慣れない力
子供達の話を聞いてから少しして、シリンたちは森の探検を再開することにした。
反対側は、先程まで探検していた方に比べて、少し森が深く、足元は樹木の根や、大きな石が目立つようになった。
転ばないようにと、シリンがメルの手をつなぐと、レオが「僕も」と言ってきたので、午前と同じく、両手を二人に繋がれた状態で探検する。
転んで二人を巻き込まないよう、慎重に慎重に、足を進める。
ありがたいことに、午前中ですっかり探索に慣れた子供たちはそれぞれの役割を進んで勤めてくれる。
「あっちにいい匂いのする葉っぱがある…」
「採ったものは俺にわたせよー!」
「シリン、ここの目印は確定でいい?メル、石ちょうだい?」
「う、うん……」
正直、シリンがやることがほとんどない。
ラークとチアリなんか全然寝れていないはずなのに、あんなに先の方に進んで、テキパキと確認を進めている。
大人なのに…役立たずだ…と思わず弱音を吐いてしまう。すると、レオが「そんなことないよ」と否定してくれた。
一回り以上年下の、小さい子に気遣わせてしまったことに、シリンが焦っている中、レオが話を続ける。
「僕ね、教会の人に捕まったあと、色んなものがよく分かるようになって、とっても気持ち悪かったんだ」
力が目覚めてからと言うことだろうか。
「さっき言ってたね、大丈夫?」
こくりとレオが頷き、続ける。
「きのうね、お姉さんが助けに来てくれてから、気持ち悪いの少なくなったんだ。」
「そうなの?」
シリンは意外そうにレオを見た。
先程は、シリンの顔を見てえずいていたので、むしろ自分のせいで悪化しているのでは…と、思っていたのだ。
「ここの森も、外はいきものがたくさんで、まだ慣れてないけど、手を繋いでたらそんなに気持ち悪くない。」
てっきり甘えているだけなのかと思ったら、そんな理由だったのか。
「レオの役に立ててるならよかったよ。」
「メルもお姉さんのとなりすきだよ!」
会話が置いてけぼりでさみしかたのだろうか、メルがシリンの腕に擦り寄る。
可愛い仕草に抱きしめたくなったのを我慢して、メルと繋いでいる手の甲をほほにやさしく擦り寄せる。
「ありがとう、メルの役にも立ててよかったわ」
「うふふ、こしょばいー」
思わぬレオの言葉をありがたく思いながら、シリンは自分のことを考えた。
自分の身に起こった能力に関係しそうなことは、焼かれた足が元に戻ったこと、レオの不調が治ったことだ。関連性をつけるとしたら・・・
「私は治癒に関係した能力なのかな…」
「近そうだけど、違うと思う…」
ぽろっと呟いた仮説はレオにすぐ否定された。
そして、レオは、少し垂れ目でくりくりとした灰色の瞳で、じっとシリンを見つめる。
「お姉さんのちからは……うっ、おぇぇ」そして、えずいた。
力の話をすると、毎回そうなるのはやめてもらえないだろうか。
「だから、なんでそうなるの?」
「お姉さんの力は見ようとすると気持ち悪くなる…うっ…」
「ほんとごめん、無理しなくて見なくていいから。なんか泣いちゃう。」
レオは、んーと唸りながら、確信を持った声でつぶやく。
「でも、もうちょっと慣れたらわかると思う」
「じゃあ、えづかなくなるまで力の分析は禁止ね」
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