第238話 どうせ従魔にするなら雌が良いじゃん!

 マルオが健太と同じボケをかましたことはさておき、マルオの二次覚醒が完了した。


「従魔の融合ができるようになりました!」


「良かった。二次覚醒までは従魔士と死霊術士の力の伸ばし方は同じらしい。じゃあ6階に行くぞ」


「「「はい!」」」


 マルオが無事に2つ目の力として従魔融合を会得できたと確認したので、藍大達は6階に連れて行った。


 6階に移動すると、早速スケルトンの集団が藍大達を出迎えた。


「ここが楽園か」


「むしろ地獄でしょ」


「マルオにとっては楽園かも」


 マルオが6階を楽園呼ばわりするものだから成美と晃が苦笑した。


「リル、おやつが来たよ?」


『ご主人、サクラが揶揄からかって来る~』


「よしよし。サクラ、リルを揶揄うんじゃありません」


 サクラに揶揄われたと言ってリルが甘えて来ると、藍大はリルの頭を撫でて可愛がる。


「むぅ、主はリルに甘い気がする」


「別にリルだけに甘い訳じゃないぞ」


 リルだけ撫でると不公平だから、藍大はサクラとゴルゴン、メロ、ゼルを順番に撫でた。


『俺も・・・』


「後でな」


 成美達はゲンがローブに憑依できることを知らないため、藍大は手短に答えておく。


 不必要に長く喋ってしまうと、成美達が一体何と喋っているのかと疑問に思うからである。


 藍大は家族従魔サービスを終えたらマルオに訊ねた。


「マルオ、どんなスケルトンを融合させるか考えてるか?」


「ばっちりです。魔法重視のスケルトンです」


「じゃあただのスケルトンに用はないか」


「ですね」


「わかった。ゼル、やって良いぞ」


『(`ω´)ヤッテヤルゼ!』


 ゼルは<暗黒支配ダークネスイズマイン>で暗黒の弾丸を乱射する。


 ただのスケルトンではその攻撃を防ぐことはできず、あっさりとバラバラの骨片へとなり果てた。


「闇属性、良いな」


「その判断は早計だわっ」


「ゴルゴンさん?」


 マルオがゼルの戦いを見てボソッと呟くと、ゴルゴンが聞き捨てならないと待ったをかけた。


 <火炎支配フレイムイズマイン>を会得しているゴルゴンからすれば、火属性のアピールをしたいのだろう。


「戦いは火力なのよっ」


「でも、水属性には相性悪いですよね?」


 ゴルゴンが胸を張って言ったところに成美が横から口を挟む。


 少し前までのゴルゴンならばこれで黙ったかもしれないが、今日のゴルゴンは違った。


「水を蒸発させる程燃やすのよっ」


「なるほど!」


「えぇ・・・」


 ゴルゴンはテレビの理科系番組で沸騰の存在を知って感銘を受けた。


 100℃になった水は沸騰して水蒸気になると知り、火が水に負けるだけではないと自信を持ったのである。


 マルオがゴルゴンの言い分にあっさり言いくるめられているのを見て成美の表情が引き攣った。


 流石に藍大もノリと勢いでマルオに判断させる訳にはいかないから口を挟む。


「ゴルゴンみたいに突出した従魔ならば別だが、マルオが使役することになる従魔が最初からゴルゴンみたいに強い訳じゃない。5階の掃除屋とフロアボスはウォーターゴーレムとフレイムゴーレムだ。それを考えると火属性の魔法系アビリティじゃキツいだろう。それもあってゼルの力を見せたんだ」


「突出してるんだからねっ」


「ゴルゴン、マスターの邪魔になるからこっちに来るです」


 自分が突出していると言われてドヤ顔になるゴルゴンだが、メロが空気を読んで回収する。


 幼女コンビは今日もメロがストッパーらしい。


「5階を突破するなら闇属性の方が良いってことですか」


「まあ魔石で強化してればいずれはゼルもしくはサクラみたいに高威力のアビリティを使えるし、弱点属性は光だけだからほとんどの敵を相手に攻撃の威力が変わらないってのは良いかもな」


「良いですね! それじゃ闇属性アビリティを持ったスケルトンメイジを集めたいです!」


「わかった」


 方針が決まると、藍大は魔石を回収してスケルトンの骨は成美達に渡した。


 藍大にとってはスケルトンの骨が大した価値はなくとも、成美達が売れば少しでも稼げるからだ。


 ダンジョン探索を再開してすぐ、藍大達はスケルトンランサーとスケルトンアーチャー、スケルトンタンクの混成集団と遭遇した。


「マルオ、スケルトンタンク同士は融合できるぞ」


「マジすか? 壁役も欲しいのでテイムしたいです」


盾役タンクがいないのも不味いか。よろしい。ゴルゴンとメロでスケルトンランサーとスケルトンアーチャーを殲滅」


「わかったわっ」


「はいです!」


 出番を与えられた幼女コンビはそれぞれ<火炎支配フレイムイズマイン>と<植物支配プラントイズマイン>で創り出した炎の蛇と長い蔓で指定された敵を殲滅した。


「残りはスケルトンタンクだけだ。マルオとローラで協力してテイムしてみろ」


「了解です! ローラ!」


 ローラはコクリと頷くと、手前のスケルトンタンクの注意を引き付ける。


 ローラが攻撃を仕掛け続ければ、スケルトンタンクは防戦一方になるのだ。


 その隙にマルオがアンデッド図鑑を被せてテイムに成功した。


 しかし、マルオがテイムした余韻に浸ることなく次々と残りのスケルトンタンクがマルオとローラを襲う。


「【召喚サモン:アーマ】」


 マルオはテイムしたスケルトンタンクにアーマと名付けて呼び出し、融合に必要な数のスケルトンタンクをテイムできるように立ち回る。


 マルオがアーマに加えて2体のスケルトンタンクをテイムすると、成美と晃に救援を要請する。


「成美と晃、ヘルプ! 【召喚サモン:ベーマ】【召喚サモン:シーマ】」


「任せなさい!」


「わかった」


 盾役タンクがいれば攻撃に集中できるので、ローラを除いて成美達にとっては格上のスケルトンタンクでも防戦を強いられてやがては倒れた。


「すげえ。ローラのレベルが一気に2つ上がってる」


「ローラの経験値的には美味しいかもしれないけど何度もは戦えないわね」


「同感」


 スケルトンタンク達と戦い終わった後、マルオも成美も晃もホッとした様子だった。


 格上との戦闘でかなり集中したからだろう。


 藍大は後続の敵が出て来ないか警戒しながらサクラ達と協力して自分達が倒したモンスターの魔石を回収した。


 少し休んだことで落ち着いた成美達も戦利品回収を済ませた。


「さて、ここからが俺初の融合タイムだ。アーマ、ベーマ、シーマ、準備は良いか?」


 マルオが声をかけることで3体のスケルトンタンク達はコクリと頷く。


「よっしゃ! 【融合フュージョン:アーマ/ベーマ/シーマ】」


 マルオが呪文を唱えた瞬間、3体を光が包み込んだ。


 光の中でアーマとベーマ、シーマのシルエットが重なって一つになる。


 シルエットだけで判断するならば、プレートアーマーを着こんで人1人を守れそうな盾を2つ持った人型モンスターだ。


 その変化の詳細は光が収まってから明らかになった。


 プレートアーマーと盾の色はそれぞれメタルカラーだが、盾にはそれぞれ髑髏マークが彫られていた。


 ヘルムは視界を確保できるタイプであり、そこから見える融合スケルトンの色は赤かった。


「名前はセーラだ」


「さっきはツッコまなかったけどまた雌なの?」


「どうせ従魔にするなら雌が良いじゃん!」


 マルオが煩悩丸出しの発言をすると、成美はマルオに対してゴミを見るような視線を向けてから藍大の方を向く。


「逢魔さんもそうなんですか?」


「俺はテイムしたいモンスターをテイムするだけだ。俺の従魔は雄雌無性問わずいるだろ?」


「そうですよね。逢魔さんがマルオみたいな変態な訳ないですよね」


 (その言葉は微妙に刺さるから止めてほしい)


 幼女コンビが従魔である事実から、藍大は幼女使いと変態紳士ロリコン達から掲示板で崇められている。


 それを思い出して成美の言葉に藍大は苦笑するしかなかった。


 嫌なことは忘れようと頭を切り替え、藍大はセーラをモンスター図鑑で調べてみた。



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名前:セーラ 種族:レッドガードナー

性別:雌 Lv:53

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HP:950/950

MP:850/850

STR:810

VIT:1,090(+100)

DEX:800

AGI:800

INT:0

LUK:630

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称号:武臣の従魔

   融合モンスター

アビリティ:<盾突撃シールドブリッツ><盾投擲シールドスロー><二刀流ツーウェイプレイヤー

      <挑発タウント><根性ガッツ

装備:メタルアーマー

   ボーンソウルシールド×2

備考:得意気

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 (盾役タンクが盾を投げても良いのか?)


 藍大はセーラのステータスを見てそんな疑問が湧いたけれど、舞も騎士なのに盾を投げているので良いかと思い直した。


 とりあえず、成美パーティーの盾役タンク不在はこれで解消されたので良しとすべきなのだろう。

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