情報整理

お目当ての本を探しに行くという甘菜と別れ、俺は図書館の2階へ。ここは自習スペースがあって、テスト前になると、たくさんの学生で溢れる。俺も何度か使ったことがあるが、集中するにはすごくいい環境だった。

その一角で、俺は持ってきた雑誌を広げる。あの男がつけた余計な付箋を剥がし、死霊使い伝説のページだけに貼り付ける。これで、ページを確認する手間が省けた。さあ、続きから読もう。


備え付けのペンを片手に、気になるところに線を引いていく。死霊使い伝説。改めて読むと、情報が少ないな。変わったっていう力についての記載は一切ないし、肝心な子孫がどこにいるかについても、面白おかしく煽るだけ。結局、何も分かっていない。かにクリーム寺本め、調査を怠ったな。これは、先が思いやられるぞ。それでも、小さなヒントを探し続けること30分。記事の最後に、試す価値がありそうなことが書いてあった。




『今回のまとめ』


夜、一人で過ごしている時。

誰もいないはずなのに、誰かの声が聞こえる。

それが気になって眠れない。怖くてたまらない。

そう思っている人がいれば、勇気を出してほしい。まずは、相手の話に聞き耳をたててみよう。布団の中から顔だけ出して、寝たフリをしながらね!

そこで呪いの言葉が聞こえたら、迷わずプロに相談!

面白い話が聞こえたら、はいっ拍手!いい話のネタができたと喜びましょう。

特に、弐王頭町にお住まいの方は、ウワサの死霊使いについて、何か情報がつかめるかもしれませんよ!その際はぜひ、週刊アチラガワ大解剖、副編集長のかにクリーム寺本までご一報下さい!

それでは、皆さま。またお会いしましょう。またね!




聞き耳。

思えば、霊たちの話している内容に興味はあれど、実際に聞いてみたことはなかった。呪いの言葉なんて聞いたら、気が狂いそうで怖かったからだ。でも、かにクリーム寺本の言うように、その時はプロを呼べばいい。問答無用でお祓いしてもらって、すっきり成仏してもらう。それで一件落着だ。ていうか、最初からそうしてもらえば良かった。なぜに我慢なんかしてきたんだろう。まあ、この状況を面白がっている部分も少なからずあったし、ギリギリまで霊の存在に触れていたかったのかもしれない。全く、馬鹿としか言いようがない。睡眠不足になって、色々厄介被っているってのに。


とにかく、今後の方針は決まった。早速、今夜にでも聞き耳を立ててみよう。どんな話をしているんだろうな。どうかどうかどうか、呪詛系じゃありませんように。

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