【Web版】大家さん、従魔士に覚醒したってよ(書籍タイトル:俺のアパートがダンジョンになったので、最強モンスターを従えて楽々攻略 大家さん、従魔士に覚醒したってよ)
第106話 信じられるか? 愛らしいリルがこんなに強くなったんだぜ?
第106話 信じられるか? 愛らしいリルがこんなに強くなったんだぜ?
魔石を除いて収納袋にしまい込むと、藍大は行儀よく座って待機しているリルの方を向いた。
「リル、進化する?」
『うん! 進化する!』
「よろしい」
藍大の問いかけにリルが首を縦に振った。
リルの意思を確認できたので、藍大はモンスター図鑑のリルのページを開いて備考欄にある進化可能の文字に触れた。
その瞬間、リルの体が光に包まれた。
光の中でリルのシルエットに変化が生じた。
<
シルエットは大きさ以外は変わらないようであり、リルの体を包む光がそのまま収まった。
しかし、進化する前とリルの毛の色が変わっていた。
進化前は青白い毛並みだったのだが、今は美しい白銀の毛並みである。
額にあった白い三日月マークはそのまま残っており、目は蒼く輝いていた。
本来の姿のリルはとても凛々しく、いままでの可愛らしいさが嘘のようだった。
『リルがハティからフェンリルに進化しました』
『リルのアビリティ:<
『リルのデータが更新されました』
システムメッセージが終わると、藍大はリルを見上げた。
「リルも立派になったなぁ」
『ご主人のおかげだよ!』
リルの体は立派になったけれど、中身は可愛らしいままだった。
今もリルは藍大に頬擦りして甘えている。
「そう言ってもらえると嬉しいよ。チタンリザードマンの魔石も食べてくれ」
『うん!』
藍大がリルに魔石を与えると、リルは喜んでそれを飲み込んだ。
『リルのアビリティ:<
(竜巻が嵐になって雷が加わったか。リルが本気出したら自然災害待ったなしなんだが)
リルの成長は嬉しいが、強大な力はしっかりと管理せねば他人に迷惑をかけてしまうと藍大は気を引き締めた。
そんな藍大の気持ちとは裏腹にリルは尻尾を振って喜んでいる。
『ご主人、強くなったよ!』
「そうだな。愛い奴め」
「クゥ~ン♪」
リルが撫でられるとワンコみたいになるのは進化してもしなくても変わらないようだ。
藍大はリルを満足させた後、更新されたリルのステータスを確かめるべくモンスター図鑑を開いた。
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名前:リル 種族:フェンリル
性別:雄 Lv:60
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HP:1,100/1,100
MP:1,140/1,140
STR:1,140
VIT:1,000
DEX:1,020 (+255)
AGI:1,160 (+290)
INT:1,100
LUK:1,000
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称号:藍大の従魔
ダンジョンの天敵
暗殺者
二つ名:テイマーさんの忠狼
アビリティ:<
<
装備:なし
備考:ご機嫌
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(信じられるか? 愛らしいリルがこんなに強くなったんだぜ?)
自分に甘えるリルの姿とは対照的に、リルの能力値もアビリティも並大抵のモンスターでは敵わない。
まだ足を踏み入れていないが、シャングリラダンジョンの地下3階でも余裕をもって探索をできそうな強さである。
リルは藍大が自分のステータスを調べている内に<
雄々しい姿も良いものだが、大型犬サイズの方が藍大に可愛がってもらえるし家の中にも入れるから小さくなったのだ。
リルの進化が終わると、ゲンが<
「ヒュー」
「ゲンも魔石か。はい、ガチャゴーレムの魔石だ」
ゲンが藍大の手から魔石を与えられると、ゲンの背負ってる甲羅の輝きが増した。
『ゲンのアビリティ:<
(ゲンも着々と成長してるな)
システムメッセージが収まったら、藍大は自分も撫でろと言わんばかりの目を向けるゲンの頭を撫でた。
「ヒュー♪」
ゲンは藍大に撫でてもらうのを堪能したら、再び<
既にフロアボスのガチャゴーレムを倒しているので、ゲンの<
だが、ゲンは少しでも自分で歩きたくないから<
人間もモンスターも一旦楽を知ると抜け出せなくなるのは同じらしい。
『アタシは違うんだからねっ』
「何がだゴルゴン?」
『アタシは楽だからこうしてるんじゃないんだからねっ!』
「わかってるって。俺が武器を何も持ち込めない時の護身用にゴルゴンにヘアピンになってもらってるんだ」
『わ、わかってたら良いのよ』
ゲンと同じく自分も怠惰だと思われたくなかったゴルゴンは、藍大が自分のことを理解してくれていたから安心した。
とりあえず、この場でやるべきことを終えた藍大達はダンジョンを脱出した。
藍大達がダンジョンを出ると、それに気づいた麗奈と司が駆け寄って来た。
「藍大、大変! 大変なのよ!」
「麗奈、落ち着いて。まずは藍大に説明しなきゃ駄目だよ」
麗奈が冷静ではなかったので、司が後ろから取り押さえて落ち着くように声をかけた。
藍大は緊急事態が起きたのだろうと判断して冷静な司に訊ねた。
「穏やかじゃないな。司、何があったんだ?」
「他所のダンジョンでスタンピードが発生したんだ。しかも、1ヶ所じゃなくて5ヶ所も」
「掲示板の住人がフラグを立てたせいか」
「藍大? 掲示板ってどのスレのこと?」
「全国ダンジョンスレ@53だ。ついでに言えば、690が余計な死亡フラグを立てやがった」
「・・・ホントだわ。フラグ回収速いわね」
司に取り押さえられて冷静になった麗奈は、自分のスマホで掲示板の該当スレッドを確認して頷いた。
司もワンテンポ遅れて確認して苦笑いした。
「冗談はさておき、今のところどこがスタンピードを起こしてるんだ?」
「北から函館の五稜郭ダンジョン、草津の温泉ダンジョン、浦安のリゾートダンジョン、神戸の南京町ダンジョン、鹿児島の桜島ダンジョンだよ」
「観光地ばかりだな」
「そうだね。観光地って大きなクランが本拠地にしてない限り、適当に探索してホテル暮らしできる日銭稼ぎの冒険者しかいないから、現地にいる冒険者だけじゃどうにもならないよ」
三原色のクランを筆頭に人数の多いクランに所属している冒険者ならば、大人数でも連携して対応できるだろう。
ところが、そこまでいかない中小規模のクランであればそうはいかない。
せいぜいがパーティーメンバーぐらいで全員になるから、モンスターに数の差で押し負けてしまう。
その一方、シャングリラは何も問題ない。
”楽園の守り人”は少人数のクランだが、サクラ達従魔が一騎当千の実力を持つので問題ない。
むしろ、三原色のクラン以上の戦力でシャングリラに用事がない日は毎日ダンジョンに挑んでいる。
ここ最近は地下2階を藍大組、地下1階を未亜組が探索するからモンスターが溢れることなんてあり得ない。
「他所は大変だな」
「他人事にしてるけど救援には行かないの?」
「勝手に首を突っ込むと茂に迷惑をかけかねない。だから、今日の報告で電話しがてら救援が必要か否か判断する」
「そっか。それなら藍大に前もって言っとくよ。僕と麗奈はDMUの出向扱いだから、状況によっては
「了解。んじゃ、ちょっと茂にかけてみる」
司との話を終えてすぐに藍大は茂へと電話をかけた。
藍大からの電話だとわかると茂は即座に応答した。
『もしもし、藍大か!?』
「おう、藍大さんだぞ。切羽詰まった声でどうした?」
『スタンピードの話は知ってるか?』
「知ってる。麗奈と司から聞いた」
『実は”楽園の守り人”にも救援に行ってもらいたい』
「どこに?」
『草津だ。浦安は”レッドスター”が既に救援に向かってる。だが、草津にはこの状況下で頼れるクランが存在しねえ』
”ブルースカイ”は大阪に拠点があり、”グリーンバレー”は福岡に拠点がある。
きっとその2つのクランはそれぞれ神戸と鹿児島に向かっている。
そうなると、残すところは函館と草津だ。
「函館にはDMUが向かってるのか?」
『その通りだ。時間的に函館のスタンピードの方が早かったから、DMUの冒険者は函館に出動しちまってるんだ。今関東にいるのは轟と広瀬だけだ』
「それで2人を連れて草津に行けってことか。行くのは止むなしとして、移動手段はどうする? リルに乗れるのはせいぜい2人だぞ?」
『そこは任せてくれ。ヘリをシャングリラの最寄りの小学校の校庭に向かわせた。それで草津に向かってくれ』
「Yes! 高○クリニック!」
『お前なぁ・・・』
「すまん。ヘリって言われたらそう応じなきゃならん気がして」
『そりゃわからなくもないが、とにかく頼んだぞ。それと、シャングリラにも火事場泥棒が来ないように健太と天門さんを残しておけ』
『了解』
電話を切ると、藍大達は未亜と健太に留守番を頼んで最寄りの小学校の校庭へと向かった。
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