3話
休憩を含めた4時間の授業を終わり少し余った時間を美樹ちゃんと過ごす。
「聞きたいことあったら遠慮せず質問してね」
「いいんですか?」
「分かることならね」
勿体振る美樹ちゃんにそう返すと目を輝かせ、本棚の中の1冊を開き見せてくれた。
「先生、この花の名前は何ですか?」
「アメリカナデシコだね」
美樹ちゃんの覗く花図鑑は大まかな種類ごとに分けられているが細かく記されてはいなかった。だが美樹ちゃんはその不足を補うように図鑑に名前を書いていく。
「先生このアサガオは?」
「うーん、見たことないな」
「そうですか」
キラキラした目で質問する美樹ちゃんにそう答えると残念そうに肩を竦めた。
「ごめんね、大学で学んだ所しかわからないから」
「こちらこそすみません、はしゃいでしまいました」
美樹ちゃんは頬を少し赤くさせていた。
「美樹ちゃんくらいの歳の子ならもっとはしゃぐよ、だから美樹ちゃんも余った時間くらい気を張らなくていいよ」
「そうでしょうか」
「大丈夫だよ、次はどの花が聞きたいの?」
美樹ちゃんはまた目を輝かせ花の名前を聞いてくる。
暫くして時間を確認すると13:06に針が向いていた。
「おっともう時間だね」
「はい、今日はありがとうございました」
「一応聞いておくけど体の方は変な所ない?」
「はい大丈夫です」
この子の体が弱いと、まだ俺の中では実感が湧かないが今回は本当に大丈夫なのだろう。
「先生、また来てくれますか?」
「呼んでくれれば何時でも来ますよ」
互いに挨拶し、その場を後にする。
愛子さんに授業が終わった旨のメールをし、池田先輩に連絡しても目ぼしいものは無いと言われ、気乗りはしないが大学に顔でも出しに行こうと決断した。
行く気ないけど。
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