第3話 レベルってゴリラに関係あるんですか?
レベルアップ?
それってRPG的な、異世界転生でよくあるアレの事?
えっ? えっ?
じゃあ、アレですか? アレが出来ちゃう感じですか?
俺はキリリと顔を引き締めると、ウキウキしながらイケボで叫んだ。
「ウホッ!!(ステータスオープン!!)」
……何も起きない。森はシンと静まりかえっている。
うっわ、めちゃ恥ずかしいんだけど。穴があったら入りたい……ゴリラだけど。
しかしレベルアップって何だろう。さっき脳内でレベルアップのアナウンスが流れたが、特段何か変わった感覚も無い……。レベルアップって俺の考えているものと何か違うのだろうか?
レベルについて思考をしていると、背後で何か気配を感じて振り返る。
視界に入ったのは、ガクガクと無様に震えながら剣をこちらに向けている生き残りの男と、男に庇われるようにして背後で震えている女の姿。
WHY?
何故?
え? 俺ってさっきモンスターから君たちの事助けたよね?
何でガタガタ震えながら涙目で俺に剣を向けているの? ちょっと引きこもりにはリア充の考えはわからない。社会って怖い。
そこで一旦冷静になる俺。
よく考えてみると、今の俺はゴリラだ。
モンスターに襲われている時に、いきなり現れたゴリラがそのモンスターを殺した状況なんて恐怖MAX過ぎて笑えない。
「ウホウッホウホウホホ(大丈夫、大丈夫。ワタシコワイゴリラジャナイ)」
意志の疎通を図るが、どうにも俺の発する言葉は何故か言語の形を成していないようで、当然のごとく二人には俺の言葉は伝わらなかった。
剣を持った男が何かを俺に向かって叫ぶが、どうやら知らない言語のようで何を言っているのかまったくわからない。
しかし困った。意思の疎通がとれないとなるとこれからどうするべきか……。
………………
…………
……考えるのも面倒くさい。
この状況も、レベルについても
よく考えてみると、ゴリラであるこの俺にとってどうでもいい事だった。
今回は気まぐれでモンスターと戦ってしまったが、別に俺は正義の味方でも戦士でも何でもない……。
これからのゴリラ生活に一切影響の無い事柄に、出来の悪い頭を使うなんて無駄な時間を過ごしてしまった。
三十六計逃げるに如かず。
という事で、俺はくるりと体を反転させると近くの気に飛び乗り、全速力でその場を後にしたのであった。
◇
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