第7話 ゴリラはつらいよ
二頭の角虎がゆっくりと俺の周囲を回り始める。
チリチリと大気を焦がすような異様な迫力。正直緊張感で吐きそうですw
うーん、どうしよう。
前に勝てたのは、背後からの不意打ちというイレギュラーだ。
正面から戦って勝てる気がしない。だってコイツらデカいし……爪とか牙とか怖いし。
喧嘩すらしたことの無い引きニートにどうしろっていうの?
ぐるぐると巡る思考が定まらないまま、戦闘の火蓋は切られた。
一頭の角虎が襲いかかってくる。
猫科特有のしなやかで鋭い動き。凄まじいスピードだが、この体になってから動体視力も上がっているのか、何とか動きを追うことができた。
グワッと大きく口を開けて飛びかかってくる角虎。軽トラ並の大きさを持つ猛獣が襲いかかってくる様は恐怖でしか無く、少しだけおしっこを漏らしてしまった(ゴリラだからセーフ)。
ヤケクソになった俺は、飛び込んでくる角虎の顎に目がけて、適当に下から拳を突き上げる。
所謂ボクシングで言うアッパーカットだろうか? 知らんけど。
とにかく、俺が適当に放ったアッパーカットは、ゴリラの身体能力もあってか見事な半円を描いてジャストなカウンターのタイミングで顎にぶち当たった。
情けない悲鳴を上げながら吹き飛ばされる角虎。
……しかし、前から思ってたけど明らかにこの腕力異常だよね? もしかして、俺ってゴリラじゃない?
そんな事を考えていると、背後にいたもう一頭の角虎が俺の背中に噛みついてきた。
ゴリラの堅く分厚い皮膚を突き破って肉に食い込む牙。
めちゃくちゃ痛い!! 泣きそう!!
俺は必死に歯を食いしばって痛みに耐え、背中に手を回して噛みついてきた角虎の角を握り締める。
短く息を吐き出して腹に力を込め、万力を込めて握り締めた角をへし折った。
角に神経が通っていたのか、痛みでのたうち回る角虎。
地面に転がるソイツに俺は馬乗りになると、頭に目がけて思い切り拳を叩き込んだ。
グシャリという嫌な手応え。
しかし角虎の生命力は強く、体を大きく捻って俺の体を振り落とす。
ひらりと宙で体勢を立て直し、地面に降り立つ俺(イケメン)。
傷ついた二頭は警戒したような目をして俺を睨み付けてくる。
挟み撃ちにされるよりは今の方が全然良い。
俺は自身の牙を剥き出しにすると、ドラミングをして威嚇した。初めてのドラミング、しかし本能に刻まれた行動だったようで、その姿は堂々としたものだったと思う(これで俺も一人前のゴリラだ)。
睨み合う角虎たちと俺。
異様な緊迫感。
先に動いた方が負ける(ような気がする。知らんけど)。
そんな時、脳内にまたあの音声が流れてきた。
『経験値が一定数に達しました。レベルが3にアップします』
『レベルアップに伴い、スキル ”言語理解” を取得しました』
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