刺激的な戦利品

 森の反対側が深く、また、意外にも豊かだったため、探索のついでに採集もしていたら、あっという間に時間が過ぎた。

 レオもこの数時間で、森に随分と慣れたようで、シリンの近くではあるが、手を離してメルと二人でハーブや果実をとっている。

 ふと、足元の自分の影を見るとずいぶん長くなっていた。顔を上げて木立の間の空を見ると、日も傾いてきたので、探索は途中で切り上げようと子供たちに声を掛ける。


 家に帰った後は、テーブルの上に埃を払った布を被せて、それぞれの採ったものをテーブルの上に並べる。ラークが一番多く抱えていた。

「随分、沢山採れたね」

「ふふん、これとかこれとか、美味しそうだろ!」

 シリンが感心すると、ラークは得意げに胸を逸らした。

 その横で、レオをチアリがしげしげとラークの戦利品を眺めてより分けていく。

「ラーク、これは多分食べられない。」

「えっ!」

「ねえ、ラークってば、この色のキノコ何!?」

「チアリ…このすごい色のキノコは、王族の毒殺とかにも使われるものって前に読んだ本に書いてたよ。」

 レオの言葉にチアリは掴みかけたキノコから慌てて手を離し、服の裾を伸ばして、布越しに恐る恐る摘み、食べられない方へぽいと放り投げた。


 みるみるうちに、大きな<食べられないものの山>ができ、それぞれがとってきた山が小さくなった。

 ただ、その内訳は、偏っていて、よく知っているものか、レオが教えてくれたものだけとっていた女性陣と、より分けている本人であるレオの山はほとんど減らない。


「えーほとんど残ってないじゃん」

「何でもかんでもとればいいってもんじゃないのよ」

 恨めしそうに小さくなった山を眺めるラークの横で、レオは最後に確認したキノコで手を止めた。

「これは…ラークすごいね!すっごい美味しいきのこって前に本に書いてたよ!」

「おお!」

 レオの言葉にいじけて机に突っ伏していたラークが復活した。が、

「でもびっくりするくらい毒が強くて三口で死んじゃうんだけど」

「じゃあ美味しいって書くなよ!書いたやつよく食ったな!」

 再びテーブルに項垂れたラークをメルがポンポンと慰める。

「でも残ったやつも美味しいやつだと思う」とレオもフォローをする。

 それに、食べれないもの達は、何かに使えるかも…と呟きながら、レオはそれらを布に包んで戸棚に仕舞い込んだ。

 その様子を何も言えず見守っていたシリンとチアリは、その布に触らないことを決意し、異端以外の咎でレオが捕まらないように、と心の中で願った。


 より分けた後は、昼間血抜きして燻した猪の肉と食べられるキノコをみんなで焼いた。きのことハーブでスープもそえると森の中で逃亡中とは思えない、豪華なラインナップになった。


「いただきます!!」

「美味しい…」

「おいしー!」「うんまいー!」

「私はこんなに豪華なの生まれて初めて食べたかも…」

 久しぶりに食べられたキチンとした食事、しかも、孤児院や村では、ほとんどお目にかかったことがないようなご馳走を前にして、皆はしゃいだが、しばらくすると全員が無言で、噛み締めるのに夢中になった。

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