第45話 女の勘(もとい敷島さんの悪質なイタズラ)
そうして、自由な敷島さんはそうめんを平らげては、
「そんじゃ、まあそのうち浦佐がプンスカ怒ってはっちーの家に乗り込んでくると思うけど、よろしくなだめといておくれよー」
と、意味深な表情をしては自分の部屋へと戻ろうとする。
「……な、なんで僕の家に浦佐が乗り込んでくる前提なんですか、そこは敷島さんの家なんじゃ……」
「んー、女の勘?」
「勘ですか」
「案外馬鹿にしちゃいけないよ、女の勘とゲーマーのフラグは九割方当たるんだ」
「……どっちも経験談くさいのが気になります」
「当たるもんだよー? FPSとかやってて、『あっ、やられる』って思ったら次の瞬間華麗に殺されてるもんだし」
「……そういうものなんですね」
「そうそう。なんで、まあ頼むよ」
「は、はあ」
そして、敷島さんの予想は一日と経たずして的中した。
同じ日、僕と美穂が家でのんびり気ままに晩ご飯を食べているとき。
いきなりインターホンがけたたましく連打されたかと思うと、僕のスマホからおびただしい量の通知音が鳴り響いた。
「ちょちょちょちょ、なんだなんだどうした」
突然のことにびっくりしつつも、ロック画面を開くと、
うらさ:スタンプを送信しました
うらさ:スタンプを送信しました
うらさ:スタンプを送信しました
うらさ:スタンプを送信しました その他59件のメッセージ
……こ、これが噂に聞くスタンプ爆撃か。起きてるときにやられると迷惑以外の何物でもないな……。
「ちょ、ちょっと出てくるね」
僕は膝の上の美穂にそう伝えては、恐る恐る玄関に出ては、ドアを半分だけ開けると、
「あっ、ようやく出たっす、せ、センパイ、これどういうことっすか!」
なんかよくわからないものを手にした浦佐が、顔を真っ赤にして僕にそう叫んだ。
僕は浦佐が持っているものに目線を移すと……、
「ぶふぉっ! はっ、はぁ⁉ なっ、何持ってんのお前っ?」
彼女の手には、半透明のピンク色をした、意味深なゴムが。しかも、なんか中身入っているし。
「そ、そんなのこっちの台詞っすよ! 初音ちゃんの家に文句言いに入ったら、これがゴミ箱にこれ見よがしに入ってたっす、なっ、何やってるんすかセンパイ」
僕の家に突撃してくるってそういうことかああああああ! 敷島ああああああ! なんでそういう余計なことに頭が回るかなあああああほんとにいいいいいい!
「ちょ、待てっ、誤解だ誤解っ」
「誤解ってなんすか誤解って、初音ちゃんの知り合いの男の人はせいぜいセンパイくらいっす、ただでさえ貸してもらったゲームに18禁が混ざってて問い詰めたいところだったのにいいい」
問い詰めたいのは僕のほうだよおおおおおお!
「ちょっ、浦佐それ貸してみろっ」
このまま玄関先で使用済みと思しき避妊具を間に喧嘩をすると、真面目に事案になるので、さっさと誤解を解くため、僕は浦佐の手からゴムをひったくり、そっと匂いを嗅ぐ。
「……やっぱり。これ、水に片栗粉溶かしただけだって」
「ふぇ? 片栗粉?」
「……水に片栗粉溶かすと……なんだ、その……色々似た感じになるのよ……うん。本物はもっと生臭いっていうか……なんというか……うん」
っていうか食事中になんつーこと言っているんだ僕。
「……詳しいっすね。センパイ」
「誰のせいで説明させられてると思ってるんだ」
「初音ちゃんっす」
「正解だよ」
なんとか誤解を解くことに成功すると、今度は気まずい空気が僕らの間に流れる。しかし、それを切り裂くように、浦佐のお腹からキュウ、と可愛らしい音が鳴る。……なるほど、晩ご飯の香りが漂ってきたんだ。
「……とりあえず、入る? 今晩ご飯中なんだけど」
いたたまれなくなった僕は、目線を逸らしてプイっとそっぽを向いている浦佐に、提案した。
「……お邪魔するっす」
少し機嫌は悪そうだったけど、浦佐はそう言い部屋に入っていった。
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