11 lie
protagonist:
JRの有楽町駅を降り、僕は家電量販店を横切って一直線に目的地へと向かう。そこは、バーラウンジのような機能を兼ね備えている。店員さんに待っている人がいる、と言って中にゆったりと分け入り、そしてカウンターの前にたどり着いた。
そのカウンターには一人の女性がいる。マスクを外した彼女の席にはカルパッチョと飲み物、そしてパンが並べられている。僕はゆっくりと彼女の横へ椅子を引いて腰がける。そして店員さんに言った。
主人公「キューバリブレを」
店員さんは頷き、すぐさま作りはじめる。そして呆然と僕をみつめている女性……のグラスを満たす飲み物を見つめる。僕はふと訊ねる。
主人公「飲めないんだね」
彼女は訊ねてくる。
陽子「どうして」
主人公「それ、カシスオレンジじゃなくてオレンジジュースでしょ。ストローをわざわざ外しているのは、金の檻に隠れるためかな」
驚いた彼女は席を立ち上がる。そんな彼女に僕は言う。
主人公「年下なんて信じられないね。陽子さん」
陽子「二十代なんてどこにでもいるでしょ」
そうして財布を取り出そうとバックをまさぐる彼女に、僕は言った。
主人公「君は十代じゃないか。お通しのそのパンも断れないほど、奥手な」
おもむろに席についた彼女は、僕を見据えて周囲に聞こえないように言う。
陽子「そんなに死ぬのが怖くないなら、試してあげようか」
そのバックの中には、銃があった。それを僕だけが見えるように見せている。
主人公「いいよ。君となら」
そうして僕は彼女の視線のさらに奥を指す。陽子は真依が遠目から銃を向けていることに気づく。彼女は銃をバックの中に押し込んで、訊ねてくる。
陽子「それで、誰なの……」
主人公「
僕はこの国で起きた最大規模の電車テロの追悼記事をiPhoneでみせる。
ためいきをつく陽子は言った。
陽子「何が目的?」
主人公「
沈黙の果て、彼女は訊ねてくる。
陽子「十時に私のオフィスへ」
主人公「十時ね」
そのとき、店員さんがキューバリブレを差し出してくる。僕はそれを受け取り、マスクを外す。そして陽子へと掲げて言った。
主人公「真の
微動だにせず眉を寄せて僕を見つめる彼女をよそに、僕はその全てを飲みきる。そして店員さんに黒沢さんから与えられた大きな紙幣の一枚を渡し、席を立った。
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