【Web版】大家さん、従魔士に覚醒したってよ(書籍タイトル:俺のアパートがダンジョンになったので、最強モンスターを従えて楽々攻略 大家さん、従魔士に覚醒したってよ)
第18話 前向きに検討することを善処するよ
第18話 前向きに検討することを善処するよ
今日は月曜日ということで、ダンジョンに出て来るモンスターも昨日とは違うのだろう。
そう予想していた藍大達だったが、最初からモンスターの群れが向かって来た。
1体に注目してみると、それは赤い一本角の白兎だった。
藍大はまだ距離がある内にモンスター図鑑を開き、その正体を確かめた。
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名前:なし 種族:アルミラージ
性別:雌 Lv:5
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HP:40/40
MP:40/40
STR:40
VIT:20
DEX:40
AGI:60
INT:0
LUK:10
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称号:なし
アビリティ:<
装備:なし
備考:なし
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(アルミラージが大安売り!?)
藍大がそう思うのも仕方のないことだろう。
何故なら、藍大はてっきりホーンラビットの名前が表示されると思っていたのだ。
司はアルミラージに見覚えがあったらしく、藍大に注意した。
「藍大、アルミラージは角も毛皮も高く売れるから傷を付けずに倒した方が良い」
「了解。舞、ズタボロにするなよ?」
「前向きに検討することを善処するよ」
舞は藍大のジト目に目を合わせようとしない。
「それはできない奴のセリフなんだよなぁ」
「行くぜコラァァァッ!」
「言った傍からこれか!?」
「藍大、舞が倒すよりも先に多く倒すんだよ」
舞が戦闘モードに入ってキャラ代わりしてしまうと、嘆く藍大に司が声をかける。
藍大も嘆いているだけでは舞にどれも傷物にされてしまうので、すぐに気持ちを切り替えて頷いた。
「わかった! サクラ、できるだけ一撃で仕留めてくれ」
「うん! そぉれ!」
藍大の求めに応じ、サクラは<
<
しかも、耐久度が0になって消えるまでにかかるMPは、発動に必要な分だけだから使い方にさえ気を付ければコストパフォーマンスが高い。
サクラとレベル差があるアルミラージでは、ちょっとやそっとでは黒い刃の耐久度が減らないのでサクサクとアルミラージの死体が増えていく。
司も手際良く倒しているが、それよりも注目すべきは舞だろう。
藍大がプレゼントしたマッシブメイスが手になじむようで、どんどんぺしゃんこ死体を量産している。
藍大達が戦闘を終えるまでにかかった時間は3分未満だった。
既に舞はアルミラージを倒し尽くして気が鎮まったらしく、荒々しさはどこかへ行ってしまった。
サクラと司が倒したアルミラージは売り物になりそうだが、舞が倒したアルミラージは良くて角が売れるかどうかというもので、毛皮はほとんど売れそうになかった。
「舞はやり過ぎ」
「だってメイスがしっくりきちゃったんだもん」
「前のメイスでも変わらないぐらい野蛮だったよ」
「ぐぬぬ・・・」
(司容赦ないな。その通りだけど)
美人に野蛮と告げる場面があるのかと思うかもしれないが、事実なのだから仕方がない。
とりあえず、売り物になりそうな物だけ回収してから藍大達は先に進んだ。
分かれ道までアルミラージに遭遇することはなく、藍大はサクラに訊ねた。
「サクラ、今日はどっちが良さそう?」
「こっち」
サクラが指差したのは右側だった。
その瞬間、右側の道の向こうから何か聞こえて来た。
「アオォォォン!」
自分がいるぞとアピールするような叫び声である。
「狼?」
「101号室にペットはいねえ。そこは保証する」
「そんなこと言わなくてもわかってるって。”掃除屋”じゃないかな?」
「狼の?」
「多分そうだと思うよ」
舞がやたら狼推しなので司は苦笑した。
とりあえず、声のする奥に向かって藍大達は進んだ。
先に進むと、藍大達はダンジョンに入って初めて石造りの扉を見つけた。
しかし、扉の前には額に白い三日月のマークがある黒い狼のモンスターが待ち構えていた。
全体的にモフモフしているが、狼は鋭い目つきで獲物を見つけたと言わんばかりの笑みを浮かべている。
「狼だな」
そう言いながら、藍大は報告用にそのモンスターの全体が写るように写真を撮った。
シャッター音は小さかったのだが、藍大が写真を撮った瞬間にモンスターがその音に反応した。
「アォン?」
ただの狼であれば、警戒しつつも近づくか興奮して飛びかかっただろうが、そのモンスターは冷静で首を傾げるだけだった。
隙を見せることはなく、狼は藍大を危険視し始めた。
そんなモンスターを放置して、藍大はモンスター図鑑を開いてステータスを確認した。
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名前:なし 種族:クレセントウルフ
性別:雄 Lv:15
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HP:200/200
MP:250/250
STR:250
VIT:100
DEX:120
AGI:250
INT:50
LUK:70
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称号:掃除屋
アビリティ:<
装備:なし
備考:なし
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(ヒット&アウェイタイプか)
クレセントウルフのSTRとAGIの能力値から戦闘スタイルを察すると、藍大の顔が引き攣った。
人間やサクラよりも速いのだから、注意しなければ速さでやられてしまうに違いない。
そこで藍大は思った。
(こいつ、テイムできないかな?)
藍大はクレセントウルフをテイムしたいと考えたのである。
その理由は単純で、自前の前衛が欲しかったからだ。
今はDMUが藍大の護衛のために麗奈と司を派遣してくれているが、日本のどこかのダンジョンで非常事態が起きれば2人もその現場に行くことになるだろう。
その時に藍大を守ってくれるのは舞だが、舞だって絶対に毎日藍大と一緒という訳にもいかないだろう。
サクラは後衛の役割であり、藍大よりも身体能力が高くとも前衛にはなれない。
前衛がいないのならば、前衛をテイムしてしまえば良いじゃないのという思考に藍大が至るのもおかしくない。
何故ならば、藍大は従魔士なのだから。
従魔士がモンスターをテイムして何か悪いことがあるだろうか。
ないに決まっている。
「あのクレセントウルフをテイムする。サクラ、舞、司、協力してくれ」
「主、手伝う」
「テイムできるの?」
「できないと決まった訳じゃない」
「僕は藍大の戦力UPに賛成だよ。協力する」
「ありがとう」
「別に私も反対してないもん。できるのか気になっただけだもん」
頬を膨らませて抗議する舞に対し、藍大は笑って頷く。
「わかってるって。ただし、舞は今回守りに徹してくれ。攻撃はしないこと」
「え゛?」
「攻撃を許可したら殴り殺しちゃうでしょ? だから盾で俺を守るだけにして」
「・・・は~い」
藍大を守るのが仕事であり、自ら殴りかかろうと思わないと戦闘モードには切り替わらないので舞は藍大の護衛に徹することを承諾した。
「司は万が一の場合にヘイトを稼いで」
「わかった。でも、どうするの?」
「こうするのさ。サクラ、<
「うん! 萌え萌え~!」
サクラの気の抜けるような掛け声の直後、ハートを模ったピンク色の光がクレセントウルフに命中した。
ところが、今の<
「ふん!」
サクラを庇うように舞がその前に走り出し、クレセントウルフの攻撃を盾でいなしてみせた。
「サクラ、<
「地獄行き~!」
サクラのINTはクレセントウルフのLUKを上回っているため、<
その影響はすぐに現れ、舞にいなされたクレセントウルフは足をもつれさせて転んだ。
「もう一度<
「萌え萌え~!」
今度は成功したようで、クレセントウルフは目をハートにして転んだままじっとしている。
藍大はテイムのチャンスを手に入れた。
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