22:00

久しぶりの温泉は気持ちいいな。


待ち合わせた時間前に戻り、お客さんのカエデさんの帰りを待つ。


カエデさんは温泉地巡りが好きだけど、1人は寂しいから俺を1泊2日で指名してくれる。


月に一度会えたら嬉しいお客さんで、俺の指名代とこの旅館のお金も払ってくれる結構お金持ちなお姉さん。


「優くん、お待たせー。」


パタパタとスリッパの音を立てて駆け寄ってくるカエデさん。


夏「いつも旅館に来てるのにちゃんと結べないんですね。」


俺はこぼれ落ちそうな胸を周りにいる数人の男性客に見せないように両手で襟を締める。


カエデ「ありがとー。そのまま持ってて。」


カエデさんはその場で帯を締め直す。

こんな公共の場でやることじゃないと思うんだけどなと思いながら、俺は中身が見えないように浴衣を押さえる。


きっと、カエデさんのカーヴィなくびれが日本の浴衣には合わないんだろう。

いつもと部屋に戻る間に帯が崩れ始めてしまうから俺の方が上手くなってしまった。


夏「カエデさん、エレベーターに乗ったら俺が直しますね。」


カエデ「ありがとー。なんでだめなんだろうね?」


多分、この崩れたリボン結びのせいだと思う。

カエデさんが紐付きスニーカーを履いている所は見たことないからきっと結ぶのが苦手なんだろうな。


俺たちは静かなフロントを通り過ぎて、2人で狭いエレベーターに乗りゆっくりと3階に向かう。


その間にカエデさんの浴衣の帯を結び直す。

こうやって下乳に手を当ててっと…。


カエデ「…きついよ。」


夏「おへそより上に女性は結ぶものなんですよ。」


カエデさんはM気質だから少しきつめに結んだ方が好きだろう。


カエデ「なんか…、おっぱい上がった気がする。」


夏「この位置につけるとカエデさんのスタイルの良さが際立ちます。」


俺が結び終えるとちょうど目的の3階に着いた。


さっきより体温が高くなったかな。

カエデさんの手を掴み、この時間を楽しんでくれてるか確認していく。


324号室。


俺は持っていた鍵で扉を開け、出来上がってきたカエデさんを部屋に通す。


夏「呑みますか?」


夕方観光した商店街で買ったご当地ビールをカエデさんに見せる。


カエデ「うん。優くんも呑んで。」


夏「ありがとうございます。」


俺は冷蔵庫の上にあった栓抜きでフタを開けて旅館特有の小さいグラスを持って行き、布団に寝そべるカエデさんに注いで渡す。


カエデ「これ、美味しいの。花の香りがするんだ。」


カエデさんのお気に入りのビールなんだろう。

見つけた時すごく嬉しそうな顔してた。


夏「頂きます。」


カチンと優しくグラスを当てて一口飲む。


夏「すごい…!」


どのビールも苦くて好きじゃないんだよな。

トイレも近くなっちゃうし。

呑むなら果実酒が良かったな。


カエデ「でしょ!このふたこってビール好きなの。ここの温泉来る時は絶対買うんだ。」


カエデさんは嬉しそうに瓶ビールのラベルを眺める。


俺はその隙に時計を見る。

結構針が登ってきちゃってるな。


俺はビールでウキウキなカエデさんの帯を外す。


カエデ「ん…、ビールが…」


夏「俺よりビールですか?」


馬油の香りがする髪を耳にかけて耳裏からゆっくりキスしていく。

本当にカエデさんは首回りが弱い。


今日は疲れたから早めに寝かせてくれたら嬉しいなと淡い期待を抱きながら、カエデさんが好きなことをしていった。




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