エンディング
その後のことを少し話そう。俺ときずナは無事に恋人同士になり、自分で言うのも何だけどアツアツって感じだ。……そう、まさにアツアツ。ラブラブの上位互換だ。一緒に登下校したり、休みが合えばデートに出かけている。世の恋人たちはこんなことをしていたんだなぁと謎が解けてスッキリしている。そりゃあ、あんだけ楽しそうなわけだ。
らりる先輩はというと、俺たちを全力全開で祝福してくれた。涙ぐんだ彼女に少なからず罪悪感は抱いてしまったけど、俺は見て見ぬフリをした。中途半端な優しさは、相手を傷つけるだけだと分かっているから。らりる先輩が望んだように、いつも通り変わらぬ関係でいる。
それよりも皆様(誰に呼びかけてるんだよ)が気になっているのは、死霊使いの孫の存在だろう。あの後、きずナと付き合ったことを報告がてら、もつ鍋さんとかにクリーム寺本さんに会いに行った。らりる先輩と陽凪もなぜかついてきて、思わぬ大所帯になったものの、彼らは嫌な顔1つせず飲み物を出してくれた。ここで死霊について話をしたのだけど、元から知っていた陽凪が落ち着いていたのは分かる。だけど、もう1人。妙に落ち着いていた人物がいた。
それはらりる先輩だ。
「もしかしたら、私かも」
誰にともなく呟かれた言葉に、もつ鍋さんたちが腰を上げる。
「それはどういうこと?」
かにクリーム寺本さんはメモ帳を開き、らりる先輩の言葉を待っている。
「私の家って、代々霊感が強いらしくて。先祖の中には、死者の魂と話ができる人がいたと聞いたことがあるんです」
「それは本当?」
「本当だと思って生きてきましたけど、実際のことは分かりません。見えてないのに見えてるフリを、聞こえていないのに聞こえるフリをしていた可能性はあります。残念ながら、私自身にはその力が備わっていないようで、確認しようがないんです」
「そうか……。だけど、それが事実なら死霊使いの孫に近いのは君かもしれないね」
もつ鍋さんはニッコリ微笑む。
「どうであれ、弦也くんが死霊たちから好意を伝えられたことに変わりない。伝説の解明、とまではいかなかったけれど、これはこれで満足だよ」
「ですね。ここ数日間、有意義な時間を過ごせましたし」
2人は顔を見合わせてうなずきあうと、俺の肩を抱いた。その勢いに押しつぶされそうになりながら、俺は今日までのことを振り返っていた。死霊に襲われてから、きずナと付き合うまで。体力的にも精神的にもキツい日々だったことは確かだけど、過ぎ去った今感じるのは、全く別の感情だ。楽しかった。めちゃくちゃ青春してた。不純な動機(睡眠不足改善)のために始めた死霊使いの孫探し。途中で力に目覚めた俺が、孫とアツいバトルを繰り広げる。そんな展開をちょっぴり期待していたところはあったけど、この結末も悪くない。ていうか、最高だ。
「よーし、弦也くんの奢りで焼肉行くか!」
「それ、大の大人が言っていいセリフじゃないですよ」
「私はもつ鍋さんに賛成かな。ね、きずナちゃん」
「はい、食べたいです!」
「皆さーん! お兄ちゃんの奢りなら、遠慮しなくていいですからねっ。ボッチが長かった彼は、貯金がすごいことになってますから」
「使ってあげなきゃ可哀想だな。俺も付き合うよ」
「いやいやいや、さすがに奢りはナシで!」
俺の話に聞く耳を持たず、1人また1人と外に飛び出して行く。
「早く早く、弦也!」
「分かったから引っ張るなよ!」
自然と綻んだ頬を隠して、俺も光へと駆け出した。
死霊使いの子孫は俺をおとしたい?〜『好意は人づてに』が効果的とは言うけども!〜 砥石 莞次 @or0ka_i6ion__
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