第6話 ゴリラに対して過剰戦力では?







 目ぇえぇぇぇえぇぇぇぇえ!?!?!?!?!?!?


 眩しい!!


 ってか、眩しいを通り越して目が痛い!


 っていうか背中も痛い。


 めちゃくちゃ痛い。


 どれくらい痛いかというと、タンスに小指ぶつけた時の10倍くらい痛い!


 矢がめちゃ刺さってる!!


 何なのアイツら!?


 視界が元に戻ったら全員逃げてるし!!


 こっちが気持ちよく寝ているときに、家に火をつけるなんてヤバくない?


 しかも最後に見た奴、確かモンスターから俺が助けて上げた奴だよね?


 感謝するどころか家に火をつけてくるとかサイコパスかな?


 この世界に感謝という概念は無いの?


 いや、俺がゴリラだからですよね、知ってます。


 ゴリラに人権は無いのか?


 俺、意外と良いゴリラよ?


 しかし、背中に刺さった矢が痛い。痛いというか、少し痺れてきた。ヤバい、何か毒とか塗られてね?


 恐る恐る矢に手を伸ばし、ソレを引き抜く。


 ズボッと湿った音がして傷口から血が噴き出す。


 痛い……これ何に対する罰ゲーム? ヤバスwww


 全ての矢を引き抜いた俺は、燃やされたマイスウィートホームの様子を見に行った。


 自然に出来ていた良い感じの洞窟に、柔らかな植物を敷き詰めた居心地のよい物件だったのだが、見事に全て消し炭になっている。


 ちくせう。訴えてやる!!


 ……まあ、言葉とか通じないんですけどね!! ゴリラだから!!


 しかし、この場所はもう使えない。


 居場所がバレているという事は、また寝込みを襲われる可能性がある。


 俺はショボショボとその場を後にした。







 




 しかし新たな住処を探すにしても、水は必要だ。


 故に俺は川沿いを上流に向けて昇っていく事にした。


 下流に向かうと人里とかありそうで怖いし……。


 しばらく川沿いを進んでいると、不意に違和感を感じて振り返った。


 視界に入ったのは陽光を受けてギラリと光る鋭く大きな爪…………。







 爪?





「ギャァアァァアァア!?」



 右肩に爪を立てられ、思わず悲鳴が漏れる。


 あまりの痛みに暴れると、襲撃者はひらりと身を翻して距離を取った。


 涙目で襲撃者を確認する。


 軽トラほどの大きさの猫科を思わせる肉食獣。額には立派な一本の角が……。


 あれ? 何か見覚えがありますね(汗)


 もしかして、先日ボコったモンスターの親戚か何かかしら?


 角のあるモンスターと呼ぶのも面倒なので、俺はこのモンスターの事を角虎と呼ぶ事に決めた。


 角虎は殺意が抑えきれないといった様子で、歯を剥き出しにしながら距離を測っている。 しかし俺の災難はこれだけでは終わらなかった。


 目の前の角虎に対して頭を悩ませていると、背後からも静かな足音が聞こえた。


 前の角虎に気を付けながら体勢をいれかえ、横目で確認する。


 なんということでしょう! 背後にはもう一匹の角虎がいるではありませんか!?






 あの……。


 ゴリラに対して過剰戦力じゃないっすかね?

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