ヒロイン候補

 ダブルデートをした翌週。真田と海野と遥香は図書準備室にいた。海野と遥香の手には真田が書いてきたラブコメライトノベルのデートシーンの原稿があった。

 海野は読み終わると眼鏡を拭きながら口を開く。

「キャラもはっきりたってきたし、デートシーンもリアリティが増している。いいんじゃないか」

「お、マジで。今回はちょっと大人しいかなぁ、と思って書いたんだけどな」

「確かに主人公がヒロインに絡んでいたチャラ男の頭の上にチン~コ乗っけて『ヤシの木!』をやったくらいだが……まぁ、これくらいがちょうどいいんじゃないか」

「いやいや! 完全にアウトだよ!」

 さもこれくらいだったらセーフのような発言をする真田と海野であったが、常識人の遥香からしたら完全アウトであった。

「し、しかもデート終わった後にホテルに行ってるよ⁉」

「食後のスパイスにエロが必要かと思って」

「ずるいよ! 私は行けなかったのに!」

「え?」

「ごめん、なんでもないよ」

 真田の疑問に百%爽やか笑顔で答える遥香。海野から出された『肉食系清純派』という単語を遥香はみなかったことにした。

「うん、色々突っ込みどころは多いと思うけど、私も面白いと思うよ」

「遥香もそう言うか……でもなぁ、う~ん」

「なんだ何か問題があるのか?」

 珍しく悩む姿をみせる真田に海野が問いかける。すると真田も首を傾げながら口を開く。

「いや、ヒロインはこのまま一人でいいのかと思ってさ」

「ダメだよ信高くんヒロインは一人でいいの二人もでたら争いになっちゃうかもしれないし私が敗ける展開なんて創作でもみたくないしひょっとしたらリアルでもその展開にされたら包丁でnice boat.待ったなしだよ」

「怖い怖い怖い! 遥香の瞳からハイライトさんがグッバイしてる!」

 真田の両肩を掴んでまくしたてる遥香にドン引きする真田。そして海野はのんびりとその光景を写真に撮っていた。

「いや、個人的にメインヒロインが敗ける展開はないな、って考えの人間だから最終的に勝つのはメインヒロインなんだが」

「⁉ それって告白⁉」

「正気になれ村上。小説の話だ」

 完全に状態異常:混乱になっている遥香に冷たく告げる海野。崩れ落ちる遥香を無視して海野は真田に問いかける。

「もしヒロインを増やすとしたらどんなヒロインにするんだ?」

「やっぱり一人くらいは定番中の定番ヒロインがいてもいいと思うんだよ」

「定番とは?」

 海野の言葉に真剣な表情を浮かべる真田。

「金髪縦ロール『おーっほっほっほ系』笑いの貧乳美少女お嬢様」

「お前それはキャラ盛りすぎだろう」

「そうだよ、そんな漫画や小説の登場人物みたいな人いるわけないよ」

「だよなぁ……」

 海野と遥香の言葉に天井を見上げる真田。

 そして苦笑しながら遥香が口を開く。

「もっといそうな人にしたほうがいいんじゃない? そんな金髪縦ロール『おーっほっほっほ系』笑いの貧乳美少女お嬢様なんていないし……あれ?」

「そうだ。そんな二次元にしかいなさそうな金髪縦ロール『おーっほっほっほ系』笑いの貧乳美少女お嬢様なんかいるわけないだろう……うん?」

「そうだよなぁ。まさしく作者が考えました的な金髪縦ロール『おーっほっほっほ系』笑いの貧乳美少女お嬢様なんているわけ……ちょっと待って」

 遥香と海野と真田は同じ意見になったのか顔を見合わせる。

 するとちょうどよく図書準備室の扉が開かれた。

「失礼いたし『いたぁぁぁぁぁぁぁあっぁ!』な、なんですの⁉」

 三人の叫び声に入室してきた金髪縦ロール美少女(貧乳)はちょっと引くのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る