第250話 アタシは拒絶するのよっ
翌日の火曜日、真奈が来るのは午後だから藍大達はシャングリラダンジョンの地下7階に来ていた。
今日のメンバーは藍大とサクラ、リル、ゲン、ゴルゴン、メロである。
ゼルは立石孤児院で子供達と遊ぶことになっているので同行していない。
先日、幼女コンビが立石孤児院で子供達と遊んだ時の話を聞いて一緒に遊んでみたそうだったから、藍大がそれを許可したのだ。
さて、地下7階のフロアボスがブラドによってレヴィアタンから別のモンスターに変わったから藍大達はボス部屋へと向かう。
今更ダイヤカルキノスとホワイトバジリスクに手を焼くはずもなく、出て来ては瞬殺される流れを繰り返した。
しかし、ダンジョンを進んでいくと初めて見るピンク色のモンスターの姿があった。
見慣れた
そのモンスターは細長い脚と背中に生えた長い棘がそれぞれ7対ある。
どちらが前か後ろなのかわからない頭と尻尾であり、体のサイズは全然違うがハルキゲニアに似ている。
もっとも、元々のハルキゲニアが消しゴムサイズなのに対し目の前にいるモンスターは三輪車サイズなのだが。
「ハルキャ!」
「気持ち悪い!」
妙に甲高い鳴き声を聞いたところで我慢の限界だったサクラが深淵のレーザーで瞬殺した。
見た目が虫っぽくてサクラ的には生理的に受け付けられなかったようだ。
「消し炭になるが良いわっ」
「近づかないでほしいです!」
訂正しよう。
ゴルゴンもメロもサクラと同じく生理的に受け付けられないらしい。
丸焼きにしたり<
藍大がモンスター図鑑で調べてみたところ、このモンスターはハルキジャミアーというデバッファーだった。
混乱と麻痺、猛毒、不幸の4つの状態異常を扱うだけでなく、<
ハルキジャミアーがスタンピードでダンジョンの外に出て遭遇したのなら、一般的な冒険者はすぐに逃げ出すだろう。
ハルキジャミアーに足止めを喰らっている間に他のモンスターに囲まれたら死に向かって一直線だからである。
そんな時、ブラドの声が藍大の頭に直接響いた。
『どうだ主君よ? 女顔の槍使いのパーティーが即戦力にできそうであろう?』
「ブラド、これは俺がテイムしたくない。というか女性陣が許さないと思うぞ」
『そうは言うがすばしっこくてデバフが得意で耐久力にも優れておるぞ?』
「じゃあ女性陣にプレゼンしてみてくれ。通ったらテイムする」
『・・・桜色の奥方に半殺しにされそうな未来が見えたのでボツとする』
「できれば最初から気づいてほしかった。アビリティを重視してくれたのは嬉しいが他の奴で頼む」
『わかった』
ブラドは司達のパーティーが欲しがった力を持つモンスターを見つけ、気を利かせて地下7階に現れるようにした。
しかし、見た目の印象を度外視してまで即戦力を優先させた判断は失敗だと言えよう。
ハルキジャミアーを出すぐらいならば、2回進化させてハルキジャミアーぐらいの力を持つ見た目がそこそこなモンスターを出した方が喜ばれる。
ちなみに、ハルキジャミアーは食べられないが武器や薬品の素材としては優秀だったりする。
その後、ハルキジャミアーの登場で女性陣が大暴れして地下7階の
ハルキジャミアーの存在のせいでストレスが溜まっていたらしく、”掃除屋”のデメムートすら出会った時点で殺気立ったサクラ達を怯えていた。
「ギャッ!?」
「死ね」
特に虫嫌いでイライラ度合いの高かったサクラが深淵のレーザーを乱射すれば、デメムートは蜂の巣のように穴だらけになって一瞬で倒されてしまった。
『ゴルゴンがLv100になりました』
『ゴルゴンが称号”到達者”を会得しました』
『ゴルゴンの称号”守護者”と称号”到達者”が称号”英雄”に統合されました』
『ゴルゴンのアビリティ:<
『ゴルゴンがアビリティ:<
『メロがLv96になりました』
システムメッセージが鳴り止んだ直後、ゴルゴンが胸を張って得意気な表情をした。
「強くなったのよっ」
「そうだな。ゴルゴンは強くなった」
藍大はゴルゴンの頭を撫でてから新たに会得した<
その結果、<
吹き飛ばす威力はINTの能力値を基礎に嫌だと思う気持ちの強さで補正がかかるというもので、ゴルゴンがハルキジャミアーとの戦闘で近付きたくないと強く願ったことが影響したのだろうと結論付けた。
アビリティのチェックが終わったらデメムートの解体と回収を済ませ、その魔石は最近強いモンスターの魔石を摂取できていないドライザーに与えることになった。
それから藍大達はボス部屋へと向かった訳だが、ボス部屋は前回訪れた時とは全くない層が異なっていた。
レヴィアタンと戦った時は中心部の足場とそこに続く道以外水場となった巨大な闘技場だったが、今は特大サイズではあるもののシンプルな闘技場になっている。
そして、藍大達をボス部屋で待ち受けていたのはマンモスとカバを足して2で割ったような茶色い巨体だった。
「ベヒィィィィィィィィィィッ!」
侵入者を見つけたそれが巨体に見合った咆哮を上げるものだから、藍大は耳を塞ぎながらそのモンスターのステータスを調べ始めた。
-----------------------------------------
名前:なし 種族:ベヒーモス
性別:雄 Lv:80
-----------------------------------------
HP:2,700/2,700
MP:2,000/2,000
STR:3,000
VIT:2,500
DEX:1,000
AGI:1,000
INT:2,000
LUK:1,000
-----------------------------------------
称号:地下7階フロアボス
アビリティ:<
<
<
装備:なし
備考:空腹
-----------------------------------------
(レヴィアタンの次がベヒーモスって順当だな)
藍大がそんなことを考えている間にベヒーモスが動き出した。
「ベヒィィィィィッ!」
ベヒーモスは<
「サクラ、防御だ」
「は~い」
サクラが深淵の弾丸を乱射してベヒーモスの攻撃全てを打ち消す。
INTでは敵わないと判断すると、ベヒーモスは<
「ゴルゴン、<
「アタシは拒絶するのよっ」
ゴルゴンがそう宣言した瞬間、ベヒーモスは何かにぶつかってその勢いのまま体が大きく後ろに傾いてそのままひっくり返った。
「まさかここまで強いとは・・・」
「フッフッフ。アタシが最強なのよっ」
藍大は今のゴルゴンのINTの能力値とベヒーモスのSTRの能力値を比べ、確実に打ち勝てるとわかって指示を出した。
それでも、ここまであっさりとベヒーモスの巨体をひっくり返せるとは思っていなかったので驚きを隠せなかった。
もう戦いが終わった気でいるゴルゴンに対し、メロはまだ気を抜いたりしないで追撃に移行する。
「油断大敵です」
メロはそう言って<
次の攻撃で確実にベヒーモスを倒すため、メロは支援に回ったようだ。
「リル、冷凍保存の時間だ」
『任せて!』
リルが<
その結果、ベヒーモスはひっくり返ったままHPが尽きると同時に冷凍保存されることとなった。
『メロがLv97になりました』
『メロがLv98になりました』
(レベルアップできるのがメロだけとはいえ、一気に2つ上がるのはデカいな)
ベヒーモスがLv80にもかかわらず、メロはLv96からLv98までレベルアップした。
これは完全に予想外なので経験値ウマウマと藍大は思った。
「みんなよくやってくれた。今日の昼食はベヒーモスで焼肉だ」
『焼肉大好き~!』
「美味しそう!」
「食べ応えがありそうねっ」
「いっぱい食べて大きくなるです!」
『じゅるり』
リルを筆頭に従魔達はベヒーモスの焼肉でテンションが上がった。
女性陣はハルキジャミアーがいたことなんて忘れるぐらいご機嫌になっている。
昼が焼肉だとわかったリルが解体を素早く済ませ、ベヒーモスの魔石もドライザーにあげることが決まると藍大達はすぐにダンジョンを脱出した。
なお、昼食がベヒーモスの焼肉だと聞いて喜んだ暴食騎士と”ダンジョンマスター”がいたことは言うまでもない。
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