第13話 娘は腹に魔導爆弾を縫い込まれて婚約破棄の書類にサインさせられました
「うっ」
クローディアは腹の痛みで目が冷めた。
お腹がとても痛かった。
体がだるい。
周りを見ると薄暗い、部屋の中のベッドに寝させられているようだった。
「気付いたようだね。クローディア」
その声は、婚約者のアーサーだった。
「酷いじゃないか。逃げようとしたなんて。もう少しでアデラが生贄にさせられるところだったじゃないか」
もう皇太子に何を言われてもクローディアはショックを受けなかった。
「本当に」
「お、義母様」
その横には赤い目をした義母コニーがいた。
「良くも逃げようとしてくれたものだよ。この穀潰しが」
コニーはクローディアの頬を叩いた。
「シャラは逃げようとしなかったわよ。あなたと違ってね。逃げていたら今ごろあなたは生きていなかったけどね。本当に恩知らずだよ」
「本当に穀潰しのお姉さまともこれでお別れね。私達のために頑張って死んでね」
アデラも笑って言った。
なんて最悪の養子縁組先だったのだろう。生贄に代わるためだけに今まで生かされていたのだ。
「さあ、この書類にサインするのです」
王妃がクローディアの前に婚約破棄の書類を差し出す。
クローデイアはそれを無視した。
「早く書きなさい」
王妃が急かす。
「嫌です」
クローデイアは首を振った。
「ふんっ。下らない事で反抗するのね。母が母なら、娘も娘ね。さすが王家を脅して娘を皇太子の婚約者にするだけの厚顔無恥な女から生まれたことはあるわ」
「母を馬鹿にしないで」
ばしっ
そのクローデイアの頬を王妃は引っ叩いた。
「生意気言うでない」
クローデイアは意地でもサインするものかと思った。
「もう陛下も皇太子殿下もお父様もサインしているのよ。あなた一人サインなんてなんとでもなるのに、本当に馬鹿ね」
義母が笑って言った。
「鬼ババア」
クローデイアは渾身の思いを込めて叫んでいた。今までの思いを込めた渾身の一言だった。
「何ですって。この穀潰しが。高価な薬を飲ませてやってここまで貴族の娘として育ててやって、なんて恩知らずな」
コニーは鬼の形相をして手を伸ばした。
凄まじい痛みがクローデイアを襲う。
「ギャーーーー」
クローデイアは悲鳴を上げた。縫い付けられた腹を思いっきり叩かれたのだ。いい加減に縫われた腹から血が吹き出していた。
「伯爵夫人。あまり腹に刺激は爆発してしまいます」
横からバーナードが声をかけた。
「あら御免なさい。ここで爆発させたら意味はないわね」
コニーは笑うと無理やりクローディアにぺんを持たせると手を添えて、サラサラとサインを書かせた。
ついに皇太子の婚約者でなくなった。それ自体はどうでも良かったが、母が死ぬ前に整えてくれた婚約だと思うと、堪らなかった。
クローデイアはお腹がズキズキいたんだ。バーナードはどうせすぐに死ぬのだからとお腹に魔導爆弾を埋めた跡をいい加減に処置したのだ。
痛みでクローデイアの意識はまた遠くなった。
(お母さん。もうじき側に行くね)
クローディアは薄れいく意識の中で母を想った。
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