【Web版】大家さん、従魔士に覚醒したってよ(書籍タイトル:俺のアパートがダンジョンになったので、最強モンスターを従えて楽々攻略 大家さん、従魔士に覚醒したってよ)
第244話 ”掃除屋”も鳴かずば撃たれまい
第244話 ”掃除屋”も鳴かずば撃たれまい
藍大はステータス画面を視界から消して進化したゼルを見る。
最初は気づかなかったが、よく見たらゼルの顔はサクラがバンシーだった頃のものによく似ていた。
それはサクラも同感のようだ。
「主、ゼルが小さかった頃の私に似てる」
「サクラもそう思うか。これが<
「どんな効果なの?」
「このアビリティの持ち主は自動的に性別も含めて自分を最適な姿に変えるんだ」
「じゃあゼルがこの姿になってるのはゼルの意思じゃないってこと?」
「そーいうこと」
「ということは主のパーティーには幼女成分が足りなかったってこと?」
「ぐふっ・・・。そうじゃないんだ。そうじゃないと思いたい」
サクラの純粋な疑問が藍大の精神を追い詰めた。
何が原因でこうなったかは藍大にもわからないが、ゼルが幼女な状態が最適と判断されたことは藍大をより一層幼女使いへと近づけた。
いや、既に幼女コンビが要る時点で手遅れかもしれない。
既に幼女トリオが結成されているのだから。
藍大が額に手をやって唸っていると、ゼルが近寄ってニパッと笑う。
『(*^□^)ニャハハハハハハ!』
「吹き出し・・・だと・・・」
「どうなってんのこれ?」
ゼルは今まで顔の部分に顔文字が現れて自身の感情を表現していた。
それが進化したことにより漫画のキャラのように吹き出しを出現させ、その吹き出しに顔文字を写し出している。
どういう原理なのかは謎だがゼルがまた面白い方向に成長しているのは間違いない。
『面白いね~』
「アタシ達と違う路線で良かったわ」
「キャラ立ちしててホッとしたです」
リルは純粋な感想を述べるだけだが、幼女コンビにとっては新たな幼女の存在は要注意だったようで自分達と違う個性があって安心していた。
「主君の従魔は変わった者が多いのう」
「ブラド、おまいうってわかる?」
「む?」
「ブラドに言われたくない」
『そうだよ』
「まったくだわっ」
「鏡見るです」
『(*´・∀・)ふっ…』
藍大が反応したのを皮切りにサクラ達もブラドに言い返した。
サクラは”色欲の女王”で藍大と結婚した従魔。
リルは”風聖獣”で食いしん坊な従魔。
ゲンは”怠惰の王”で喋るのすら面倒そうにする従魔。
ゴルゴンは”嫉妬の女王”で大人のレディーに憧れるおませな従魔。
メロは”強欲の女王”で家庭菜園の世話を趣味にする従魔。
ブラドは”ダンジョンマスター”の癖に冒険者と一緒にダンジョンを攻略したがる従魔。
ゼルは尖った称号こそないが顔文字で意思疎通を図る従魔。
今ここにいるだけでも藍大の従魔は誰もが個性的である。
全員から自分も普通ではないと言われれば、ブラドも否定するのを諦めた。
その後、藍大は収納リュックに配られたプレゼントが何か確かめてみた。
「ピーラーだな。それも安定のミスリルの」
『ご主人、また料理がおいしくなりそうだね!』
「主君よ、食事が美味しくなることは良いことだぞ」
「そうだな。リルとブラドの言う通りだ」
ミスリルピーラーを手にした自分に食いしん坊ズが嬉しそうに言うものだから、藍大はそれをしまってからリルとブラドの頭を撫でた。
ちなみに、ダンジョンに出てこの話をすればもう1人の食いしん坊も大喜びだろう。
確認すべきことは確認し終えたので、藍大達は反対側にあった鉄格子が上がっているのを見てその先に進んだ。
通路を抜けたその先には最初にいた場所よりもワンサイズ大きな闘技場があった。
先程と違うのは敵が雲の中に隠れているのではなく、闘技場の中心で堂々と藍大達を待ち受けていたことだろう。
「ふん、弱そうな奴等が来たぞ」
「あのチビが俺達と同じドラゴン?」
「ハッ、片腹痛いわ」
藍大達が闘技場に足を踏み入れた瞬間、蘇芳色の三つ首のドラゴンが藍大達を嘲笑する。
その中でもブラドは特に馬鹿にしていた。
「おのれ、誰がこのダンジョンの主かわからせてやる」
「落ち着けブラド。まずは戦力を調べるのが先だ」
今すぐにでも待ち構えていたドラゴンに突撃しそうなブラドに待ったをかけ、藍大はモンスター図鑑で敵の正体を調べた。
-----------------------------------------
名前:なし 種族:アジ・ダハーカ
性別:雄 Lv:90
-----------------------------------------
HP:3,000/3,000
MP:4,000/4,000
STR:2,000
VIT:2,000
DEX:2,000
AGI:2,000
INT:3,000
LUK:2,000
-----------------------------------------
称号:掃除屋
歩く魔法書
アビリティ:<
<
<
装備:なし
備考:嘲笑
-----------------------------------------
(アビリティが魔法ばっかだし属性も多いな)
”歩く魔法書”は5属性以上の魔法系アビリティを保有していると会得できる。
ならば遠距離特化なのかと思えばSTRが2,000もあるから迂闊に近付けばダメージを受けることになる。
仮にダメージを与えられたとしても、<
実に厄介な相手と言えよう。
「主君、もう良いか? 吾輩、自分の駒に虚仮にされて大変不愉快だ。サクッと
「ブラド、その体で戦えんの?」
藍大の疑問はもっともである。
本体なら余裕で勝てるかもしれないが、今ここにいるブラドは分体なのだ。
分体でアジ・ダハーカをソロで倒せるのかと疑問に思うことは何も不思議ではない。
「案ずるな。分体は吾輩の近くにいればいる程本体の力を発揮できる。地下10階に吾輩の本体がいるから今の吾輩があんな奴等に後れを取るはずなかろう」
「だったら戦って良し」
自信満々に言うブラドを見て、藍大はこれなら問題なさそうだとGOサインを出した。
「作戦会議は終わっ・・・あべしっ!?」
ブラドを完全に舐めていたアジ・ダハーカの右の首は、ブラドの急接近に反応できず<
「いつの間・・・たわばっ!?」
今度は左の首をブラドが斬り落とす。
「「おのれぇぇぇぇぇ!」」
中央の首と再生した右の首がブチギレてそれぞれ<
それから先はもう一方的なお仕置きと呼べた。
ブラドは簡単にアジ・ダハーカが死なないように手加減しつつ、全ての首を順番に<
アジ・ダハーカは首を再生させるのにMPを消耗し、常に2つの首がブラドに向かってあらゆる魔法系アビリティを使うからMPの消耗は更に進む。
<
しかし、MPを回復する手段もないのにガンガン消費してしまえば、MP切れでバテるのは自明の理である。
「ク、クソが・・・」
「チビのくせに・・・」
「舐めやがって・・・」
「馬鹿は死なねば治るまい。貴様等に本物のブレスを見せてやろう。対価は貴様等の命だ」
MP切れでも口撃だけは緩めないアジ・ダハーカに対し、ブラドが<
黒い炎のブレスは中央の首に命中した途端に爆発し、左右の首も巻き添えにして魔石以外を吹き飛ばした。
(”掃除屋”も鳴かずば撃たれまい)
あまりにも一方的な戦いを見て、藍大の感想はこのようなものだった。
ブラドを怒らせなければもう少し真っ当な戦いができたはずなのに、アジ・ダハーカが余計なことを言ってそうする機会を失ったのだからピッタリな感想と言えよう。
そんなことを考えている間に藍大の耳にシステムメッセージが届き始めた。
『ゲンがLv100になりました』
『ゲンが称号”到達者”を会得しました』
『ゲンの称号”守護者”と称号”到達者”が称号”英雄”に統合されました』
『ゲンがアビリティ:<
『ゴルゴンがLv98になりました』
『メロがLv94になりました』
『ブラドがLv83になりました』
『ブラドがLv84になりました』
『ゼルがLv76になりました』
『ゼルがLv77になりました』
全てのメッセージが鳴り止むと、ブラドがスッキリした表情で戻って来た。
「ふぅ。今後は配置するモンスターの品性も考慮せねばならぬな」
「ブラド、いっぱい首落としたな」
「いくらムカつくとはいえ食べられるモンスターを配置したのだ。ならばせめて食べられる肉を増やそうとするのは当然であろう?」
「そだねー」
『流石はブラド! よくわかってる!』
「そうだろう、そうだろう」
藍大は乾いた笑みを浮かべたが、食いしん坊ズには通じるものがあったのかリルがブラドの言い分を肯定した。
ブラドを労ってから、藍大達はアジ・ダハーカの解体と回収を済ませた。
ブラドの言う通り、首が大量に確保できたため食用の肉としても武器や装備、薬品の素材も潤沢である。
魔石は順番だから次はゴルゴンの番だ。
ゴルゴンが元の姿に戻ってから藍大に魔石を与えられると、脱皮すると同時に体が一回り大きくなった。
『ゴルゴンのアビリティ:<
アビリティの上書きが終わると、ゴルゴンは<
すると、ゴルゴンの身長が数センチ伸びていた。
「ゴルゴン、背が伸びたか?」
「ホントだわっ。これで大人のレディーでいられる時間が少し伸びたわねっ」
ゴルゴンが嬉しそうに声を弾ませれば、メロがそこに割って入る。
「まだまだ先は長いですよ、ゴルゴン」
「メロ、なんてこと言うのよっ。アタシは誰もが羨むパーフェクトボディーになるんだからねっ」
「なれると良いですね~」
「ふんっ。マスターは今のままでもかわいがってくれるんだからねっ」
「私だって可愛がってくれるです!」
「「むぅ」」
「はいはい。どっちも可愛いから喧嘩しない。ここはダンジョンだぞ?」
「ごめんなさい」
「ごめんなさいです」
藍大からすればゴルゴンもメロもまだまだ子供なのは言うまでもない。
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