【Web版】大家さん、従魔士に覚醒したってよ(書籍タイトル:俺のアパートがダンジョンになったので、最強モンスターを従えて楽々攻略 大家さん、従魔士に覚醒したってよ)
第67話 俺の決闘者入りも秒読みまったなしか
第67話 俺の決闘者入りも秒読みまったなしか
電話が繋がってすぐに茂はムッとした声だった。
『よう、藍大。何か俺に言うことがあるんじゃないか?』
「う~ん、従魔同士を融合できるようになって融合モンスターを従えたことか?」
『違・・・、いや待て! 今なんつった!?』
「従魔同士を融合して融合モンスターを従えた」
『・・・俺の用件と全然違ったがそっちから聞かせてくれ。どうしてそうなった?』
自分が話そうと思っていたことではなかったが、無視できない爆弾みたいな情報をぶち込まれれば茂だって心穏やかではない。
まずは爆弾から処理せねばなるまいと判断し、藍大に詳細の説明を求めた。
「昨日のダンジョン探索で隠し部屋を見つけたんだが、そこで覚醒の丸薬っつー
『流石藍大! 俺にはできないことを平然とやってのける!』
「そこに痺れる憧れるってか? 落ち着けよ茂」
『・・・すまん。だが、これぐらい叫ばせろよ。叫ばなきゃやってられねえ』
また隠し部屋を見つけたこと、覚醒の丸薬なんて初耳のアイテムを手に入れたこと、藍大が二次覚醒して従魔を融合させられるとわかったこと等どこからメスを入れればよいのかわからない。
だから茂はボケに走った。
叫ばなければやってられないというのも仕方のないことである。
「そんなこと俺に言われてもな。後でトライデントレッドのゴルゴンのデータを送るわ」
『何その強そうな種族名? どんな奴なんだ?』
「頭が3つある赤い蛇。火に関するアビリティを3つの頭で同時に使える。パイロスネーク3体を融合したらそうなった。家を燃やされないように今はおとなしくさせてる」
『青い目のアルティメットドラゴンかよ』
「俺の
『
自分の用件は藍大に喋らせるだけ喋らせてからの方が良いと考え、茂は藍大の報告を優先した。
「正解。フロアボスはパイロコブラで、”掃除屋”はトーチホークって奴だった。これも後でモンスター図鑑のデータを送る」
『よろしく頼む。他に今日のダンジョン探索について報告すべきことはあるか?』
「そうだなぁ・・・。トーチホークが鷹の骨の骨格に青い火を纏ったモンスターだったんだが、その爪を粉末状にすれば香辛料になるってことぐらいか?」
『鷹の爪ってダジャレかよ』
「ダンジョンもダジャレで腹筋を攻撃するとか新しい発想してるよな」
『それは絶対違うだろ』
モンスターの死体を冒険者が素材や食材として有効利用するのは、冒険者が命を懸けてダンジョンに潜っているのだからその戦利品とするためだ。
ダンジョンに意思があるかはさておき、素材や食材の名前で冒険者の腹筋を笑わせて立てなくさせるなんて攻撃手段を取るとは考えにくい。
茂の否定は常識的に考えればもっともだと言えよう。
「そっか。だったら今日のダンジョン探索に関する報告は以上だ」
『よし。終わったな? じゃあ俺からだ。・・・藍大、お前なんて美味そうな物作ってんだよ!』
「ん?」
『しらばっくれるんじゃねーよ。ついさっき今週の週刊ダンジョンの『Let's eat モンスター!』を読んだぞ。俺もダブルチーズin照り焼きバーガー食いてえ。遥の奴が今日の週刊ダンジョンに藍大の記事が載るっつーから読んだんだが、ありゃ飯テロこの上ねえ』
今は昼時である。
空腹になるのも当然なタイミングでダブルチーズin照り焼きバーガーなんて料理を見れば、食べたいと思う者は少なくないだろう。
20代前半ならばほぼ間違いなく食べてみたいと思うはずだ。
「そういえば鈴木さんって茂の従姉だったんだな。なんで最初に言わなかったんだよ」
『藍大に家族のコネで取材させたって思われるのが嫌だったんだよ』
「律儀な奴め。鈴木さん良い人だったな。取材は滞りなく終わったぜ。次からは直接連絡して良いって連絡先渡しといた」
『そりゃ良かった。あいつは目が怖いからなぁ。取材相手が詰められてる気分になるだろうに』
「大丈夫だ。俺の場合、茂のおかげで耐性あった」
『どういう意味だコラ』
茂も遥と一緒で目が怖いと思われることが多いため、藍大の言い分に自覚している。
それでも、ここで素直に認めるとなんだかムカつくのでとりあえず抗議はしておいた。
「知りたいか?」
『・・・いや、やめとく。そんなことよりバーガーをくれ』
「あれ作るの大変なんだよ。ミンサー使って挽肉を用意するのは大変だ。茂がやるか?」
『そこは立石さんにも協力してもらってくれ。俺はバーガーを食うだけの簡単な仕事に従事したい』
「前向きに検討することを努力する」
『本部長と似たような逃げ口上使うんじゃねえ』
「また今度な。一昨日はバーベキューで昨日の昼がハンバーグ、取材のあった夜がハンバーガーだから少し間を置きたい」
『今度だな。絶対だぞ。俺もダブルチーズin照り焼きバーガーが食いたいんだ』
「はいはい。もしかしたら、また別の料理作ってるかもしれないけどな」
『・・・それはそれで気になるんだよなぁ』
ダブルチーズin照り焼きバーガーは食べたいが、藍大が作る他のモンスター食材を使った料理にも興味があるから茂は悩んだ。
それはさておき、藍大は電話した本題に入った。
「ハンバーガーのことは置いといて、実は別件で茂に相談したいことがあるんだ」
『なんかやらかしたか?』
「相談=やらかしの認識止めい」
『んなこと言われても、またなんかやったんじゃねえかって思わざるを得ないだろ』
「今回は俺が主体じゃねえ。商店街からの依頼だ」
商店街と聞くと、茂は藍大が依頼された内容について予想できた。
『”楽園の守り人”のブランドを使わせてくれとでも言われたか?』
「それもある」
『モンスター食材を卸してほしいってところか?』
「Exactly」
『何故に英語?』
「気分だ」
藍大に気分と言われた茂はツッコまずにスルーが吉と判断した。
『卸してほしいのは食材であって、食べられない素材は違うんだな?』
「そうだ。あくまで商店街で売れるモンスター食材を卸してほしいってさ」
『条件はあるが別に構わねえぞ』
「売っちゃって良いの?」
茂にNOと言われることも覚悟していた藍大としては、条件付きでもYESと言われて拍子抜けした。
『反対されるとでも思ったのか?』
「まあな。今のところ、アイテムショップ出張所で食材以外は売ってた。でも、それはあくまで俺達がシャングリラで食べるからって話だったから黙認されると思ってた」
『藍大の認識は間違っちゃいない。食べられない素材をDMUに回してくれることを理由に、”楽園の守り人”をDMUが支援してるのは事実だ。だけど食材についてはそれそのものが資産になる訳じゃない。消費されるんだ。だから、ぼったくり価格で売らない限りモンスター食材は売っても構わない』
「ぼったくるつもりなんて毛頭ねえよ。商店街には世話になってるからな。条件ってのは売る価格のことだけか?」
『いや、それだけじゃないが藍大達にとっても悪い話じゃない』
「というと?」
茂が何を考えているのかわからなかったから藍大は続きを促した。
『三原色のクランだけでなく、他のクランにあって”楽園の守り人”にないものはなんだ?」
「スポンサー企業?」
『大体合ってる。DMUは組織の性質上、特定のクランを優遇することがあっても専属で支援することはない。それはわかるよな?』
「わかる」
『となると、”楽園の守り人”にはスポンサーがいない。けど、スポンサーってのもクランの方針に口出しされるから力を持たれ過ぎるのも困るんだ。そこで今回の一件を利用する』
そこまで言われれば、藍大も茂が何を言いたかったのか理解できた。
「つまり、ここで商店街を助けて活性化させて経済的に潤ったらスポンサーにしろってことだな? もっとも、スポンサーというよりは風除けみたいなものか」
『正解。食べられない素材はDMU、モンスター食材は自分達の消費と商店街へ卸すと対外的に公表できるようにしておけば、他所の企業からちょっかいを出されることはないはずだ』
「仮に商店街よりも高く買い取ると言ってこられても義理や人情を盾に断れるし、拠点の近所に味方となってくれる人がいるのは心強いもんな」
『そういうこった。今の話で良ければ商店街にクランのブランド名の使用許可とモンスター食材を卸しても良いぜ』
「わかった。それで行くわ」
話がまとまったら藍大は通話を終わらせた。
あれこれ進めていくにしても、まずは自分達の昼食からだ。
電話の途中から舞とリルを中心にご飯はまだかという視線が藍大に向けられていたため、昼食の用意は急務だった。
昼食を取った後、藍大はどんな食材をどの店にどれだけ売るか舞と相談しながら決めていった。
あまり売り過ぎると自分達の食べる分がなくなるため、舞が真剣に話に参加したのは言うまでもない。
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