられたことで強化されました』


『アスタのステータスはモンスター図鑑の従魔ページに記載され、変化がある度に更新されていつでもその情報を閲覧できます』


『詳細はアスタのページで確認して下さい』


 システムメッセージが鳴り止むと、藍大はモンスター図鑑でアスタのステータスを調べ始めた。



-----------------------------------------

名前:アスタ 種族:チタンミノス

性別:雄 Lv:40

-----------------------------------------

HP:800/800

MP:700/700

STR:1,000

VIT:1,000

DEX:700

AGI:600

INT:0

LUK:800

-----------------------------------------

称号:藍大の従魔

   融合モンスター

アビリティ:<怪力斬撃パワースラッシュ><怪力投擲パワースロー><体圧潰ボディプレス

      <硬化突撃ハードブリッツ><挑発体位タウントポーズ

装備:チタンアックス

備考:冷静

-----------------------------------------



 (<挑発体位タウントポーズ>にそこはかとなく不安を感じる)


 モンスター図鑑によれば対峙する者の注意を引き付けるポーズを披露するだけらしいが、それでも危険な響きがあるのは間違いない。


 だが、藍大は決めつけるのは良くないと思って頭を横に振ってアスタに声をかけた。


「アスタ、俺の仲間を助けてやってくれ」


「ブモッ!」


 藍大の不安は的中した。


「キレてるっ、キレてるよぉ!?」


 サイドチェストを決めるアスタに藍大は声をかけつつ召喚を解除した。


「雄の従魔って変なの多いね」


『僕とゲンも含まれてるの!?』


『心外』


 サクラのコメントにリルとゲンはショックを受けていた。


「リルは例外。ゲンは怠惰だから普通じゃない」


『良かった~』


『怠惰・・・褒め言葉・・・』


 リルはサクラにとっても可愛らしい弟らしく、藍大の従魔の中で唯一の例外という評価だった。


 ゲンは変態ではなくとも怠惰の度が過ぎているから普通ではないという評価らしい。


 リルはホッとした表情になり、ゲンも怠惰と言われる分には全然問題ないとホッとした声を出した。


 その後、藍大達がダンジョンから脱出してクランメンバーと顔合わせをさせた時、マージとアスタの癖を知って女性陣が微妙な顔になったのは仕方のないことである。

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