第12話 水族館

水族館に入ってすぐ、先輩は足を止めた。

そこにはシャチが泳いでいた。


「ーーこいつ、でかくね?」

先輩ははしゃいでいる。


「すごーい。おっきいね」


「コイツと一緒に写真撮ろうぜ」


先輩の提案で、シャチを背景に写真を撮る事にした。


「笑って笑ってー」


先輩はカメラに向かって変顔をしている。

そんな姿が面白すぎて、私は笑っていた。


写真を一枚撮ると、先輩が手を繋いでくる。人前で手を繋ぐって凄く新鮮で、でも少し恥ずかしい。


「それにしてもさぁ、前回は色々とあって疲れたよなぁ、、」


「ほんとにーーね」


「あれからどうだ?あの時の悪い夢見たりとかしないか?」


「うん。大丈夫!!あんな時、ほんとは怖がるんだろうけど、先輩がいてくれたから、心強かったし、幸せだった」


「ーーそっか」


思わず、手を取り合って、先輩と向き合う様な形になっている。


「あのさ、、俺、ホントに夏見の事、好きだよ!」


「私も中山先輩の事、、好きです」


「ーー先輩ってゆーの、、やめてくれる?下の名前で呼んで!」


無邪気な顔で笑いながら先輩は言った。


「ひ、、宏和の事、大好きだよ」


顔が熱い。

あの時、伝えたから大丈夫かと思っていたが、絶対、赤面している。

恥ずかしい。


「ーーこれから一緒に色んな事を経験していこうな」


「うん。あの事故を乗り越えられた二人に越えられない物はないでしょ?」


ーーそうだな。


二人は笑っている。

これからの未来に希望を膨らませながら、繋いだままの手を通じて、お互いの体温を感じながら。


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