【Web版】大家さん、従魔士に覚醒したってよ（書籍タイトル：俺のアパートがダンジョンになったので、最強モンスターを従えて楽々攻略 大家さん、従魔士に覚醒したってよ）

第57話 食べられる時に食べとかないとね

　バーベキューの片付けを済ませると、藍大はキャンプチェアにどっかりと座って休憩がてらスマホで冒険者用の掲示板を覗いてみることにした。

　（何これ？　モンスター食材スレ？　興味あるかも）

　先程までモンスター食材を使ってバーベキューをしていたし、普段もモンスター素材を用いて料理することから、藍大はモンスター食材スレが気になった。

　シャングリラで手に入れた素材以外だと、客船ダンジョンで倒した一部のモンスターしか知らないので他の冒険者がどんなモンスターを食べているのか知りたいのだ。

　早速、藍大はモンスター食材スレを読み始めた。

◆◆◆◆◆

【美食を求めて】モンスター食材スレ@43【三千里】

1.名無しの冒険者

　モンスター食材の食べ方について話し合うスレッドです

　誹謗中傷等、他者を意味なく害する者は、DMUに通報します

　耳寄りな食べ方や食材があればじゃんじゃん書き込みましょう

　次スレは950を踏んだ人が立てること

　ゲテモノを欲するチャレンジャーはこっち（リンク：ゲテモノ万歳スレ@17）

◇◇◇◇◇

516.名無しの冒険者

　ホップフロッグの食べ方はここで合ってる？

517.名無しの冒険者

　>516

　唐揚げとかの原形留めてない調理法はこっち

　姿揚げはゲテモノ万歳スレに行ってくれ

518.名無しの冒険者

　あれは見た目から食欲奪ったよな

　つ（写真）

519.名無しの冒険者

　>518

　トラウマやめい

　夢に出て来そうだ・・・

520.名無しの冒険者

　>519

　我を地獄の窯で揚げたのは貴様かぁぁぁっ（裏声）

521.名無しの冒険者

　>520

　裏声じゃあんまり怖そうじゃない

522.名無しの冒険者

　>519

　僕は悪い姿揚げじゃないよ☆

523.名無しの冒険者

　吹いたわw

　ホップフロッグって元々がこれだぞ？

　つ（写真）

524.名無しの冒険者

　悪い姿揚げってなんだし

　ホップフロッグの写真とかノーサンキューですわ

525.名無しの冒険者

　原形留めて鳴ければこっちなんだな？

　じゃあ俺の新作料理はこっちで合ってるはず

　ブームは過ぎたがタピオカミルクティーもどき

　つ（写真）

526.名無しの冒険者

　>525

　ま、まさか、そのプチプチしたのは・・・

527.名無しの冒険者

　>526

　Yes、ホップフロッグの卵

　パッと見タピオカっぽいから作ってみた

　味は・・・お察し下さい

528.名無しの冒険者

　>527

　先輩最低です

　これは問答無用でゲテモノ万歳スレ案件ですよ

529.名無しの冒険者

　>528

　ここはお前の来るところではないの

　森へお帰り

530.名無しの冒険者

　スレチでしたか

　失礼しました

531.名無しの冒険者

　腐海にあっさり帰ったな

　やっぱナ○シカは偉大だわ

532.名無しの冒険者

　>529

　流石は姫姉様

　母性が半端ない

533.名無しの冒険者

　他に新たなレシピを持ち込む若人はいないのか？

534.名無しの冒険者

　若人と言っていい年齢なのかわからんけど俺からも良いだろうか

　食材として使ったのはウォークマッシュだ

535.名無しの冒険者

　あの歩くキノコね

　だったら私は対抗してコバンブーを使うわ

536.名無しの冒険者

　>534,535

　こんなところで戦争を始める気か？

　誰にも止められなくなるぞ

537.名無しの冒険者

　>534,535

　専用スレがあったからこっちでやると良い

　つ（リンク：きのこたけのこスレ@101）

538.名無しの冒険者

　>537

　よろしい

　俺は逃げも隠れもしない

539.名無しの冒険者

　>537

　私だって負けないわ

　戦場で会いましょう

540.名無しの冒険者

　わぁい

541.名無しの冒険者

　わぁい

542.名無しの冒険者

　乗り込めぇぇぇっ！

543.名無しの冒険者

　嵐が過ぎ去ったな

　このスレで話すような料理を持ってくる者はいないのか？

544.名無しの冒険者

　呼んだかね？

545.名無しの冒険者

　>544

　だ、誰だお前は・・・

546.名無しの冒険者

　そうです、私がゲテモノおじさんです

　ゲテモノおじさんだか～らゲテモノおじさ～ん×3

　だっふんだ

547.名無しの冒険者

　姫姉様！

　姫姉様はどこですか！？

　ゲテモノおじさんも腐海に返して下さい！

548.名無しの冒険者

　森へお帰り

　ここはお前のようなゲテモノおじさんが来るところではないの

549.名無しの冒険者

　おうちかえる

550.名無しの冒険者

　姫姉様流石っす！

　マジパねえっす！

551.名無しの冒険者

　頼む！

　俺は美味いモンスター食材を知りたいだけなんだ！

　ネタに走らない真っ当な料理を作るシェフはいないのか！？

552.名無しの冒険者

　通りすがりの者です

　こんなものを作りました

　つ（写真）

553.名無しの冒険者

　バーベキュー・・・だと・・・

554.名無しの冒険者

　焼き串に刺してある肉はなんだ？

　美味そう・・・

555.名無しの冒険者

　エッグランナーの肉ですね

　焼き鳥のタレを塗って炭火焼きしました

556.名無しの冒険者

　エッグランナー！？

557.名無しの冒険者

　>555

　レアモンスターだぞ？

　どこで見つけたんだ

558.名無しの冒険者

　初めて見つけて食べた者はこう言った

　酒！　飲まずにはいられないッ！

559.名無しの冒険者

　ひゃあ、堪んねえ！

　俺も焼き鳥食って来る！

560.名無しの冒険者

　私も食べに行く！

561.名無しの冒険者

　エッグランナーはどこで出たんだ？

　俺も一狩り行きたい

◆◆◆◆◆

「ミスった。うっかりやっちまった」

　藍大はやらかしたことに気づいた。

　552と555に書き込んだのは藍大である。

　モンスター食材スレと言いつつ、自分が欲するような情報が載っていなかったことにムシャクシャして書き込んでしまったのだ。

　勿論後悔はしてない。

　ゲテモノ料理も気にならないでもなかったが、それでも今は一般的な見た目のモンスター料理を知りたかった。

　ウォークマッシュとコバンブーを使った料理は気になったけれど、これもまた脱線するのは目に見えている。

　それならば、自分がスレッドのあるべき姿に戻してやろうと思って藍大はエッグランナーの焼き串を投稿した。

　オーカスやソードボア、アローボアの焼肉を投稿しなかったのは、身バレを防ぐためである。

　エッグランナーならば、日本でも討伐事例があったことを茂から聞いていたので、投稿する写真をエッグランナーの焼き串に留めたのは正解だ。

　もしも今日手に入れたエッグランナー以外のモンスター食材のバーベキュー写真を載せて説明しようものなら、どこで手に入れたかと問い詰められたのは間違いない。

　そんな事態だけは未然に防いだだけまだ自制心が働いたのだと言えよう。

「どうしたの藍大？」

　スマホを見てやっちまったと言ったと言う藍大に気づき、舞が藍大に近寄った。

「いや、モンスター食材スレを見てて脱線しまくってたからさ、軌道修正しなきゃいけないと思ってうっかり投稿しちゃった。エッグランナーの焼き串」

「美味しかったよね、焼き串。あれならいくらでも食べられるよ」

「えっ、まだ食べられるの？」

「食べられる時に食べとかないとね」

　割と最近まで食費を切り詰めていた舞にとっては、食べられる時に食い溜めすることが癖になっていた。

　そんな舞に藍大は同情的な視線を向け、その肩に優しく手を置いた。

「大丈夫。俺が財布を握ってる限り、舞が飢えるなんてことは絶対にないから」

「惚れてまうやろ～！」

　藍大の言葉に舞がうるっと来た瞬間、それまでの会話をじっと見ていた未亜が乱入した。

「いきなりどうしたんだ？」

「ウチはただ舞の気持ちを代弁しただけやで。なあ？」

「えっ、藍大は私の嫁だよ？」

　ニシシと笑いながら未亜が話を振ると、舞はあっさりと言ってのけた。

「なん・・・やと・・・」

　舞が恥ずかしがってあたふたするところを期待した未亜は、予想外な反応をされて戦慄した。

「俺は男だから婿じゃね？」

「違う、そうやない！　クランマスターの嫁は司やろ！」

「僕は男だ！」

　藍大のすっとぼけた発言に未亜が抗議すると、聞き捨てならないと司も話に参加する。

「藍大は私の嫁にする。これは決定事項なの。異論は認めないよ！」

　それだけ言うと、舞がふらっと藍大に倒れ掛かった。

　舞の顔は赤みがかっていて、藍大に抱き留められるとスーッと寝息が聞こえた。

　（酒飲んでたし酔ってたんだよな。酔った上での発言はノーカンだ）

　酒の席の勢いに任せた発言には、発言者に行為責任能力がないというのが藍大の考え方だ。

　それゆえ、藍大は舞を横に寝かせるべく舞の部屋に向かおうとしたが、舞が103号室の鍵をどこにしまっているのかわからなかった。

　大量の肉を食べたこともあり、舞の体は藍大が支えるには重かった。

　どこに舞の部屋の鍵があるか探す余裕はなかったので、仕方なく藍大は自分の部屋に舞を運んで寝かせることにした。

「片付けは僕達でやっとくよ。舞のことをよろしく」

「寝込みを襲ったら責任取るんやで～」

「襲わねえよ！　司、すまんが頼む！」

　下衆な未亜の発言に反論し、司に後のことを任せた藍大は舞を支えて102号室へと入り、サクラ達もそれについて行った。