6話
アパートの外壁やインターホンとは対照にドアとそのドアノブは新しくなっている。なんでも、両手が塞がっていると開けにくいからだとか。丁度両手が塞がっていた俺は扉に感謝して開ける。取り敢えずビニール袋を土間の脇、冷蔵庫の前に置く。
靴を脱ぎ、整えずにビニール袋から冷蔵庫へと食材を入れる。
今は15:14と夕飯にはまだ早い。大学の勉強を1時間程し、先週から作っている生物学の資料を纏める。資料は殆どが完成しているが誤字や脱字のチェックが済んでいない為まだ使うことは出来ない。先輩からもらった資料の殆どが杜撰でこうして新しく作っている。
そうして日が暮れ始め、良い時間帯だと思い立ち風呂に入る。
風呂から上がり、献立を確認する。作るのは所謂貧乏人パスタと言うやつだ。水を沸騰させ、塩を入れパスタを茹でる。熱したフライパンにサラダ油を引いて切ったニンニクを入れる。卵を割り小皿に移し混ぜ、ニンニクがきつね色になった所で卵を入れる。少し卵が固まってから混ぜる。そして茹で上がったパスタを入れ、後は適当にチーズと胡椒を加える。さて肝心の味だが、調味料さえあれば誤魔化せる味と言ったところだ。
やることは粗方やってしまったので、買ったばかりの小説を開く。同氏の小説はよく読んでおり今作は出だししか読んでいないが、同氏の作品で随一面白いと感じた。
だが小説の中の一つの文言が気になった。「人には一つ、大切な人がいるそれが人生を変えていく。良い意味でも、悪い意味でも」それに対して大切な人は多ければ多いほど良いとする信条が異を唱えたからだ。
否定の言葉を求める様に次のぺージを捲る。だが時計の音に惹かれ、白熱球の灯りが届く辺りまで下げられた時計に目を移し指している時間に驚く。
モヤモヤしながらモヤモヤしながら元凶である小説を机に置き、布団を広げ入る。「ふぅ」とため息を吐き、1日を思い返しそこで花図鑑の封を開けていなかった事を思い出す。
明日は土曜日で基本休み、掃除洗濯と資料を作り終えたらゆっくり読むか。
古い新聞紙を縄で括り付け、もう一つある新聞紙の束を持ち上げゴミを一箇所に纏める。昨日もぐっすり眠れた為気分が良く掃除ができる。
ガタゴトと大きな音を立てる洗濯機がもうすぐで洗い終えると経験が察知し、アパートの階段を下り隅へと移動する。予見どうり着いてから1分も経たない中に洗濯が終わった事を知らせる音が鳴る。
洗濯物を取り込み後ろを向くと洗濯物が大量に干されており、その中の3列目の右端が俺に割り当てられた場所だ。「物干し竿、自由に使って良いですよ 大家」と書かれた立札に感謝しアパートに戻る。
階段を上ると丁度出てきた、松崎さんと鉢合わせる。
「お早うございます、寺田さん。洗濯終わりました?」
「はい、丁度終わりました」
「ありがとうございます」
そう言って松崎さんは階段を下る。
掃除を早く終わらせて早く資料を完成させるかと意気込み、部屋へと戻る。
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