第8話 ゴリラとお話しませんか?

 言語理解?


 言語理解って何?


 俺って今まで言語を理解していなかったの? ワロスw


 しかし、一瞬の隙も許されない死闘の中、そんな事を考えている暇なんて無いわけで・・・・・・。


 気がつくと二頭の角虎が一斉に襲いかかってきていました。


 はい

 絶体絶命です。


「ちょっと……待てやコルァア!?!?」


 必死に横っ飛びで回避を試みる俺。だって痛いの嫌じゃん?


 ゴリラの身体能力は思っていたよりも凄まじく、長距離の跳躍で攻撃は易々と回避することが出来た。


 そのまま近くの樹木をスルスルと登り、手頃な枝に乗って高所から二頭を見下ろした。


 高いところが安全かどうかはわからない。木登りしたのは気分である。


 俺を仕留められなかった角虎は、明らかに不機嫌そうに喉をグルグルならしながら俺を見上げた。


「なんと面妖な動き……やはり魔に連なる化け物か」


 ん?


 今、何かめちゃ低音ボイスの格好いい声が聞こえた気がするけど!?


「兄者、二人では危険かもしれません……一旦此処は引いて体勢を立て直しましょう」


「ならぬ! ここで見逃しては、後々我が一族に仇なす存在となろう……これ以上被害が広がる前に殺してくれる」


 ……なるほどね?


 言語理解ってこういうことかー(棒)


 いや……便利よ?


 便利だけど、下手に相手の事情とか聞いちゃうと戦いづらくない?


 何か、話聞いてる限りだと、この二頭は別に悪い奴じゃなそうだし……。


 どうしようかしら?


 そうやって悩んでいると、二頭がこちらに向かって飛びかかってきた。


「タンマタンマ!! 待って! ステイ!! 話し合おう! な!?」 


 咄嗟に叫んだ俺だったが、何故か飛びかかってきた二頭がピタリと動きを止めた。


「……お前、我らの言葉がわかるのか?」


 おや?

 おやおやぁ?


「わかる! めっちゃわかる! ほら、言葉が通じる通し、話し合いで解決しようよ! ね!? 暴力とか反対!」


「いや……先に同胞を殺したのはお前じゃないか」


 ごもっとも!


 言い訳の余地もございません!


 でもあれだね、問答無用で殺し合いを続けるかと思ったけど、意外と話を聞いてくれる感じだね。


「…………それに関しては本当に申し訳ない。俺もアンタらを初めて見たもんで、気が動転してたんだ」


「気が動転……お前は魔王の眷属では無いのか?」


 魔王?


「いや……魔王なんて聞いたことも無いけど……」


 二頭は互いに顔を見合わせた。


 それから、今まで黙っていた角の折れている方の角虎が話し出す。


「魔王の眷属では無い……か。だが、我らの同胞を殺したお前を許す訳にはいかん」


 ですよねー。


 お仲間不意打ちでぶっ殺しておいて、話し合おうは正直無いっすよね。


 殺し合いは避けられないかと覚悟を決めた次の瞬間、二頭がサッと同じ方向を振り向いた。


「この気配は……兄者!?」


「間違いない…………戻るぞ弟よ!!」


 そう言って、二頭は物凄い勢いでどこかへ去って行った。


 一人残された俺。


 ボッチなうw


「……気配? なんだソレ?」


 何も感じませんが?


 まあ、少し気になるし、追いかけてみようかな?


 そんな軽いノリで、俺は二頭を追いかける事に決めたのだった。

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ゴリラ・ゴリラ・ゴリラ ~異世界に転生したらゴリラでした~ 武田コウ @ruku13

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