第174話 奈美が司の彼女してるわ
リュカのテイムに成功した後、藍大達は探索を再開した。
パンドラをテイムした時と同様に、藍大はリュカを亜空間から出さずに探索を行うつもりだ。
折角レンタルありきでテイムしたのだから、万が一の事態でリュカを失うのは勿体ないと思ってのことである。
しばらく先に進むと、リルがピクッと反応して地面を掘り始めた。
「リル先生、ありましたか?」
『あった』
リルが掘り当てたのは丸底フラスコに入っていた見た目が青汁のような液体だった。
「主、これは何?」
サクラが手に取ったのを確認してすぐ、藍大はモンスター図鑑で丸底フラスコの中身を調べた。
藍大は調べた結果を見て驚きを隠せなかった。
「これがMPポーション!? 青汁の間違いだろ!?」
青汁にしか見えないそれはMPを回復させるポーションだと判明した。
しかし、厄介なのは味が苦いということである。
MPポーションにも等級が1級~5級が存在し、今回藍大達が発見したのは5級ポーションだった。
等級に応じてMPの回復量が異なるが、等級が上がるにつれて苦みが増すという事実は課題と言えよう。
「青汁ってどんな味~?」
「飲んだことないからわからん。だが、不味いって強調するCMがあったから美味しいとは思えねえな」
「そっかぁ・・・」
「甘いのが良いな」
『苦いのは嫌だよ』
「辛いのは平気でも苦いのは嫌なんだからねっ」
「甘いのが良いです」
藍大の答えを聞いて舞達はしょんぼりした。
それでも、MPポーションの発見は冒険者にとって歓迎すべき事柄であることは間違いない。
「薬師寺さんに渡して改良できるのを願うしかないな」
「メロちゃんの作った果物とかで味付けできないかな?」
「その発想はなかったです! マイ、良いこと言ったです!」
「でしょ~?」
苦い物より甘い物が良いという点で舞とメロの気持ちが通じ合った。
とりあえず、MPポーションを収納リュックにしまって藍大達はこのフロアの踏破を目指した。
オルトロスは全く出て来なくなってしまったが、時々インキュバスの襲撃はあった。
もっとも、女性陣がインキュバスを鬱陶しい蚊を潰すが如くあっさり仕留めるので大した時間はかからないのだが。
そして、
「ここでこいつが来るのも当然か」
藍大がそう言うのも無理もない。
フロアボスとして現れたのは蛇の尻尾を持つ全身が紫色の三つ首の犬、つまりはケルベロスだったからだ。
『今日の地下4階は僕に喧嘩売ってる気がする』
「よしよし。リルがモフモフ最強だから安心しろ」
「クゥ~ン♪」
藍大はムッとするリルを撫でて落ち着かせてからモンスター図鑑を開いた。
-----------------------------------------
名前:なし 種族:ケルベロス
性別:雄 Lv:50
-----------------------------------------
HP:1,000/1,000
MP:750/750
STR:750
VIT:650
DEX:500
AGI:600
INT:700
LUK:650
-----------------------------------------
称号:地下4階フロアボス
アビリティ:<
<
装備:なし
備考:激怒
-----------------------------------------
(炎と毒を使うのか)
藍大がそう思った瞬間、ケルベロスの中央の頭が<
「グルァァァァァン!」
それだけに留まらず、ケルベロスは<
「やらせねえよ!」
舞はカバーリングで藍大の正面に移動すると、光のドームを展開して藍大達を炎と毒から守った。
「私も加勢する」
流石の同時攻撃では光のドームの耐久力が心配になったので、サクラは<
毒がなくなってただの炎になれば、ゴルゴンが黙ってはいない。
「アタシの炎の方がすごいんだからねっ」
ゴルゴンが<
その炎で蛇を模るように調整すると、ゴルゴンは炎の蛇をケルベロスに差し向けた。
初手ぶっぱを防がれた挙句、自分の攻撃を利用されたことでケルベロスの判断が遅れてケルベロスは炎の蛇に丸のみにされた。
『主さん・・・戦う・・・』
「わかった」
ゲンが珍しくやる気を出したので、藍大はゲンに<
ゲンが現れた時には舞が光のドームを解除しており、ゲンの視界はクリアになっていた。
それゆえ、ゲンはすぐに<
消火と共に水責めも済ませてしまうあたり、やはりゲンは効率重視のようだ。
ケルベロスは<
『サクラがLv86になりました』
『リルがLv85になりました』
『ゲンがLv82になりました』
『ゴルゴンがLv79になりました』
『メロがLv73になりました』
システムメッセージが鳴り止むと、藍大は舞達を労った。
「お疲れ様。ケルベロスも食べられるらしいから、昼食はあれこれ試してみよう」
「やったね!」
『やったぁ!』
食いしん坊ズが大喜びだった。
あれこれ試すということは、藍大が作る品数を増やすことを意味する。
藍大の料理をたくさん味わいたい舞とリルにとって嬉しいニュースと言えよう。
そんな食いしん坊ズが率先して解体を行い、取り出された魔石はメロに与えられた。
魔石を飲み込んだ直後、メロの身長がほんの少し伸びた。
『メロのアビリティ:<
「<
「です?」
藍大もメロも首を傾げた。
<
モンスター図鑑で新アビリティを調べてみると、回復するHP量は<
「これにはこれで使い道がありそうだな。前向きに考えよう」
「はいです!」
「良い子だ」
メロの強化が終わると、藍大達はダンジョンを脱出した。
奈美に料理に使わない素材と5級MPポーションを渡しに行くと、都合が良いことに司と麗奈のペアが先に101号室の中にいた。
「あっ、藍大。今帰り?」
「ああ。戻って来たところだ。丁度良かった。前に頼まれてたレンタル従魔を見つけたぞ」
「本当!? どんな子!?」
「良かった。私達にも従魔が付くのね」
司は純粋に興味津々であり、麗奈は今後の探索が楽になりそうだとホッとした様子だった。
「こんな感じの奴だ。【
藍大に召喚されてリュカが101号室に現れた。
「モフモフ!?」
「亜人型になるのかしら?」
「ライカンスロープのリュカだ。Lv55の雌。元”掃除屋”で”希少種”だ」
「だ、駄目です!」
藍大がリュカについて簡単に説明すると、奈美が慌てて立ち上がって司の後ろから目を塞いだ。
「奈美?」
「リュカさん女の子なんですよ? それなのに裸じゃないですか!」
「奈美が司の彼女してるわ」
麗奈は司と奈美のやり取りを見て冷静に感想を口にした。
「すまん、モフモフだったから失念してた」
「リュカちゃんって雌だったね~」
「待って。雌犬がリルに媚を売ったってこと?」
「キャイン!?」
サクラが弟分にそんなはしたない子はやらないとばかりに言うと、リュカはそんなつもりではなかったと首をブンブンと横に振った。
従魔のヒエラルキーで頂点に君臨するサクラと敵対することは、リュカにとって自殺行為でしかない。
リュカの本能が上下関係を察して行動するまでコンマ数秒だった。
結局、
奈美は藍大からMPポーションを渡されて喜んだことも言うまでもない。
その後、102号室に戻ってから藍大は昼食作りを始めた。
オルトロスの肉もケルベロスの肉も臭みのある肉だったため、生姜やら大葉を使って臭みを消す料理が量産された。
量産して食いしん坊ズが満足したのは良いけれど、これは料理大会で使うには癖が強いということで使う食材の候補からは外れたのだった。
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