第245話 俺の家は俺が守る
藍大がゴルゴンとメロの言い合いを留めている間にリルが闘技場の壁際の様子を見て戻って来た。
『ご主人、宝箱見つけた!』
「むぅ、バレたか・・・」
『ワフン。僕に探せない宝箱はないんだよ』
リルが宝箱を見つけたと口にしたことでブラドが悔しがった。
藍大はドヤ顔で褒めてオーラ全開のリルの顎の下を撫でる。
「よしよし。リルは探し物のプロだな。偉いぞ」
「クゥ~ン♪」
リルが満足してから藍大達は宝箱が隠された場所まで移動した。
「遠くから見た感じだと壁の模様に見えたけど、近くで見ると宝箱1個分壁が凹んでたのか」
「良いアイディアだと思ったのだがな。次の階層を用意できるようになったら今度こそバレないような場所に隠して見せよう」
『僕とブラドの勝負だね。負けないよ』
「よろしい。同じ食いしん坊とて手加減はせぬぞ」
(リルもブラドも楽しそうで何よりだ)
次も見つけ出すと自信満々なリルと次は負けないとリベンジに燃えるブラドに藍大は微笑ましく思った。
そこにサクラが声をかける。
「主、ここからは私のターンだよね?」
「勿論だ。サクラ先生、今日は何を狙う?」
「1級ポーション。主のために私が手に入れる」
サクラは16万超えのLUKで1級ポーションを宝箱から手に入れてみせると宣言した。
そして、宝箱の蓋を開けてオレンジ色の液体の入った丸底フラスコを取り出した。
藍大がモンスター図鑑で調べてみると、サクラの手に持っていたそれは1級ポーションだった。
「お見事。1級ポーションだ」
「こ、これが桜色の奥方の実力か。中身はランダムだというのに望むアイテムを引き当てるとは恐ろしい」
「フフン。これが私の実力」
藍大がサクラの頭を撫でながら宝箱の中身が1級ポーションだと伝えたら、ブラドは生で見るサクラの引きの良さに戦慄した。
必ず宝箱を探し出すリルと言い、宝箱から目当てのアイテムを手に入れるサクラと言い”ダンジョンマスター”泣かせなのは間違いない。
とりあえず、割れたら困るので1級ポーションを収納リュックにしまってから藍大達は上がった鉄格子の先へと進んだ。
3番目の闘技場では蛇柄のスーツ姿で肩に担いだデスサイズで肩をトントンと叩く銀髪の悪魔がいた。
その悪魔は藍大達が闘技場に足を踏み入れた直後に不機嫌そうに口を開いた。
「ああ゛ん? 何入って来てんだゴラァ」
悪魔がそう言った瞬間、藍大達はサングラス越しに悪魔の目が光るのに気が付いた。
「やらせないのよっ」
ゴルゴンは<
「しゃらくせえ!」
悪魔は爆発を紫色に光る雷のレーザーで打ち消して強行突破し、ゴルゴンに向かってデスサイズの石突で何度も突きを放つ。
「甘いです!」
「チッ」
メロは<
しかし、悪魔もメロの反撃に気づいてデスサイズの軌道を変えて防ぎ、連続攻撃に備えて藍大達から距離を取るように後ろに飛んだ。
その間に藍大は悪魔をモンスター図鑑で調べていた。
-----------------------------------------
名前:なし 種族:サタン
性別:雄 Lv:90
-----------------------------------------
HP:2,600/2,600
MP:2,800/3,000
STR:3,000
VIT:2,600
DEX:2,600
AGI:3,000
INT:3,000
LUK:2,600
-----------------------------------------
称号:地下9階フロアボス
憤怒の王
アビリティ:<
<
<
装備:サマエルスーツ
カマエルデスサイズ
備考:不機嫌/帯毒/状態異常無効/クリティカル率上昇
-----------------------------------------
(全体的に能力値が高くて攻撃重視のアビリティ構成とか嫌だな)
今までに遭遇してきたモンスターは何かしらの能力値が高い代わりに別の能力値が低いのが普通だった。
ところが、サタンは全体的に能力値が高いから明確な弱点がない。
そんなサタンが攻撃重視のアビリティ構成だから、防御に回ったら怒涛の攻撃を受ける羽目になるので藍大は嫌がったのだ。
「潰れろゴラァ!」
サタンが大声でそう言った直後、闘技場の上空からバランスボール大の隕石の雨が藍大達に向かって降り注ぐ。
「ゴルゴンとメロで迎撃! リルとブラドでサタンを追い詰めろ!」
「メロ、やるわよっ」
「はいです!」
『行くよ!』
「うむ!」
ゴルゴンが降り注ぐ隕石の雨の右半分を<
リルとブラドはサタンを挟むように移動し、それぞれ<
「クソがぁっ!」
サタンが叫んだ瞬間、サタンを包み込むように黒い炎の球体が現れてそれが爆発した。
『┗(`・ω・´)┛フンヌッ!』
ゼルが慌てて<
「私がフォローする!」
サクラはゼルが展開したドームが稼いだ時間で深淵の壁を作り、どうにか自分達の身を守った。
(あれが<
先程サタンが起こした現象は<
黒い炎を荒々しく爆発か放出して攻撃するアビリティだが、その時に抱く怒りがそのままINTに上乗せされる。
さらに言えば、火属性と闇属性の複合属性に猛毒の追加効果まであるから触れただけで黒焦げになった上に猛毒状態になる。
絶対に受けてはいけない攻撃と言えよう。
リルとブラドは空中に逃げていたおかげで無傷であり、藍大達もゼルとサクラのおかげでダメージを負うことはなかった。
だが、サタンは<
「死んどけゴラァ!」
『やれやれ』
サタンが<
続けて<
「ぐはっ!? どっから湧いてきやがった!?」
突然のゲンの登場は予想外だったらしく、反射された斬撃に当たってサタンのサマエルスーツは大破してサタン自身も浅くない傷を負った。
この隙を逃すサクラ達ではない。
「死んでくれる?」
「ぐっ!?」
サクラが深淵のレーザーを体の中心目掛けて放つと、サタンは脇腹を掠める程度に避けるのが精一杯だった。
『逃がさない!』
ダメージを負いながら退いた先にリルが<
点や線で攻撃するよりも面で攻撃することを選んだおかげで、ダメージを負って体の動きが鈍っていたサタンはリルの攻撃を避け切れずに地面に叩きつけられる。
その上、<
余計に体の動きが鈍ったサタンにブラドが<
「吾輩の炎を喰らうが良い!」
「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
ゲンとサクラ、リルの攻撃を受けて弱っていたところに黒炎をまともに浴び、サタンのHPが尽きた。
『ゴルゴンがLv99になりました』
『メロがLv95になりました』
『ブラドがLv85になりました』
『ブラドのアビリティ:<
『ブラドが称号”憤怒の王”を会得しました』
『ブラドがアビリティ:<
『ブラドがLv86になりました』
『ゼルがLv78になりました』
『ゼルがLv79になりました』
(ふぅ・・・。危機一髪だった)
システムメッセージが鳴り止むと、藍大はゲンに近づいてその頭を撫でた。
「この戦いはゲンがMVPだな」
「俺の家は俺が守る」
「ゲンが長文喋った!? って俺は家じゃねえ!」
実際はそんなに長く喋った訳ではないのだが、ゲン基準で言えば長かったので藍大は驚いた。
ゲンが自分のローブに憑依すると、藍大はサクラ達を労った。
「みんなグッジョブ! 全員輝いてたぞ!」
サクラ達は藍大に褒められて誇らしげな表情だった。
そんな中、ブラドが藍大に話しかけた。
「主君よ、今日の探索はとても楽しかったぞ」
「ちゃっかりブラドも”憤怒の王”になったしな」
「吾輩も強くなれたと実感したのだ。地下10階ができたらまた一緒に探索しても良いか?」
「良いに決まってるだろ? ブラドも俺の従魔なんだから」
「・・・そうか。それを聞いて安心したぞ」
藍大はホッとした様子のブラドの頭を撫でた。
それからサタンの解体と武器を回収し、魔石はメロに与えられた。
メロも先程のゴルゴンと同様身長が少しだけ伸びて追いついた。
『メロのアビリティ:<
「メロに追いつかれたわっ!?」
「フフン、追いついたです」
ゴルゴンとメロが騒ぎ出して賑やかになった。
地下9階でやるべきことは全て終えたので、藍大達はダンジョンを脱出した。
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