【Web版】大家さん、従魔士に覚醒したってよ(書籍タイトル:俺のアパートがダンジョンになったので、最強モンスターを従えて楽々攻略 大家さん、従魔士に覚醒したってよ)
第123話 ダンジョンよ、私は帰って来た!
第11章 大家さん、オークションを開く
第123話 ダンジョンよ、私は帰って来た!
結婚式の翌日の日曜日の朝、藍大はパンドラ以外の従魔と舞を連れてダンジョンの地下3階にやって来た。
ゲンとゴルゴンがそれぞれ<
地下2階が晴れた日の草原だとすれば、地下3階はサバンナである。
藍大達は日曜日のダンジョンだから曇天や雨天にはならないだろうと思っていたが、地下2階よりも日差しが強かった。
だが、そんなことよりも1週間ぶりにダンジョンに足を踏み入れた藍大にはやるべきことがあった。
「ダンジョンよ、私は帰って来た!」
「藍大、いきなりどうしたの?」
「ただの様式美だ!」
「そっか~」
舞にツッコミを求めてはいけない。
司や未亜がいればツッコんでくれただろうが、ないものねだりをしたところで意味はない。
「冗談はさておき、こうしてテンションを無理やり上げてる理由はちゃんとあるんだ」
「理由?」
「昨日も言ったが、子供を育てるには金が必要だ。今の食事水準をキープしつつ、いずれ授かるだろう子供を育てるためにはバリバリ稼がなきゃいけない。義務感で稼ぐのは長続きしないから楽しんで稼ごうという訳だ」
「・・・へんだよ」
「舞? なんだって?」
「大変だよ! こうしちゃいられないよ! 私、極貧生活には戻りたくない! 今日からいっぱい頑張る!」
「私も頑張る。いっぱい稼いでいっぱい子供作る」
『ご飯のために頑張る!』
「メロン!」
軽く発破をかけたつもりだったにもかかわらず、予想以上に全員気合が入ってしまった。
(やる気ないよりはやる気ある方が良いか)
ちょっと煽り過ぎたかもしれないと思ったものの藍大はその勢いを止めたりしなかった。
草原を進んでいくと、藍大達の視界にレッドブルが現れた。
「死んでくれる?」
(サクラは絶好調だな)
射程圏内に入った瞬間には<
1週間連続でダンジョンに潜らなかったが、少しもブランクを感じることはなかった。
いや、むしろ研ぎ澄まされていたのではないだろうか。
レッドブルの死体の回収をしていると、レッドブルの血の臭いに釣られて地下3階で初めて見るモンスターが藍大達のいる所に近づいて来た。
「薄紫色の馬?」
「馬肉ってどんな味かな~」
『じゅるり』
食いしん坊ズにとって日曜日は確実に肉が手に入る日だから、モンスターの見た目ではなく味に興味を示していた。
「ヒ~ヒ~ヒ~♪ ヒヒィィィィィン!」
「嘘だろ!? あの馬、嘶く前に発声練習したぞ!?」
「そんなの関係ねえ! あれは肉だぜオラァ!」
「あっ・・・・」
薄紫色の馬型モンスターは嘶く前に喉の調子を整えた。
嘶きにそんな拘りがあったのかと藍大が驚いていると、舞が光を付与した盾を全力で投げて命中させた。
『メロがLv48になりました』
システムメッセージが止んでからそれに近づき、藍大がモンスター図鑑で確かめると当たり前だが既にHPが尽きていた。
やる気に満ちた舞の恐ろしさを改めて思い知った瞬間である。
舞が倒したのは馬型モンスターはノーブルホースという名前であり、嘶く前の喉の調整は高貴な嘶きを披露するために必要不可欠だったらしい。
他所のダンジョンで出現する馬型モンスターと言えば、真っ先にバトルホースの名前が挙がる。
バトルホースは突撃と蹴り、跳躍からの踏み潰しが主な攻撃手段であり、ノーブルホースもそれ自体は変わらない。
しかし、決定的に違うのはノーブルホースのプライドが高いことだ。
ノーブルホースは自身の容姿と声に自信があり、嘶く前の喉の調整も自分が美声であることを敵に知らしめてやろうという考えに基づいてのことだった。
そして、ノーブルホースは自分と同族であっても見下しており、同族を倒した者を倒せば自分は同族の中で上に立てると思って率先して戦いに来る。
自分を今よりも少しでも上の地位にしたいという思いが種族的に強いせいで、近くにいる同族が倒されたことに過敏に反応する。
その結果、今倒したノーブルホースを倒した藍大達に向かって近くにいたノーブルホース達が一斉に突撃を開始した。
「サクラ、ノーブルホース達を転ばせろ! 舞とリル、メロは近くに寄って来た奴だけ倒せ!」
「は~い。地面にキスしなさい」
サクラがそう言うと、藍大達を中心に深淵の鎖が急速に円を描くように広がる。
「ヒヒィン!?」
「ヒッヒッヒ~! ヒヒィン!?」
「ブヘッ!」
(なんかブサイクな鳴き声の奴がいた。転んだ奴か)
転んだ同族をざまあ見ろと嘲笑っていた個体が自分も倒れ、それを見ていた個体は鎖に脚を絡めとられて高貴さの欠片もない声を上げながら地面にキスしていた。
「馬肉寄越せゴラァ!」
『お肉!』
「メ、メロン」
舞は光を付与したメイスで転んだノーブルホースの頭を次々と潰して回る。
リルは<
そんな食いしん坊ズの食欲を目の当たりにして、メロはそんなに肉が食べたかったのかと顔を引き攣らせながら<
『ゴルゴンがLv54になりました』
『メロがLv49になりました』
『メロがLv50になりました』
『メロのアビリティ:<
『メロが進化条件を満たしました』
(良かった。メロも進化できるようになったのか)
従魔の中でまだ一度も進化していなかったメロは、自分が進化できていないことを気にしている様子が見受けられた。
自分が戦闘メインではないとはいえ、置いてきぼりにされるのは悲しいと思うのは自然なことである。
メロはできるだけその気持ちを上手く取り繕っていたが、藍大の目は誤魔化せていなかった。
だからこそ、メロが進化できると知って藍大は喜んだ。
大量に転がっているノーブルホースの死体の回収作業が終わると、いつもよりも少しだけソワソワしているメロに藍大は声をかけた。
「メロ、進化するか?」
「メロン!」
「わかった」
藍大の問いかけにメロが力強く頷いた。
メロの意思を確認できたので、藍大はモンスター図鑑のメロのページを開いて備考欄にある進化可能の文字に触れた。
その瞬間、メロの体が光に包まれた。
光の中でメロのシルエットに変化が生じた。
メロンから羊の顔が飛び出しているシルエットだったものが、小学1年生ぐらいの子供のシルエットへと変わった。
光が収まると、メロンパンをモチーフにしたベレー帽を斜めに被ったボブヘアの幼女の姿があった。
幼女のボブヘアは新緑を彷彿とさせる色であり、肌の色は小麦色だった。
だが、藍大が気になったのは進化したメロが着ていた服だった。
(なんでオーバーオール!? 農家だからか!)
藍大は頭に浮かんだ疑問の答えに自力で到達した。
『メロがバロメッツからドリアードに進化しました』
『メロのアビリティ:<
『メロがアビリティ:<
『メロのデータが更新されました』
システムメッセージが止むと、藍大はメロと目線を合わせるためにしゃがんだ。
メロは藍大に笑いかけた。
「マスター!」
「メロが喋った!?」
「マスター! メロ、喋るです!」
「よしよし。メロは偉いな」
「フフン♪」
ニパッと笑うメロが可愛いから、藍大はその頭を優しく撫でた。
「可愛い~!」
「舞!? 下ろすです!」
舞の力で振り回されれば恐怖を感じるのは当然で、メロは下ろしてほしいと舞に訴えた。
メロの可愛さに若干暴走している感じもするが、メロがダメージを負うような真似はしないとわかっていたので藍大はメロのステータスを確認し始めた。
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名前:メロ 種族:ドリアード
性別:雌 Lv:50
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HP:850/850
MP:850/850
STR:720
VIT:720
DEX:820
AGI:720
INT:950
LUK:750
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称号:藍大の従魔
ダンジョンの天敵
アビリティ:<
<
<
装備:なし
備考:恐怖
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(ヤバい、メロが本気で怖がってるから止めよう)
ドリアードに進化して強くなったことはわかっていたが、備考欄にある恐怖の文字で舞に振り回されていることを本当に怖がっていると理解して藍大は舞を急いで止めた。
「舞、ストップ! メロが怖がってるから!」
「えっ!? あぁ~、ごめ~ん!」
舞が回るのを止めると、メロが藍大に跳びついてブルブルと震えていた。
「マスター、高いとこ、グルグル、怖いです」
「よく頑張ったな。もう大丈夫だぞ」
初めて舞に振り回されたメロは、高さとグルグル振り回されたことが怖かったようだ。
メロが気持ちを落ち着かせるまでに10分程かかったのは仕方のないことだろう。
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