【Web版】大家さん、従魔士に覚醒したってよ(書籍タイトル:俺のアパートがダンジョンになったので、最強モンスターを従えて楽々攻略 大家さん、従魔士に覚醒したってよ)
第7話 ここはまさかの日替わりダンジョン?
第7話 ここはまさかの日替わりダンジョン?
シャングリラにダンジョンが現れた翌日、藍大はサクラと舞と共に朝からシャングリラダンジョンにやって来た。
昨日のDMU本部での話し合いにより、舞は家賃代わりの護衛として同行している。
今のところ藍大しか自由にシャングリラのダンジョンに入れないので、藍大がダンジョンに入る時は藍大を守るために舞が必ず付きそうことになったのだ。
それに伴い、舞はシャングリラのダンジョン以外に出かけることが減る。
外出が減れば交通費も削減できるし、サクラと一緒にいて仲良くなれるチャンスも増えるのだから舞に損はない。
ちなみに、冒険者となった超人には専用のネット掲示板を使う権利が与えられる。
この掲示板では情報交換や作戦会議、雑談が行われているのだが今はそれは置いておこう。
とりあえず、シャングリラのダンジョンに関する事柄は藍大と舞、DMUの一部のみが知る重要機密扱いとなり、掲示板への書き込みも含めて口外厳禁である。
さて、フル装備の舞は良いとして、今日の藍大の服装はといえばツナギだった。
ツナギといっても昨日藍大が着ていた市販のグレーのツナギとは違い、ダンジョン産の糸で製造された耐久力の高いカーキ色のツナギだ。
頭には視界の邪魔にならないヘルメットを被っているが、武器となる物は手に持っていない。
藍大はあくまで従魔士だから自分で戦わない。
それに加え、万が一テイムすべきモンスターがいた時、モンスター図鑑をモンスターに被せるには両手が空いていた方が良いからこうなっている。
その一方、サクラはというと子供用の金属バットを持っていた。
これは101号室の中にあった物の中から、サクラが持てる武器となる物を探した結果である。
昨日は<
しかし、いつも都合良く投げやすい石がダンジョンに落ちているとは限らない。
サクラにも何か武器になるような物を持たせておくべきと舞が主張し、藍大もそれに納得した。
武器になりそうな物を101号室で探した結果、舞が子供用の金属バットを見つけてこれが良いと決めたのだ。
この金属バットは藍大がシャングリラの大家になった時にはあったので、おそらく以前の入居者の物なのだろう。
ダンジョンに入った藍大達は、舞、サクラ、藍大の縦並びで進む。
女性陣に守られるヒモの図と言えよう。
「立石さん、マネーバグいないね」
「そうだね。昨日はここら辺で遭遇したんだけど」
「キュ!」
「どうしたサクラ? あそこ?」
「キュ」
サクラが指差した先には、硬めの泥でできたマネキンがダンジョンの壁に背中を張り付けながらゆっくりと藍大達の方に向かって来ていた。
「あれはマディドールだね」
「立石さん、なんで壁にぴったりくっついたまま歩いてるかわかる?」
「わかんないね~。マディドールもマネーバグ並みに珍しくて、あまり生態がわかってないんだ」
「ここのダンジョン、マジで普通じゃないんだな」
「大家さんの日頃の行いのおかげだね」
「その発想はなかった」
「キュキュ」
何を雑談しているんだと注意するようにサクラが鳴くと、藍大と舞は雑談を止めた。
「ごめんな、サクラ。ところで、マディドールと戦いたい?」
「キュ!」
勿論だとサクラは頷く。
昨日の戦闘でレベルアップしたサクラは、自分を助けてくれた藍大を守るためにもっと強くなりたいのだ。
「わかった。立石さん、マディドールはあの1体だけみたいだし、サクラに戦わせても良い?」
「全然オッケー」
「ありがとう。んじゃ、ちょっと待っててくれ。マディドールを調べてみるから」
藍大はそう言うと、モンスター図鑑を開いた。
マネーバグと戦った昨日はうっかりして忘れていたが、藍大は目にしたモンスターのステータスをモンスター図鑑で調べられる。
だから、藍大はサクラに戦わせる前にマディドールについて調べてみた。
-----------------------------------------
名前:なし 種族:マディドール
性別:雄 Lv:5
-----------------------------------------
HP:40/40
MP:100/100
STR:30
VIT:30
DEX:10
AGI:20
INT:10
LUK:10
-----------------------------------------
称号:なし
アビリティ:<
装備:なし
備考:擬態中
-----------------------------------------
(いやいや、擬態し切れてないから。不自然だから)
マディドールのステータスを見て藍大が最初にツッコんだのは、擬態できていないのに擬態中と表示されている部分についてだった。
「サクラ、マディドールは<
「キュ」
「よし、良い子だ。それじゃ頼んだ」
藍大に頼まれたサクラは頷いてすぐに息を吸い、壁にぴったり張り付いているマディドールに向かって叫んだ。
「キャァァァッ!」
その瞬間、マディドールのLUKが0になった。
自分が見つかったことに気づいたマディドールは、バレたら仕方がないと壁から離れてサクラを攻撃しようとしたが足を滑らせて転んだ。
「サクラ、チャンス!」
「キュ!」
サクラのAGIはマディドールの3倍ある。
マディドールが立ち上がるよりも先にサクラが距離を詰め、サクラは金属バットをその勢いのまま振り下ろした。
1発、2発、3発、4発と殴り続けると、サクラはマディドールのHPを削り切った。
その証拠に、HPを全損して人型を保てなくなったマディドールが泥の小山へと変わっていく。
『サクラがLv6になりました』
『サクラがLv7になりました』
『サクラがLv8になりました』
システムメッセージがサクラのレベルアップを告げた。
サクラはマディドールを倒すと、褒めてくれと言わんばかりの表情で藍大に駆け寄った。
「よくできたね」
「キュ~♪」
藍大が頭を撫でると、サクラは嬉しそうに鳴いた。
そうしている間、舞はサクラが倒したマディドールの成れの果てである泥を袋に回収していた。
サクラを撫でつつ、藍大は作業中の舞に声をかけた。
「立石さん、その泥って売れるんですか?」
「大家さん、マディドールの泥は女性に大人気の泥パックになるんだよ!」
「あっ、はい」
美容に関して男が理解を示さない発言をすれば、間違いなくその認識を改めさせるための長い解説に突入する。
そのように判断し、藍大は舞にマディドールの泥を回収させることにした。
だが、舞の発言を聞いて黙っていられない者がいた。
サクラである。
「キュ」
藍大のツナギを引っ張ったサクラは泥を指差していた。
その顔はとても物欲しそうだった。
「サクラ、あの泥に興味があるのか?」
「キュ」
(幼女も女であることに変わりはないってことか)
藍大はそのように解釈した。
舞はマディドールの泥を詰めた袋にサクラの視線を感じると、手をワキワキさせながらサクラに近寄った。
「サクラちゃ~ん、ギュってさせてくれたらこの泥をあげるよ~」
「・・・キュ」
少し悩んだため間が空いたが、舞に玩具にされたくないと思ったサクラはプイと視線を逸らした。
「ぐぬぬ。フラれてしまった」
「立石さん、無理矢理は良くない」
「お義父さん、娘さんを私に下さい!」
「誰がお義父さんだ」
藍大をサクラの父親に見立て、舞がふざけたことを言うものだから藍大はピシャリとツッコミを入れた。
舞も冗談のつもりで言ったため、すぐに気持ちを切り替えて真剣な表情になった。
「冗談はさておき、昨日はマネーバグで今日はマディドールが出たね。シャングリラのダンジョンの謎がまた1つ増えたよ」
「ダンジョンってモンスターが1種類しか出ない訳じゃないでしょ?」
従魔士の
それゆえ、ダンジョンに1種類しかモンスターが出てこないなんてことはないと一般教養として知っているのだ。
「それはそうだけど、マネーバグやマディドールってレアなモンスターだから、普通のダンジョンだと同じ階層や同じエリアに出ないんだ」
「ここはまさかの日替わりダンジョン?」
「・・・その根拠は?」
「昨日が金曜日でマネーバグ、今日は土曜日でマディドールだから」
「それだ~」
「えっ、マジで?」
思い付きを言ったに過ぎない藍大だったが、舞はそれが正解かもしれないと目を光らせた。
「その可能性は大いにあるよ。金だからマネーバグ、土だからマディドールなら、明日の日曜日は何かな。楽しみだよ」
「明日が楽しみなのは良いけど、サクラがマディドールの泥を欲しがってるんでもう少し探索するよ」
「勿論だよ」
その後、何度かマディドールと戦ったことでサクラはLv10までレベルアップした。
マディドールの泥もサクラと舞が使う分、DMU経由で売却する分を確保できてから藍大達は昼前にダンジョンを脱出した。
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