第14話 大賢者は聖女を訪れました
ジャルカはクローディアの講義が終わるといつもは即座に山に帰るのだが、その日は珍しく、神殿の聖女の部屋に向かった。
しかし、聖女は忙しいらしく部屋にはいなかった。
勝手に待たせてもらうことにする。
何か隣国のマーマ王国の動きもきな臭かった。何かあれば自分にも連絡があるはずだが、シャラの件があってから近年はほとんど王室とも関係してこなかった。前国王の葬儀に顔を出したくらいだ。
ジャルカの弟子の魔導師達は、ジャルカがあまり変わらないことに驚いていたが。
何故か不吉な予感が湧いてきてイライラしながらジャルカは待っていた。
「おう、これはこれは大賢者様ではないか。久しぶりだな」
やっと帰ってきた聖女ミネルヴァは中にジャルカがいることに驚いた。
「遅いな」
ジャルカが不機嫌そうに言った。
「おいおい、これでも引退した貴様と違って私は現役の聖女だぞ。忙しい時もある」
「隣国絡みか」
「ああ、またきな臭いことになってきた。その対抗策としてまた生贄を使うそうだ」
「何じゃと」
思わず、ジャルカが立ち上がった。杖は今にも攻撃しそうなほど、光り輝いていた。
「まあ落ち着けジャルカ。前回も私はシャラを指定したわけではない。諸々考慮してコニーを指名したのだのだぞ」
「生贄など愚かな。何故正々堂々と戦わん」
「勝ち目がないと思ったのではないか」
ミネルヴァは思ったことを言った。
「前回もシャラが魔導師の能力を発現しさえすれば楽々勝てたのだ」
苦虫を噛み潰したようにジャルカは言った。
「そのために日々訓練に明け暮れたのに。あやつは勝手に生贄を代わりよって」
ジャルカが愚痴を言う。
「貴様がそう言う見込みをするから私もその親友のコニーを指名したのだ。友人の危機で目覚めると思ったからの。それを勝手に代わったシャラが悪いと思うぞ」
ミネルヴァは指摘した。
「今回は生贄はクローディアの妹のアデラにした」
「それで今日はクローディアが元気がなかったのか」
ジャルカは納得した。家族とうまくいっていない事はなんとなくジャルカは掴んでいたが、シャラによって命を救われたコニーがそこまでクローディアを虐げているとは思っていなかった。
「妹のアデラが生贄にされそうになれば、クローディアも発現するだろう」
「それが貴様の先読みか」
「そうだ。ただし、また、クローディアに代わらせていなければよいが」
ガタッと椅子をひっくり返してジャルカが立ち上がった。
「そうじゃ。その可能性がある」
青い顔をしてジャルカが立ち上がった。
「何を怖い顔をしておる。高々地界の人間どもの話ではないか」
「そう思うには儂は地界にいすぎた」
そう言うとジャルカは慌てて聖女の部屋を飛び出した。
それを呆然とミネルヴァは見送った。
「ジャルカらしからぬの。そろそろ私もこの地を去るか」
伸びをしてミネルヴァも立ち上がった。
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