第216話 チェンジで
トリオレイヴンとヒヒイロヘッジホッグを倒して進むこと20分、藍大達は4面全てを用いた壁画が描かれた広間に辿り着いた。
その壁画はあらゆる冒険者の
(貴重な資料かもしれんし撮っておくか)
藍大がスマホを取り出して写真を取り出した。
舞達はそんな藍大を守るように陣形を組んだ。
迅速かつ丁寧に写真を撮り終えたところで、藍大達の反対側からコクオーをよりも一回り大きな白馬が現れた。
ただし、その白馬は普通の馬型モンスターではなかった。
脚が8本ある馬は普通の馬とは言えまい。
「どう見てもスレイプニルです。ありがとうございます」
藍大はそう言いつつ、予想が外れていてくれと願いながらモンスター図鑑でその正体を確認した。
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名前:なし 種族:スレイプニル
性別:雄 Lv:85
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HP:2,100/2,100
MP:2,600/2,600
STR:2,300
VIT:1,700
DEX:1,700
AGI:2,500
INT:2,300
LUK:1,600
-----------------------------------------
称号:掃除屋
アビリティ:<
<
<
装備:なし
備考:獰猛
-----------------------------------------
(チェンジで)
藍大の願いは切実にそれに尽きた。
能力値の合計ではレヴィアタンよりも上だと知れば、藍大がそう思うのも仕方のないことである。
そんな藍大の気持ちなんて知る由もなく、スレイプニルは大きく口を開いた。
「ヒヒィィィィィン!」
その咆哮は<
「舞!」
「おう!」
藍大に頼られた舞は光のドームを展開して藍大達を守った。
大きな音の塊が光のドームへとぶつかり、弾かれてそのまま消える。
その瞬間にはスレイプニルが<
移動した先から<
「やらせないです!」
「ぶっ飛びなさいっ」
メロが<
「作戦α! リル、スレイプニルが跳んだら居場所を伝達しろ!」
『うん!』
作戦αとは、藍大と舞を中心に従魔達が背中合わせに囲う陣形から敵の動きに合わせて割り当てられたエリアの担当が迎撃することだ。
1時~3時59分の方角はサクラ。
4時~6時59分の方角はリル。
7時~9時59分の方角はゴルゴン。
10~12時59分の方角はメロ。
舞は藍大を守るのに集中できるように迎撃の割り当てがない。
地下8階に挑戦するのが1日延びたため、藍大は丁寧に指示を出せない時に備えていくつかの作戦を用意しておいたのだ。
勿論、急にいくつもの作戦を覚えろというのも難しいから、考案した作戦は3つしかないのだが。
停止状態から脱したスレイプニルは<
そこからスレイプニルが<
『2時!』
「任せて!」
リルがスレイプニルの現れた方角を伝えた直後、サクラが深淵のレーザーを放って迎撃した。
スレイプニルはまさか自分の移動先が読まれるとは思っていなかったため、<
『10時!』
「狙い撃つです!」
今度は硬い植物の種でメロが狙撃する。
これもまた当たりはしたものの、スレイプニルが<
『8時!』
「ドーンなのよっ」
点による攻撃では掠るだけに留まると考え、ゴルゴンは<
範囲攻撃では掠る程度に被害を抑えられず、スレイプニルが次に<
次に現れたのは5時の方角であり、リルは時間をロスしないように宣言を省略して<
先程までよりも攻撃のタイミングが速くなっていたせいで、スレイプニルは攻撃が来るまで少し余裕があると思い込んでいた。
それが原因でリルの<
「加勢する!」
スレイプニルが<
「ヒヒィン!?」
スレイプニルは体が不調になったと錯覚して驚く。
そんなことお構いなしにサクラ達が攻撃を畳みかける。
「捕まえたです!」
「死んでくれる?」
「お肉になりなさいっ」
メロが蔓を創り出してスレイプニルを置きあがらせないようにしたら、サクラは深淵のレーザーでゴルゴンは炎の蛇で一気にダメージを与える。
炎の蛇で視界が遮られていてスレイプニルの姿が見えないが、システムメッセージが藍大の耳に戦闘の終わりを告げていない。
『9時!』
「えっ!?」
「任せな!」
リルがスレイプニルの出現を察知したが、ゴルゴンの反応が僅かに遅れた。
スレイプニルは油断したゴルゴンの穴を突いて<
ところが、スレイプニルの反撃に舞がカバーリングで合わせ、雷光を纏わせたミョルニル=レプリカを振り抜いた。
「パワーじゃ負けねえぞゴラァ!」
「ヒヒィン!?」
スレイプニルは舞に力負けして後方に吹き飛ばされた。
これにはスレイプニルも驚かないはずがない。
まさか自分よりも矮小な人間に力負けするだなんて思いもしなかっただろう。
だが、それはスレイプニルのプライドを酷く傷つけた。
得意の暗殺では何度も失敗し、隙を突いて力技で攻めればそれも通じずに反撃を喰らった。
スレイプニルは自分を叱咤して素早く起き上がると、<
「ゴルゴン!」
「もう油断しないんだからねっ」
ゴルゴン怒りの<
しかし、それは囮でスレイプニルにとっての本命は次に繰り出す<
自分を中心に紫色の雷の波を扇状に撃ち出す。
アビリティの発動速度がスレイプニルの保有する中で最速かつ広範囲に届く攻撃だったが、その相手が悪かったとしか言えない。
「無駄だ!」
舞の光のドームは全方位の攻撃から味方を守る。
「リル、スレイプニルが冷静さを失った今がチャンスだ。とどめを刺して来い」
『わかった』
<
「ヒッ」
『遅いよ』
スレイプニルが振り返った時には既にリルが<
暗殺とはこうやるのだとリルがお手本を見せ、スレイプニルはその身をもって
『サクラがLv100になりました』
『サクラが称号”到達者”を会得しました』
『サクラの称号”守護者”と称号”到達者”が称号”英雄”に統合されました』
『おめでとうございます。従魔が初めてLv100になりました』
『初回特典としてサクラのアビリティ:<
『リルがLv99になりました』
『ゲンがLv96になりました』
『ゴルゴンがLv94になりました』
『メロがLv88になりました』
『メロがLv89になりました』
システムメッセージが鳴り止んだところで、藍大は舞達を順番に抱き締めた。
「みんなお疲れ! 作戦が上手くいって良かったぞ!」
藍大から抱き締められて舞達は喜んでいたが、ゴルゴンだけは申し訳なさそうな顔だった。
「マスター、ごめんなさい」
「どんまい。今悔しいと思えたなら、同じ失敗はもう二度としないだろ?」
「勿論なのよっ」
「ならばよろしい。隕石を壊したのはグッジョブだったぞ」
「はいなっ」
藍大は従魔を叱って育てずにチャンスを与えて育てる方針だから、ゴルゴンがちゃんと反省できていると知って叱らずにゴルゴンの良かったところを褒めた。
甘いと思うかもしれないが、それが藍大なのだ。
ゴルゴンが立ち直ると、藍大達はスレイプニルの解体を始めた。
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