【Web版】大家さん、従魔士に覚醒したってよ(書籍タイトル:俺のアパートがダンジョンになったので、最強モンスターを従えて楽々攻略 大家さん、従魔士に覚醒したってよ)
第223話 合言葉は残さず食べましょうってことか
第223話 合言葉は残さず食べましょうってことか
ウォーターリーパーの回収を終えた後、藍大達は本栖湖ダンジョンの探索を再開した。
”災厄”であるウォーターリーパーを倒したが、それだけで満足して帰ればまたスタンピードの準備が着々と行われてしまうと判断したからだ。
このダンジョンの戦力を削れるだけ削っておけば当分は安心できるから、藍大達は探索を続行する。
桟橋を進んでいる途中で舞が思いついたことを口にした。
「藍大、このダンジョンの湖にショックを与えたらどうなるかな?」
「と言うと?」
「シャングリラダンジョンでマグマの温度が下がったら、
「なるほど。やってみる価値はありそうだな」
「ま、舞が頭を使ってるわっ」
「酷いことを言うのはこの口だね~」
「や、止めなさいっ。離すのよっ。助けてマスター!」
(ゴルゴン、知ってるか? 口は災いの元って諺があるんだぜ)
助けを求めるゴルゴンから藍大はスッと視線を逸らした。
何故かメロもゴルゴンから視線を逸らしていたが、それにツッコむ者はいない。
舞はゴルゴンの両頬を引っ張ると、グルグルと引っ張って軽いお仕置きをしている。
その間に藍大はリルに指示を出した。
「リル、右側の湖に<
『わかった!』
リルは藍大の指示通りにアビリティを発動した。
それにより、強烈な下降気流が桟橋の右側の湖に生じる。
白い嵐とも呼べるそれを受け、右側の湖の水が急激に冷却されて水面が凍り付いた。
リルのアビリティが終了した直後、急激な温度の変化に耐えられずに水面に上がったまま凍死した一本角の平べったい魚のモンスターの姿が散見された。
「ホーンギルだね。食べられるよ。1尾見かけたらその辺りに10尾以上はいるの」
「舞、ゴルゴンへのお仕置きは済んだの?」
「途中からくすぐりの刑にしたら降参されちゃった」
「も、もう、お嫁に行けないのよ」
舞にくすぐられて笑い過ぎたらしく、ゴルゴンは苦しそうだった。
「ゴルゴン、気をつけて喋らないと駄目だぞー」
「わ、わかったのよ」
「よしよし」
流石にかわいそうだったので、藍大はゴルゴンの頭を撫でて元気づけた。
一気に凍死させたホーンギル達の死体を回収したら、今度は左側の湖にもショックを与えることにした。
「ゴルゴン、左側の湖に<
「はいなっ」
ゴルゴンは桟橋から離れた左側の湖の上を狙って<
爆発の衝撃に驚いて水中からザリガニと蠍を足して2で割ったような赤いモンスターの群れがプカリと浮かび上がった。
「う~ん、このモンスターは見たことないかも」
「俺が調べてみよう」
藍大は舞も初見だと言うモンスターの正体をモンスター図鑑で調べた。
(ザリスコス。尻尾に毒針あり。身は熱すれば食べられるが生食は食中毒になる可能性大)
脅威に値しないと判断すると、食べられるか否かを調べてしまうのは食いしん坊ズの影響が大きいのだろう。
「ザリスコスは尻尾に毒があるってさ。とどめを刺す時に注意すること」
藍大の注意を聞いて舞達は毒を貰わないよう気をつけながら次々と仕留めた。
サクラの<
ザリスコスの解体と回収を済ませてしばらく先に進むと、バシャンと派手に水飛沫を上げてメタリックカラーの巨大な触手が現れた。
「ニョロ即斬!」
サクラが容赦なく深淵の刃で切り刻み、メタリックカラーの巨大な触手は細切れになった。
藍大が後で調べた結果、その触手はメタルローパーという”掃除屋”でレベルは35だった。
触手に良い思い出がない藍大達だったが、ダンジョン産の素材として使い道があったことから細切れになったメタルローパーの破片を残さず回収した。
『ご主人、あっちに小さな祠があるよ』
「祠? まだ俺には見えないがリルは目が良いな」
『エッヘン』
「頼もしいじゃないか」
「クゥ~ン♪」
自分には点にしか見えないが、リルの目にはその点が祠に見えていると知って藍大はリルを褒めた。
藍大達が桟橋をそのまま進んでいくと、確かにリルが言った通り小さい祠があった。
祠は桟橋の終点であり、このダンジョンの行き止まりのようだった。
「ここが終点?」
「そうみたいだね」
「ボスモンスターはどこ?」
藍大達が話していた時、祠の後ろから派手に水飛沫を上げて上半身が馬で下半身が魚のモンスターが現れた。
「普通のケルピーっぽいな」
「そだね」
「マグケルピーよりも弱そう」
「ヒヒィィィン!」
藍大達ががっかりした表情を見せるので、ケルピー(仮)が怒りをアピールするように嘶いた。
その間に藍大はモンスター図鑑でケルピー(仮)の正体を確かめた。
-----------------------------------------
名前:なし 種族:ケルピー
性別:雌 Lv:50
-----------------------------------------
HP:350/350
MP:400/400
STR:0
VIT:450
DEX:400
AGI:400
INT:650
LUK:250
-----------------------------------------
称号:ダンジョンマスター(本栖湖)
アビリティ:<
<
装備:なし
備考:激怒
-----------------------------------------
(ケルピー激おこじゃん)
呑気にそんな感想を抱いていると、ブラドが藍大に呼び掛けた。
『主君よ』
「どうしたブラド?」
『本栖湖ダンジョンをどうする気だ?』
「今回は潰しちゃおうと思ってるけどどう?」
『吾輩も概ね賛成だ』
「概ねってことは何か補足があると?」
『うむ。主君達がケルピーを倒した瞬間に吾輩が本栖湖ダンジョンを乗っ取り、DPを回収したら崩壊させる』
「合言葉は残さず食べましょうってことか」
『大体合ってるぞ』
「わかった。リル、ケルピーに<
藍大はブラドとの話し合いを終わらせてリルに指示を出した。
『わかった!』
リルが<
藍大とブラドが喋っている間にちゃっかり<
それどころか、ケルピーは蒼い雷に打たれて一瞬にして黒焦げになった。
『よし、ここの管理権限を奪取したぞ』
藍大の脳内にブラドの声が響く。
無事にダンジョンの乗っ取りに成功したらしい。
ケルピーのレベルが低いせいで誰もレベルアップしなかったから、藍大としては戦いが終わった気がしなかった。
しかし、ブラドが本栖湖ダンジョンの管理権限を奪ったと告げたのだから戦闘は終わったのだ。
「リル、グッジョブだ」
『ご主人、ごめんね。お肉焦がしちゃった』
「気にするな。表面は焦げてるけど中身はまだ食べられるかもしれないし」
『そっか!』
藍大の励ましを聞いてリルは気合を入れて解体し始めた。
その結果、皮を剥いだら良い感じに焼けたケルピーの肉が姿を現した。
「香ばしい匂いがする~」
『ご主人、食べても良い?』
「昼御飯があるから少しだけ切り取って食べるんだぞ。ほら、塩と胡椒だ」
「『いただきます!』」
塩と胡椒を渡してしまうあたり、やはり藍大は甘いと言えよう。
舞とリルは味見のつもりで塩と胡椒を振ったケルピーの肉を食べた。
「う~ん、悪くはないけど物足りない」
『やっぱりご主人の料理じゃないと満足できないね』
「・・・昼飯楽しみにしとけよ」
「『うん!』」
藍大は自分の料理を褒められて嬉しくなったようだ。
なんだかんだ言って藍大はチョロい。
その後、藍大達は本栖湖ダンジョンでやるべきことは全てやり終えたので脱出した。
藍大達が脱出した直後、再びブラドの声が藍大の頭に直接響いた。
『ご馳走様でした』
その瞬間、プレハブが音を立てて崩れた。
『おめでとうございます。ブラドが本栖湖ダンジョンを崩壊させました』
『初回特典としてブラドに経験値が大幅に加算されます』
『ブラドがLv76になりました』
『ブラドがLv77になりました』
『ブラドがLv78になりました』
『ブラドがLv79になりました』
『ブラドがLv80になりました』
『ブラドのアビリティ:<
(”ダンジョンマスター”ってそんなんありなの!?)
藍大が驚くのも無理もない。
モンスターを倒さずにレベルアップしたこともそうだが、<
このアビリティはMPを500消費するだけで釣り合わない物でも取り寄せられる効果がある。
ただし、釣り合いが取れない物を取り寄せた場合はリキャストタイムがそのギャップに応じて設けられる。
なんでもかんでも好き勝手に取り寄せられる訳ではないのだろう。
『フッフッフ。これで主君が作った特大サイズのハンバーグを取り寄せられるぞ』
(ブラドも食いしん坊ズの仲間入りか。平和な使い方でホッとしたぞ)
ブラドも気づけば藍大に胃袋を掴まれていたらしい。
なんにせよ、藍大達は本栖湖ダンジョンを攻略したのでシャングリラへと帰った。
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