第42話 テイマーさん半端ないって!

 真奈に半ば連行されるような形で応接室に入った藍大達は、誠也が来ると事情の説明を求められた。


「逢魔さん、貴方という人には本当に驚かされますね」


「そうですかね?」


「そうなんです。現に、”レッドスター”が数ヶ月かけて探索しても全く見つけられなかった隠し部屋を探し当てたんですから。そのアクセサリーには効果が付いてるんでしょう?」


「・・・すみませんが、効果の有無については言えません」


「失礼しました。無条件で手札を明かせというのもおかしな話です。今の質問はなかったことにして下さい。私達は”楽園の守り人”と敵対したい訳ではありません」


 藍大が誠也の質問に答えない旨を伝えると、誠也はその意図を理解して謝った。


 隠し部屋の宝箱から手に入れた物は、たわしのようなハズレ以外冒険者が喉から手が出る程欲しい物である。


 詳細を明かしてしまえば、それを欲しがって良からぬことを企む者だって現れるだろう。


 同盟相手を危険に追いやるような火種を作る訳にはいかないので、誠也は藍大に自分の好奇心を詫びたのだ。


「それは存じております。今回は偶然”楽園の守り人”が隠し部屋を見つけました。ですが、次もそうとは限りません。それで良いでしょうか?」


「構いません。むしろ、5階のフロアボスの前で足踏みしてストレスが溜まってるクランメンバーへの良い暇つぶしになります。隠し部屋があったことだけは伝えても良いですよね?」


「ダンジョンを脱出した時点で何人かの冒険者に見られてますから、今更口止めはできないと思ってます」


「譲歩していただきありがとうございます」


 藍大と誠也が隠し部屋の件について落としどころを見つけると、誠也の隣でスマホを使って調べ物をしていた真奈がスマホを机の上に提示した。


「もう掲示板で噂が出回ってるみたいです」


「目聡い人はいるものですね。状況を確認してみましょうか」


 誠也のその言葉をきっかけに、藍大達は各々のスマホで真奈が見つけた掲示板のスレッドを確認し始めた。



◆◆◆◆◆


【お宝はどこだ】客船ダンジョンスレ@35【野郎共乗り込め】


1.名無しの冒険者

 横浜港の客船ダンジョンについて話し合うスレッドです

 誹謗中傷等、他者を意味なく害する者は、DMUに通報します

 耳寄りな情報があればじゃんじゃん書き込みましょう

 次スレは950を踏んだ人が立てること


◇◇◇◇◇


213.名無しの冒険者

 ”楽園の守り人”が客船ダンジョンで隠し部屋見つけたって?


214.名無しの冒険者

 >213

 それな

 ”レッドスター”がこれまでがっつり探索しても見つからなかったのにヤバくね?


215.名無しの冒険者

 テイマーさん半端ないって!

 あいつ半端ないって!

 隠し部屋見つけるどころかアクセサリーゲットするもん!

 そんなんできひんやん普通・・・

 そんなんできる!?

 言っといてや!

 できるんやったら・・・


216.名無しの冒険者

 >215

 長文乙

 だが気持ちはわかる

 俺、サインしてもらいたかったもん


217.名無しの冒険者

 >215,216

 何してんのアンタらw


218.名無しの冒険者

 アクセサリーしたサクラたん、マジゴージャス


219.名無しの冒険者

 >218

 さては”楽園の守り人”がダンジョンから出て来た時に出くわしたな?


220.名無しの冒険者

 アクセサリーってどんな効果だったんだろ?


221.名無しの冒険者

 >220

 普通アドバンテージをバラすような真似しないっしょ?


222.名無しの冒険者

 いや、記者会見でお義父さんじゃない発言ができるテイマーさんならきっと教えてくれるはず!

 多分・・・


223.名無しの冒険者

 >222

 最後に弱気になってるんだよなぁ


224.名無しの冒険者

 そもそもアイテムの鑑定なんてDMUぐらいしかできないんじゃね?


225.名無しの冒険者

 >224

 言えてる

 いや、待てよ・・・

 だったらなんでサクラたんにネックレスを着けたんだ?

 効果がわかってないアイテムを装備させるなんて博打じゃないか


226.名無しの冒険者

 >225

 シリアスぶってるけどたん付けなのを俺は見逃さない


227.名無しの冒険者

 成長したサクラなんてただの年増

 ロリショージョカムバァァァック!


228.名無しの冒険者

 >227

 どこから湧いて出たのよこのド変態!


229.名無しの冒険者

 228が黒いボンテージ姿で鞭を持ってる姿を想像してしまったので海に飛び込んで頭冷やすわ 


230.名無しの冒険者

 俺も


231.名無しの冒険者

 変態が次々と湧いてきちまった

 1匹現れるとうじゃうじゃいるのはGと一緒か


232.名無しの冒険者

 Gと一緒にされた変態を憐れむべきか

 変態と一緒にされたGを憐れむべきか


233.名無しの冒険者

 >232

 男なんてみんな変態なのさ

 変態を変態が見下ろすなんてエゴだよ、それは


234.名無しの冒険者

 おーい、脱線してるぞコラ

 話を戻すとテイマーさんはなんでサクラに効果のわからないネックレスを着けたんだ?


235.名無しの冒険者

 >234

 一般論と私理論があるけどどっちから聞きたいかしら?


236.名無しの冒険者

 >235

 私理論キタ━o(゚∀゚o)(o゚∀゚o)(o゚∀゚)o━!!


237.名無しの冒険者

 >235

 236は無視して教えて


238.名無しの冒険者

 一般論:テイマーさんは従魔が装備したアクセサリーなら効果を調べられる

 私理論:ネックレスを着けてほしくてテイマーさんがサクラにあげた


239.名無しの冒険者

 >238

 そこは一般論と私理論が逆じゃないか?


240.名無しの冒険者

 ・・・あ


241.名無しの冒険者

 >239

 触れてやるなよ


242.名無しの冒険者

 >239

 逆だと思ってもそこはスルーしてあげるところ


243.名無しの冒険者

 >239

 みんなそう思ってるんだからわざわざ言うなよ


244.名無しの冒険者

 話を戻すぜ

 テイマーさんがサクラにネックレスをあげたってことはそれがベストってことだろ?

 そこから導き出される答えはなんだ?


245.名無しの冒険者

 >244

 アビリティの威力が上昇する


246.名無しの冒険者

 >244

 VITの能力値が上がる


247.名無しの冒険者

 >244

 エロさが増す


248.名無しの冒険者

 >247

 そ れ だ


249.名無しの冒険者

 >248

 いいえ、ケフィアです


250.名無しの冒険者

 この際サクラのネックレスの効果なんてどうでも良いだろ

 いくらここで話したって手に入らねえんだし

 それよか問題はテイマーさんが見つけ出した以外に隠し部屋があるのかって話だ


251.名無しの冒険者

 他所のダンジョンで隠し部屋が複数あったって話も・・・

 つ(リンク:隠し部屋スレ@7)

 つ(写真)


252.名無しの冒険者

 俺、客船ダンジョンに行って来る!


253.名無しの冒険者

 私も行ってくりゅ!


254.名無しの冒険者

 >253

 タイプミスに触れた方が良いのだろうか?


255.名無しの冒険者

 >254

 そっとしといてやれ

 つーか俺も客船ダンジョン行くぜ!


256.名無しの冒険者

 ヒャッハァァァァァッ!

 宝探しだぁぁぁっ!


257.名無しの冒険者

 海賊王に俺はなる!


◆◆◆◆◆



 (明日は客船ダンジョン混んでるかもなぁ)


 ここまで読んだ藍大はそんな風に思っていた。


「兄さん、2番隊~6番隊が客船ダンジョンに向かったそうです」


「そうか。何かあったら教えてくれ」


「はい」


 (大規模なクランは違うな。別動隊がいるなんて)


 ”楽園の守り人”の場合、DMU出向組や未亜が別行動することはある。


 だが、それは別動隊という物ではなく役割が違うだけだったりする。


 真奈との話が終わると、誠也は咳払いして藍大の方に向き直った。


「オホン。すみませんね、はしゃいでしまいました」


「いえいえ。冒険者とはこうあるべきでしょうから」


「なるほど、それも道理ですね。さて、逢魔さん達は明日2階から探索ですか?」


「その予定です。ここに来た目的はあくまで5階に到達して”レッドスター”とフロアボスを攻略することですから」


「忘れてなくて良かったです。今日は移動と発見でお疲れでしょうし、夕食の時間までゆっくりして下さい」


「ありがとうございます」


 誠也がベルを鳴らすと、メイドが応接室にやって来た。


「お呼びでしょうか?」


「ああ。逢魔さん達を客室に案内してくれ」


「かしこまりました」


 メイドに案内されて藍大達は客室へと移動した。


 藍大と舞がそれぞれに部屋を案内されたのは良いが、藍大とサクラ、リルは同じ部屋だった。


 というよりも、サクラとリルは藍大が寝る時に亜空間に戻すだろうとメイドが想定していたのだ。


 実際のところは寝る時に藍大はサクラとリルと一緒なのだが。


 この事実を知れば血の涙を流す者が多いことは言うまでもない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る