子供達のちから
小屋に戻ったシリン達は、小屋の周りで、運んできた倒木や、大きめの石に座り、昼食のりんごを食べた。
「で…2人の力を整理すると」
食後は、シリンはレオとラークが猪の処理をしている傍らで、チアリとラークに自分たちが持っている不思議な力の話を聞いた。
「ラークは、びっくりするくらいの力持ち?」
「使えるようになったのは昨日からだから、あんまり慣れてないんだよなぁ」
レオのアドバイスの元、猪の血抜きをしていたラークが手をグーパーしながら頷いた。
「チアリは、ものや人を跳ね返すのかな?」
「危ない時だけね、ちょっとバチッとしたりするから苦手なの」
チアリも自分の手を見つめながら頷く。
「後は…、レオが色々と教えてくれたのも、もしかして…」
「ああ、レオは昔から大人も驚くくらい、勘が鋭くって記憶力も良かったんだけど…」
でもなぁ…とラークがレオをの様子を伺い、しゃがみこんで、大丈夫か?と声をかけた。
「昨日から、様子が変だから、きっとラークと同じように目覚めたんだと思う」
チアリも、心配そうにレオを見る。
レオは猪の匂いが辛くなったのか、少し青い顔でフラフラと戻ってくる。
「何日かまえから、目と耳とはなと頭が、ぐるぐるしてて…たまにきもちわるい…」
それだけつぶやくとレオそのまま、ふらふらとシリンの隣に座った。小さいこの子の負担が少しでも楽になるように、背中をさすってあげる。
タイミングはバラバラでも、みんな何かの力に目覚めているようだ。
と言うことは
「メルも能力をもってるの?」とシリンが問いかけると、代わりにチアリが答えてくれた。
「メルは泣くと涙が宝石になるの…後はたまに触ったものが…消える?みたいな」
「これわたしがつくったんだよー」
目印にしていたさっきの石を持って、メルが誇らしげに笑いかける。
「わーかわいいー、すごいねー」と、ひきつった笑顔で応えながらシリンは思う。いや待って、後半怖すぎないか。
にしても、と、改めて4人を見ながらシリンが呟く。
「噂では聞いていたけど、能力を持つ人って本当にいるんだね」
昔、両親に聞かされていたエジムの昔話には、不思議な力を持つ人や生き物は出てきていたし、教会の徳の高い神官は神に選ばれた特別な力を持っていると言われていた。
しかし、神官の能力を庶民が見る機会は無く、一般人は不思議な力を持たないとされていた。その上、一般人は持っていることが噂になるだけで、悪魔と契約して神から力を奪った魔術師として異端扱いされることも珍しくない。
そのため、エジムの人々にとって、不思議な力は、あくまで信仰の延長線上、伝説や迷信に近いものだった。
そいうえば、あの徳の低そうな神官も天気操ってたしな…と、シリンが一人で納得していると、レオが顔を上げた。
「いやいや、おねえさんは…もっと…おぇっ」
自分の顔を見てえづかれたことに、シリンは少し傷ついた。
少ししょんぼりしながら背中をさすり続けていると、メルもすこし真似をしてさすってみた後、飽きたのか、落としたりんごの芯に集まるアリの行列を観察し始めた。
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