【Web版】大家さん、従魔士に覚醒したってよ(書籍タイトル:俺のアパートがダンジョンになったので、最強モンスターを従えて楽々攻略 大家さん、従魔士に覚醒したってよ)
第95話 舞を絶対怒らせないようにしよう
第95話 舞を絶対怒らせないようにしよう
翌日の木曜日の朝、藍大達は今日も今日とてダンジョンに来ていた。
今日は夕方から特別講義だが、朝一でシャングリラに届いた舞の新しい装備が理由で舞がダンジョンに行くのに乗り気だったのだ。
鎧は変わらないが、舞はメイスと盾を新しく届いた物に取り換えている。
メイスと盾の名前はそれぞれ、B2メイスとB2シールドと名付けられていた。
ダンジョン地下2階の素材でできた装備だから、B2シリーズというネーミングである。
B2メイスは藍大の狙い通り火属性のメイスとなった。
ミノタウロスの斧とマグマイマイの殻を溶かして混ぜたベースに、ブラッディメタルを加工した十字架のような打撃部という見た目で全体は赤銅色で統一されている。
素材の原形がほとんど残ってないB2メイスとは対照的に、B2シールドは元々の素材の特徴を引き継いだ盾になった。
赤い線の入った黒い甲羅はアリゲリオンの甲羅そのもので、舞が持ち運べるサイズの盾に加工しただけだ。
衝撃吸収用に盾の裏側にミストキャットの肉球も使われており、こちらは特に属性は付与されていない。
とりあえず、藍大達は昨日の探索からメロが抜けたメンバーで地下2階に来てB2シリーズを試したいと思っているのだが、藍大達にとって予想外の光景が目の前に広がっていた。
「畑だな。しかもだだっ広い」
「畑だね~」
木曜日のフィールドということで森になると想定していたが、実際は広大な畑だった。
森ならば遮蔽物が多くて面倒だ。
その点で比較すると、畑には遮蔽物がないから視界を確保できる。
予想が外れてたとしても、自分達にとってそれがマイナスに働かないのならば問題ない。
現に藍大達の視界には、遠くの方でボムポテト達が畑の上を歩いている姿が映っている。
いや、正確には別の物も見えている。
「敵がボムポテトだけのはずないよな。まさか、畑から生えてる長葱もモンスターなのか?」
「長葱がちょんまげみたいになってて、本体が埋まってるのかも」
「調べてみればわかるか」
「そうだね」
遠目には畑から生えているようにしか見えない長葱だが、気づかぬ間に射程圏に入っていて攻撃されましたでは笑えない。
それゆえ、藍大は長葱をモンスター図鑑で調べてみた。
(ソードリーキ・・・だと・・・)
なんということだろうか。
長葱は本当にモンスターだった。
ソードリーキとは剣のような形状の長葱だ。
それ自体が地面から飛び出して敵対者を刺したり、かかれば目から涙が出るような液体を飛ばすというような攻撃手段を持っていた。
「長葱はソードリーキってモンスターだ。飛び出して突き刺そうとしたり、変な汁出して涙を出させたりするんだってさ」
「そっか。モンスターなんだね。藍大、性能試験しちゃっても良いかな?」
「良いとも!」
「ヒャッハァァァァァッ! 収穫の時間だゴラァ!」
舞が戦闘モードに切り替わって駆け出した。
舞の接近を感知すると、ソードリーキが動き出す範囲に入ったらしい。
畑から舞に向かってソードリーキが飛び出した。
(剣みたいな長葱なんてネタでしょ)
藍大の目に映ったソードリーキの姿は、モンスター図鑑に記されていたように片手剣のような形の長葱だった。
舞は自分に向かって来るソードリーキをメイスで打ち返した。
打ち返した先にボムポテトがおり、衝突によってボムポテトのHPが一定の値を下回ったために<
ちなみに、舞が打ち返したことでソードリーキが燃えていた。
それが影響してボムポテトの<
一撃でソードリーキとボムポテトを倒した舞に、逆方向からソードリーキが突進する。
「
舞は盾でソードリーキを叩き落とし、その衝撃でHPが尽きたソードリーキは動かなくなった。
試運転はひとまずこの辺に留めておかなければ、折角の
自分達が食べる分と八百屋に売り出す分を確保するべく、藍大は舞に声をかけた。
「舞、戻ってくれ! 後は”掃除屋”が来るまで俺の護衛を頼む!」
「任せな!」
戦闘モードは決して自身でも制御ができなくなるなんて代物ではない。
指示を聞いた舞はすぐに藍大の隣に戻って来た。
その時には元のおっとりした雰囲気の舞になっていた。
「ただいま~」
「おかえり。新しいメイスと盾はどうだった?」
「SSシリーズも良かったけど、こっちの方がしっくりくるかな。DMUの職人班は相変わらず良い仕事してるよ~」
「そりゃ良かった。ソードリーキ程度じゃオーラを使うまでもなかったし、オーラの実験は”掃除屋”の時にやってくれ」
「は~い」
舞が護衛を引き受けると、藍大はサクラとリルに指示を出した。
「後はサクラとリルに任せるよ」
「うん!」
『行って来るね!』
舞が藍大の傍にいれば、自分達が少しの間だけ藍大から離れても問題ない。
もしも舞が防ぎ切れなくても、ゲンが<
それが理由でサクラとリルは残りの敵を掃討しに行った。
戦闘は3分かからずに終わり、サクラとリルがやり切った表情で戻って来た。
「偉いぞ。良い仕事ぶりだったな」
「エヘヘ♪」
『クゥ~ン♪』
サクラもリルも回収のことを考えているから、売り物にならないような不要な傷は倒した敵に付いていなかった。
もっとも、売り物にならなくたって藍大が自分達で食べられるように使える部分で料理するのだが。
周辺に散らばるソードリーキとボムポテトの死体を回収していると、いきなり地面が揺れ始めた。
「地震か?」
「ダンジョン内って地震は起きないはずだよ?」
2人がそんなことを話していると、藍大達の前方に2mを超える案山子が出現した。
それも貧相な案山子ではなく、顔には激怒したことを表す顔文字が浮かび上がっていて両手で大鎌を握っている。
藍大はそれが”掃除屋”に違いないと判断し、すぐにモンスター図鑑を開いた。
-----------------------------------------
名前:なし 種族:ファームアヴェンジャー
性別:なし Lv:35
-----------------------------------------
HP:350/350
MP:410/410
STR:500
VIT:400
DEX:430
AGI:320
INT:150
LUK:200
-----------------------------------------
称号:掃除屋
アビリティ:<
<
<
装備:怒りの大鎌
備考:激怒
-----------------------------------------
(畑荒らし許すまじってことか?)
藍大がそんなことを考えていると、ファームアヴェンジャーがいくつもの斬撃を藍大達に放った。
「猪口才!」
オーラを全身に覆うと、舞はメイスの一振りだけで全ての斬撃を消し飛ばした。
舞の一撃には炎が付与されており、ファームアヴェンジャーの<
(舞を絶対怒らせないようにしよう)
藍大は自分が貧弱だと重々承知しているので、舞を怒らせないように気をつけようと心に決めた。
その一方、自分の攻撃が当たらないと自棄になったファームアヴェンジャーは藍大達に向かって大鎌を投げつけた。
「サクラは大鎌を回収しろ! その後リルがファームアヴェンジャーに向かって<
「は~い! その大鎌貰うわ!」
サクラは<
それを確認すると、リルがファームアヴェンジャーを攻撃した。
『うん! 切り刻め!』
リルがそう言うと、ファームアヴェンジャーを中心に鋭い風によって形成された竜巻が現れる。
竜巻の中に閉じ込めれたファームアヴェンジャーは、体に次々に深い切り傷が刻まれながら空へと飛ばされていった。
竜巻が消えてから少し遅れてファームアヴェンジャーが空から墜落した。
しかし、ファームアヴェンジャーはまだHPを残していた。
どうやら落下の瞬間に<
「サクラ、とどめだ」
「うん。死んでちょうだい」
冷たい声色で<
『サクラがLv57になりました』
『リルがLv56になりました』
『ゲンがLv53になりました』
システムメッセージが耳に届いたことで、藍大は戦闘が終わったことを確信した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます