第十三話:姉妹・1
「――ていうか、もしかして私どこかでミスティアちゃんと会ってたりする?」
「ええ、私は貴方様のことを存じておりました、アズナメルトゥ様」
「あーやっぱり? 最初から、私とどっちがリプカちゃんなのか見抜いてたもんね」
「直接の挨拶はありませんでしたが、晩餐会でお見かけする機会がありましたね」
「マジ!? ゴメン、覚えてないかも。どこのパーティー?」
「アグアキャナルの立食会で。お兄様の代わりに顔を出しまして」
「あー、あそこにいたんだぁ。ていうかアズナメルトゥ様じゃなくてアズでいいって! 畏まるような間柄じゃないっしょ? 言葉も固くしなくていいし」
「ではアズ様で。これが私のデフォルトです。私のことはミスティとお呼びください」
「んじゃ、ミスティちゃん! ねね、今度ミスティちゃんとも遊びに行きたいなっ。あっ、それとリプカちゃんとシィライトミア領域に遊びに行くとき、色々案内してほしい!」
「いいですね。私もパレミアヴァルカ連合には足を運びたいと常々思っていたので、そのときは是非――」
(この短い間で、とてつもなく仲良くなっている……!)
セラとのファーストコンタクトを終え大広間から出ると、そこにはすっかり仲良しになったアズとミスティアの姿があった。
「あ、リプカちゃん! ねっ、ねっ、どだった!?」
「い、いえ、今回は顔合わせ程度のお話だったので、なんとも……。でも、楽しい
アズのハイテンションな問い掛けに無難な返事を返しながら、リプカは周囲を窺った。
(……見られている)
「ん? どしたん?」
「いえ、なんでも。――ああ、ミスティア様、セラ様は私のお母様の元へ、挨拶へ向かわれたようです。戻られるまで、しばし待ってほしいとのことで……」
「分かりました、ありがとうございます」
「んじゃ、もうしばらく三人でリプカちゃんのお家見せてもらう? リプカちゃんのお部屋とか見てみたい!」
「ああいえ、ごめんなさい、私ちょっと向かうところがありまして――」
「おっ、そかそか。どこ行くの?」
「フランシスのところへ行ってまいります。まだ来てないようですが、まあ、出迎えなどでも」
「そ、そか。それじゃ、わ、私たちもお出迎えに向かったほうがいいよね?」
「――ああ、私一人で結構ですよ」
緊張が見て取れる、アズの若干焦った物言いに、リプカは珍しく、はっきりと断りを告げた。
「あれで、姉思いなところのある妹ですから。私一人で向かったほうが、フランシスも長旅の疲れを少しでも忘れられると思いますので……」
「――へぇ。そうなんだぁ。姉妹仲がいいんだね!」
「ええ」
アズの驚きが含まれる声に、リプカは今日初めての、物怖じも緊迫もない、混じり気のない朗らかな微笑みを浮かべた。
「何よりもの大切です。この世でたった一人の、姉妹ですから」
無垢に輝く微笑み。
――それを見た二人が、感嘆の息をつき魅了されたことには、当の本人はまるで気付かずにいた。
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