第131話 私の連れに手ェ出すな!
メロディークリスタルの性能実験は程々にして、途中だった戦利品の回収を済ませると溶岩からブクブクという音が聞こえ始めた。
「全員警戒! ”掃除屋”が来るぞ!」
藍大が声をかけると、舞達はすぐに藍大の正面と左右に移動して敵の出現に備えた。
その直後、ザッパーンと音を立てて溶岩の中から赤い体表で辮髪の幽霊が現れた。
その幽霊は上半身裸のガチムチマッチョであり、下半身はベタな幽霊のように足がなかった。
足がない代わりに魔法のランプらしき物体が足のあるべきところに存在し、ランプから幽霊が現れたようにも思える。
「ランプの魔人的な何かか?」
「筋肉ムキムキだね」
「幽体なのにムキムキって変だね」
姿を現した敵に対する第一印象はさておき、藍大はモンスター図鑑を開いて幽霊の正体を確かめた。
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名前:なし 種族:イフリート
性別:雄 Lv:45
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HP:500/500
MP:1,000/1,000
STR:0
VIT:800
DEX:600
AGI:400
INT:1,050
LUK:450
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称号:掃除屋
戦闘狂
アビリティ:<
<
装備:マグメタランプ
備考:なし
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(ムキムキの筋肉は見せ筋かよ・・・)
藍大がイフリートのステータスを暴いた時に抱いた感想は妥当である。
遠距離攻撃特化しており、物理攻撃には耐性があっておまけに回復だってやってのける。
どこにも肉体派の印象は感じられなかった。
「バーニング!」
「私の連れに手ェ出すな!」
イフリートが叫んで藍大を炎が包み込もうとすると、間一髪のタイミングで舞が光のドームを形成して炎を防いだ。
イフリートの<
「助かったよ舞。悪いけど、舞は今回守りに徹してくれ。サクラとリルに攻撃を任せる」
「任せろ!」
「は~い」
『うん!』
遠距離攻撃の手段が投擲しかない舞は、溶岩の上に漂っているイフリートと相性が良くない。
接近できれば光を付与して攻撃ができるのだが、溶岩の上にいられると舞は接近できないのだ。
それならば、舞は防御に専念してもらった方が良いだろうと藍大は判断した訳である。
その一方、空を飛べるサクラと空を走れるリルならば、イフリートが溶岩の上にいても十分に戦闘ができる。
藍大の指示は的確だと言えよう。
イフリートの<
「死んでくれる?」
『それっ!』
「フハハ」
イフリートが笑うと、サクラの深淵の槍とリルの<
威力ではサクラとリルの攻撃の方が上だが、物量ではイフリートの<
ちなみに、リルの<
もっとも、溶岩の大波に阻まれてしまっては<
「火の海と化せ!」
今度はイフリートが空から火の雨を降り注がせた。
「クソッ、面倒な奴だな!」
サクラ達はAGIの高さを活かして当たらなければどうということはないを体現していた。
「面白くなってきたぜぇ!」
イフリートは<
『僕の番!』
リルが<
(ハハッ、スケールのデカい戦いになってら)
自分の力だけでは逆立ちしても介入できないため、藍大は見ているだけになっていた。
指示を出そうにもイフリートにはまだ余力があり、”戦闘狂”の称号通り戦闘を楽しんでいるから追加の指示を出す形で水を差せば自分が狙われると判断したのだ。
「壊れろ!」
複数の溶岩の大波がオブジェにされてしまったので、イフリートは空から隕石を落とすことにした。
オブジェを破壊して見通しを良くしようという魂胆だろう。
「飲み込みなさい」
サクラは<
『主さん』
「どうしたゲン?」
『戦う』
「珍しくやる気じゃんか」
『ここ・・・暑い・・・』
「なるほど。許可する」
ダンジョン地下3階からさっさと脱出したいらしく、ゲンが参戦すると言うから藍大は許可を出した。
サクラとリルに大声で指示を出せば注意がこちらに向くかもしれないが、ゲンが<
ゲンは<
「バーニカペッ!?」
ゲンの攻撃は<
そのせいでイフリートはアビリティの発動に失敗するだけでなく、間抜けな言葉を口にして最期を迎えた。
「ヒュー」
ゲンが狙い撃ったぜと言わんばかりにドヤ顔を披露した直後、システムメッセージが藍大の耳に届いた。
『サクラがLv67になりました』
『リルがLv66になりました』
『ゲンがLv63になりました』
『ゴルゴンがLv59になりました』
ゲンが撫でてくれと目で訴えて来るので、藍大はそのリクエストに応じた。
「よしよし。良い仕事だったぞ」
「ヒュー♪」
ゲンを褒めていると、サクラとリルがイフリートの末端に付属していたランプを持ち帰って来た。
「主、持って帰って来たよ」
『筋肉消えちゃった』
「そうか。サクラもリルもありがとな。勿論、舞も助かったよ」
藍大はサクラとリル、舞の頭を順番に撫でて労った。
それはさておき、戦利品であるイフリートのマグメタランプはマグマの中にあっても融け出さない耐熱性に優れた金属でできており、その中にはイフリートの魔石が入っていた。
昨日はリルに魔石を与えたので今度はゲンの番である。
ゲンに魔石を与えると、ゲンの体が魔石を飲み込む前よりも潤った。
『ゲンのアビリティ:<
(何それ強そう)
システムメッセージが告げたゲンの新アビリティが強そうだったから、藍大はすぐにモンスター図鑑で調べた。
モンスター図鑑によれば、熟練度を上げるにつれてウォータージェットの軌道や威力を自由自在に操れるようになるアビリティとなっていた。
果たしてゲンが熟練度上げなんて面倒な作業をするかは怪しいが、ゲンのアビリティが強化されたことは間違いない。
「ゲン、良かったな。熟練度を上げれば上げるだけ攻撃を自在に操れるようになったってよ」
「ヒュー・・・」
ふーんと言わんばかりにゲンは
「ゲン君すご~い」
「私だってできるもん」
サクラはゲンに張り合って<
DEXはサクラの方が上なので、当然ゲンよりもサクラの方が器用である。
ゲンはそもそも張り合うつもりがなかったらしく、適当に<
『サクラ・・・機嫌・・・損ねるの・・・不味い・・・』
ゲンは賢かった。
サクラの機嫌を損ねないように上手く立ち回ったのである。
一番従魔のサクラから嫌われれば、今のぐうたらした生活が取り上げられてストイックに生きねばならないかもしれない。
咄嗟にそこまで考えてサクラには敵わないと降参したように振舞ったゲンは賢いと言えよう。
(見栄を張るよりもぐうたらしたいってのがいかにもゲンらしいか)
藍大はゲンの意見を尊重することにした。
サクラがゲンに頭を下げられて機嫌を直し、丸く収まったことは藍大にとっても悪いことではないからだ。
家に帰ったらゲンもしっかり労ってやろうと決めて、藍大は舞達と共に探索を再開した。
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