リクエスト

 小説家になろうというサイトで詩のリクエストを募集して二つほど頂いたので二週間ずつそれぞれ書いて作品を投稿した。もともとこういったリクエストは詩を上手く思いつけるか心配だったので、前から興味はあったもののしてこなかったのだが、去年の十月頃にふとしたタイミングで募集をかけてみた。しばらく来なかったが、これを書いている(2021年4月10日)ちょうど一か月前に自分を取り巻く事情が落ち着きを見せたタイミングでリクエストを頂いたので、一か月を目途に書いた。頼まれて書いたことが無かったので、色々と考えさせていただける機会を得られ、また学べたこともあると思う。

 そもそもの詩を書くスタイルとして、僕は待つことが多い。最初の書き出しを思いつけばそれを一筆書きのように書けるのだが、その書き出しを思いつくことに時間がかかることが多い。下手すると半年以上は書けなかったりする。ただし今回はリクエストを頂いたうえでの作詩なので、そうするわけにはいかない。先に書いた「忠告文」という詩は「手紙」を題材にしてほしい、と言われてできたものであるが、手紙に関しては「アイリス」という詩を以前に書いてしまって、思いつくか心配であった。だけど、書こうと思えば書けるのだな、と学べた。それにこの作品を書いた後はかなり力が抜けてしまい、しばらくぼうと下手すると息をすることも忘れてしまったのではないか、と他人事かのように考えてしまうこともあったが、リクエストを頂いた方からは好評だったので最初の依頼としては良い結果を残せたと思う。「私と逢ったことありますか」と言われたのだ。もちろん会ったことなんてないので相手の姿や性別、考え方などというものは一切知らないわけだが、僕の好きな村上春樹がかつて言われたようなことを言われたのだ。嬉しいという感情以外には何もない。

 ただこんな詩で大丈夫かと常に考えながら書く詩というのは難しい。これまで好き勝手に書いた身からすれば相手が納得のいくものが一般的にどういうものか分からない。しかし、それを考えたのは最初の頃で僕にリクエストをした、ということは僕なりのものを求めているのだ、と捉え直した。結局僕は僕から出てきたものしか書けない。他人と似たようなものを意識するとまったく書けなくなるのだ。真似してみようとして、いかにその設定等が複雑に見えて僕には到底真似することができない。たびたび様々な歌のワンフレーズを借りて言葉を組み替えたり加えたり削除したりして僕の書きたいことに改変することがあるが、それはたまたまそのフレーズが僕の心だか脳だかのどこかに引っかかるものがあってやれるのであって、それが無かったら何もできない。また詩や小説をまるまる改変することはできない。それは僕の考えたリズムや感覚ではないし、それを丸ごと引っかかることはないだろう。

 そのあとの作詩は特に悩まずに書いた。悩んでいても何も書けなくなるし、不純物が多くなって面白くなくなるのだ。書き出しさえ思いつけば後は芋づる式に言葉が不思議と出てきてはちゃんと筋は通った(と僕は思っている)作品が出てくる。僕は僕の内側にいるなにものかに体を借りているだけだ。それは他の誰かの意識かもしれない。僕だってなんでこんなものが出てきたのか分からないと考えることなんてしょっちゅうある。しかし、誰かに良くても悪くても何かしらの影響を与えることができるならば、僕は嬉しいものである。

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