第4話 奴隷少女
武器・防具一式を揃えて準備万端な俺達の冒険が始まろうとしていた。
「リョウ様、早速このノーマルアーマーを装着してもいいですか?」
「ん?あぁいいぜ」
シュルラにノーマルアーマーを装着しようと俺達が出会った路地裏に行く事に。
「わぁ~このノーマルアーマー良いですね!」
あっという間に装着したシュルラ。
ノーマルアーマーを装着したことで更に凛々しくなった。
「なかなか良いじゃねぇか」
素直に褒めると
「えへへっ」
シュルラは、はにかんで笑った。
そして、俺達は気持ちを切り替え、ギルドへ行く事に。
その道中、俺は気になっている事をシュルラに聞く。
「この世界、この街について何か情報を教えてくれ」
「世界……ですか?」
「あぁ、俺はこの世界について何も知らないんだ。この街についてもな」
「……リョウ様は何も知らなさすぎです」
シュルラは小声で言い、俺は敢えて聞こえないフリをした。
そして数秒間、間が開く。
どうやらシュルラはこの世界について知っているようだが、話したくないらしい。
どうしようかと悩んでいる間、シュルラがやっと口を開く。
「この街についてなら教えますけど……」
「それでもいい。是非教えてくれ」
この街の情報が分かるとこの先便利だからな。
「分かりました。では、教えます。この街の名前はリアルス。グレイリア家を中心に栄えた街です。ここには、亜人族、獣人族、竜人族、鬼人族、そして私達人間族等の種族が住んでいます。商業が盛んで、人々がこの街を通称「コマース・リアルス」と呼んでいます」
確かに周りを見れば、商店が多い気がする。
「こんなに盛んになったのは、グレイリア家のおかげですね」
「その言い方だと、昔のリアルスは今みたいに盛んじゃなかったと聞こえるが」
「はい……。リョウ様の言う通り、昔のリアルスは盛んな街ではなかったのです。昔のリアルスは治安が悪く、万引き、窃盗、喧嘩、事故、そして殺人まで日常茶飯事でした」
殺人までもが日常茶飯事だなんて、とんでもねぇな。
まぁ、元・殺し屋の俺が言っても説得力ないけどな。
「今も尚、悪さをしている種族もいます」
「確かに。シュルラを襲った暴漢みたいな種族もいたからな」
「はい、因みに私を襲った暴漢は、魔人族です」
「魔人族!?」
「この街で悪さをしている種族の多くは、魔人族なんです。魔人族には特有の角が生えており、仲間意識の為か独特な匂いを放っています」
確かにあいつらの匂い、尋常では無かったな……。
そして俺は、ふと疑問に思う。
「そう言えばオウロって奴、角生えてなかったぞ」
オウロ以外の2人にはちゃんと2本角が生えていた。
「私も気になりました。魔人族の筈なのに、何故角が生えていないのか」
「何かしら事情があるんだろう」
「そうですね」
オウロにも独特な匂いが放っていたし、魔人族には変わりないが、何故だろう。
少し魔人族の事が気になるな。
俺は、この世界についてシュルラに聞こうとしたが、彼女にも色々大変な事情があるのだろうと思い、深く追求しないようにと決めた。
そしてシュルラと共に、リアルスを歩いていると、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「あの人間族め!オウロ様の顔を傷付けやがって。絶対許せねぇ!」
どうやら、シュルラを襲った魔人族2人組のようだ。
「おい!もっと働け!」
「は、はい……すみません……」
「ったく、使えねぇな」
俺に気圧されて逃げた小心者の魔人族2人組の隣には、足枷が付けられた赤茶の奴隷の少女が謝りながら働いていた。
「あ……」
奴隷の少女は、持っていた大量の食料を落としてしまった。
「何やってんだ!奴隷のくせによォ!」
「また痛い目に合いてぇのか!」
奴隷の少女に対して、魔人族2人組が怒る。
「……ご、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」
何度も謝る奴隷の少女。
チッあいつら、シュルラの次は奴隷に手をかけたな。
にしてもこの状況、見てらんねぇ……。
助けようと歩み寄ろうとした瞬間、シュルラに止められた。
「もしかして助けようとしているのですか?」
「当たり前だ!シュルラの件もそうだったけど何故か放っておけねぇんだ……!」
行こうとしたら、またしてもシュルラに止められた。
「シュルラ、何故止める!!」
「私も助けたいのは山々なんですが、奴隷を助けてはいけないという法律があるのです。その法律を破ったら、死よりも苦しい処罰が科せられます」
「っ!!」
何だと!?奴隷を助けてはいけない法律って流石に酷すぎんだろ……!
「奴隷は奴隷主が所有しています。その奴隷を助けるという事は所謂、窃盗です」
つまり奴隷は、もの扱いって事かよ……。
奴隷というのは、人権がない人達の事を言うが、そもそも奴隷制度がある世界、どうかしてるぜ……。
「それでも俺は、見て見ぬふりは出来ねぇ……」
俺が悩んでいると、シュルラが
「そんなリョウ様の姿に私は救われました。好きですよリョウ様」
と、唐突の告白に俺は戸惑う。
「お、おう……」
改めて言われると何か照れるな。
「でも、私は何がなんでもリョウ様を止めます!!」
シュルラは笑顔から凛々しい表情に変わって真っ直ぐ俺の目を見て言った。
お前のその表情……嫌いじゃない。
「この、役立たずがっ!」
「奴隷は、奴隷らしく働け!」
魔人族2人組が奴隷の少女に暴行を加えている。
「……ご、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」
痛みに耐えながら、奴隷の少女は謝り続けている。
そんな状況を通り過ぎる人々が見て見ぬふりをしている。
一体、どうしたら……。
俺は、脳をフル回転して考え続ける。
そして俺は、ある1つの賭けを思い付く。
チッ、どいつもこいつも鬱陶しいな……!
俺はシュルラの手を離した。
「リョ、リョウ様、まさか助けるおつもりでは!?」
そう言ってくるシュルラに俺は、
「俺に良い方法があるんだ」
と言い、前に進み出る。
「良い方法?」
当然シュルラは、ぽかんとした表情をした。
俺は、魔人族2人組に近付く。
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