4話

 大学の校門にはサボりか、午前で講義が終わりなのか、ちらほらと人が行きかって居る。その一行に友人である寿が紛れていた。

 「よう、寿」

 「久しぶりだな、志悠」

 「一週間だけじゃん」

 寿は「はは」と短く笑う、言い返してこないのは寿が二週間程サボっていたからだ。

 「授業は午前で終わりか?」

 「眠くて聞いてなかったけど、漣がもう帰っていいって言ってたから終わりでしょ」

 完全に無駄足だった、が仕事もないから特に気にならなかった。

 寿と下らない話しをしながら来た道を戻り「俺、こっちだから」と駅に指差す。

 「あれ、志悠の家そっちだっけ?」

 「駅前の本屋見に行くだけだよ」

 「ふーん」と興味がない反応をされ、交差点で別れる。

 駅へと続く道は同じ大学生が行きかっていた。と言ってもここに来る大学生は通学の為ばかりで、駅前のショッピングモールを利用するのは俺くらいだろう。

 平日の昼過ぎ程だがやはり主婦と入学式が終わったのであろう子どもが多くいた、それは本屋も例外ではなかった。

 本屋の中は比較的子どもが少ない子どもは隣のゲーセンに夢中の様子だ。そうこう考えながらも目的の新作小説を手に取りレジへ向かう。

 だがとある一冊が気になり足を止める。『花の百科図鑑』質素なタイトルと子どもの為に作られたであろう表紙は普段、目に留める事もなかったであろう本だった。

 一瞥しそのままレジへ向かう。

 「合計で2276円です」

 小説は638円だしこの図鑑1500円くらいするのか、と思いながら3000円差し出す。

 「ありがとうございました」

 小銭とレシートを受け取り店員さんの挨拶に会釈し、本屋を出る。

 と同時に右足に何かが当たった。その方へ目を向けると女の子が尻もちをついていた。

 「大丈夫?」

 と手を伸ばす、だが言葉を掛けた直ぐ後に女の子は泣き出してしまった。

 女の子の親と兄が駆け寄り、泣き声は収まった。

 「すみませんうちの子が、ほら小和謝りなさい」

 「ごめんなさい」

 ぶつかった子と親が頭を下げる、次いで兄も頭を下げた。

 「大丈夫ですよ、お互い怪我もありませんでしたし」

 親子に会釈し、その場から去る。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る