【Web版】大家さん、従魔士に覚醒したってよ(書籍タイトル:俺のアパートがダンジョンになったので、最強モンスターを従えて楽々攻略 大家さん、従魔士に覚醒したってよ)
第190話 ビッグボスと呼んでくれとは恥ずかしくて言えねえわ
第190話 ビッグボスと呼んでくれとは恥ずかしくて言えねえわ
光が収まってすぐに藍大は自分の体をじろじろと見回して軽く動かしてみたが、特に変化は見当たらなかった。
たった1点だけを除いては。
「モンスター図鑑がなくなってる」
「藍大、モンスター図鑑がないの?」
「ない。モンスター図鑑が俺に吸収されたらしいんだが、どうやって出せば良いんだ?」
そう疑問を口に出した途端、藍大の視界にゲームのユーザーインターフェイスが現れた。
(なるほど。こういうことか)
モンスター図鑑が自分に吸収されたということは、ユーザーインターフェースのように使えば良いのだと藍大は理解した。
モンスターの召喚と送還には呪文が必要なのは以前と変わらない。
変わったのはモンスター図鑑を手に持たずとも良くなったこと、そしてモンスターをテイムする時にモンスター図鑑を被せるのではなく藍大が手で触れる必要があることだった。
ダンジョン探索で戦えない者の両手が空くのは良いことだろう。
少なくとも、物を持っていたせいで行動が制限されることはないのだから。
まことに残念ながら、藍大が”魔王”の称号を手に入れても身体能力が上がって俺TUEEEできる訳ではなかった。
現実はそこまで藍大を優遇しない。
モンスター図鑑を手に持たずとも使えるようになったことだけで満足すべきだと伝えているかのようだ。
「藍大、大丈夫?」
藍大にはユーザーインターフェイスが見えていても舞にはそれが見えておらず、舞には藍大がぼーっとしているように見えていた。
それゆえ、藍大を心配して声をかけた訳だ。
「ん? あぁ、問題ない。モンスター図鑑の新しい使い方を確かめてたんだ」
「そっか。使い易くなったの?」
「両手が空いたし俺の意思で画面の開閉ができるから便利になったと思う」
「画面? よくわかんないけど藍大が使い易いならそれで良いよね」
自分に見えないものを理解するのは難しいので、舞は藍大が良いならば自分も良しとすることに決めた。
変に考えるよりもそう割り切った方が楽なのは間違いない。
「そういうこと。じゃあ、改めてみんなお疲れ! シャングリラダンジョンを踏破できたのはみんなおかげだ!」
「イェ~イ!」
自分の力について整理がつくと、藍大は舞から順番にハイタッチした。
ゲンも祝いたい気分になったらしく、<
そこに藍大が自分に”魔王”の称号が追加されたと聞くと、サクラ達従魔が大喜びだった。
「流石は主! 魔王様!」
『ご主人が魔王だよ! 偉いんだよ!』
「おめ」
「ほ、褒めてあげるんだからねっ」
「おめでとです!」
サクラ達が一斉に藍大に飛びつく者だから、藍大の周りの密度がすごいことになっている。
それが落ち着いた頃合いに舞が藍大に疑問をぶつけた。
「藍大は”魔王”の効果ってわかるの?」
「わかんない。俺にわかるのはモンスターのことだけだからな。後で茂に訊いてみるさ」
「芹江さんが卒倒したりして」
「ないとは言えないのが怖いなぁ」
昨日のバーベキューで大罪の称号を得たモンスターについて話したかと思えば、今日は藍大が”魔王”の称号を得たと知らされる。
茂の心が休まる暇はなさそうだ。
「俺のことはひとまず置いといて、ブラドを呼び出してみよう。【
藍大が呪文を唱えることで
「テイムされた以上、吾輩は其方を主君と仰ごう。名前はなんというのだ?」
「逢魔藍大だ」
(ビッグボスと呼んでくれとは恥ずかしくて言えねえわ)
藍大は一瞬ボケたい衝動に駆られたが、そのボケをブラドが真に受けそうな気がしたので普通に名乗った。
「承知した。逢魔藍大とその仲間達をシャングリラダンジョンは歓迎しよう」
「ブラド偉そう。新入りの癖に」
「吾輩をテイムした主君には頭を下げるが吾輩はダンジョンマスターだ! 貴様等には退かぬ! 媚びぬ! 省みぬ!」
(ブラド、お前そんなネタ知ってたのか)
ブラドはプライドが高いようなので、茶々を入れたら拗ねそうだと思って藍大は心の中だけに感想を留めて真面目な説明だけはすることにした。
「ブラド、舞とサクラは俺の妻だからな。2人に無礼なことをしたら俺に逆らうのと同じだからな」
「それを先に言ってくれ! 済まなかった。主君の奥方に無礼を申した。誠心誠意仲間として振舞おう」
「わかればよろしい」
サクラは藍大に自分を妻と紹介してもらえたから機嫌が良くなった。
藍大はブラドがサクラ達に歩み寄る姿勢を見せたことにホッとした。
ここでどちらが強いか勝負して決めようなんてことになれば、どう考えてもボス部屋が大破する未来しか見えなかったからである。
「それはそうと、俺達が今後もシャングリラダンジョンでモンスターを狩るのは問題ないか?」
「うむ。問題ないぞ。ダンジョン内に冒険者が侵入するとDPが手に入るからな」
「DP?」
「ダンジョンポイントのことだ。吾輩はDPを使ってシャングリラダンジョンを運営してたのだ」
それから藍大はブラドにダンジョンの運営について説明してもらった。
その結果、以下のことが新たに明らかになった。
・DPはダンジョン内で冒険者やモンスターが死ぬと手に入る
・DPはダンジョン内でMPが消費されることでも手に入る
・”ダンジョンマスター”はDPでダンジョンの内装をカスタマイズできる
・”ダンジョンマスター”はDPで好きな種族のモンスターを召喚できる
・”ダンジョンマスター”はDPでダンジョン内にアイテムを仕込める
・ダンジョン内で独自ルールを設けて運営をするとDP獲得量に補正がかかる
・”ダンジョンマスター”はダンジョン内では飲まず食わずでも生存可能
「なるほど。よくわかった。追加質問良いか?」
「何かな主君?」
「シャングリラダンジョンの
「ふむ。それが吾輩のDP稼ぎが美味いところよ。このダンジョンでは冒険者がいなくなったフロアのみモンスターを召喚できるようにしておるのだ。いつでも召喚できるようにするよりもDP獲得量が5倍に増えておる」
「そういう仕組みだったか。じゃあ、”掃除屋”がフロアボスよりも強いのはそのフロアから冒険者を撤退させるためか?」
「肯定する」
(ブラドは賢いな。経営者みたいだ)
藍大はそう思っているが、”ダンジョンマスター”は経営者みたいではなく経営者である。
「それともう1つ質問がある。シャングリラダンジョンに俺が初めて入った時、サクラと出会えたのはブラドが仕組んだのか?」
「否定する。桜色の奥方は吾輩の力とは無関係だ。主君がこのダンジョンに足を踏み入れる直前にバグが生じたんだが、その時に紛れ込んだのだ」
「私と主が出会うのは運命だった。ブラドは一切関係ないの」
サクラはロマンチックなことを言いながら藍大に抱き着いた。
自分が藍大に会えたことがブラドに仕組まれていなかったと知って嬉しかったらしい。
藍大は一通り質問を済ませたので、ブラドへの質問タイムを終了した。
そして、思い出したように収納リュックに入っているはずのプレゼントを探し始めた。
”魔王”やら”ダンジョンマスター”やらの話で後回しになったが、システムメッセージは藍大にプレゼントがあることを告げていたのだ。
収納リュックから藍大が取り出したのはボウルだった。
これも当然ミスリルでできている。
「なんだボウルではないか。主君はミスリルを無駄遣いしてないか?」
「フッフッフ。ブラド、その認識は今すぐ改めた方が良い。いや、これを食べればきっと改めるだろう」
藍大はブラドが自分を残念なもののように視線を向けて来るものだから、収納リュックから作り置きしたハンバーグの乗った皿を取り出した。
「むっ、なんだこの美味そうな匂いは?」
「これはハンバーグだ。ミスリル包丁とユグドラシルのまな板で野菜を切り、ミスリルフライパンで焼いたものだ。このハンバーグがミスリルボウルによって更に美味くなることを前提にこれを食べて見ろ」
「わかった。いただこう」
ブラドの巨躯からすれば、ハンバーグなんてほんの僅かな欠片に過ぎない。
しかし、ブラドはその欠片を馬鹿にすることなく器用に皿から食べた。
ハンバーグを飲み込んだ瞬間、ブラドの目が見開いた。
「美味い! もっと大きなサイズの物が食べたかったぞ! これがもっと美味くなるのか!?」
「その通り。ミスリルボウルを使えばまた一段上の味になるはずだ」
「私も食べたい!」
『僕も食べたい!』
そろそろ正午を回るため、腹を空かせた食いしん坊ズが目の前でハンバーグがブラドの口の中に消えて飯テロ状態だったようだ。
「帰ったらハンバーグにしてあげるから待ってなさい」
「やったねリル君!」
『うん! ハンバーグだ!』
「吾輩も吾輩に合ったサイズの物を食べてみたいぞ」
「巨大ハンバーグか。作れたら差し入れに来よう」
「楽しみにしてる」
その後、藍大達はブラドにダンジョンの運営を任せてボス部屋にあった魔法陣からダンジョンを脱出した。
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