12:00
学校の玄関ロビーでクラスの人たちと幹事の一くんたちを待つ。
幹事は5人。一くんといつも一緒にいる友達がやるらしいんだけど、今ここにいる幹事の
…段取り悪すぎない?
と、心の中で思ったことを留めておく。
すると階段から一くんたちの声が聞こえてきた。
一「ごめん!お待たせ!ここから15分のBARだよ。」
まだ酒を呑んだことをない子たちがその場を聞いただけに盛り上がる。
別に酒を呑める訳じゃないんだから、いつもと変わらないと思うんだけどな。
1番前を歩いていた一くんが少し歩いた所の半地下に入り、BARの扉を開ける。
一「姐さん、お客さん連れてきたー。」
一くんは顔が広いんだな。
今日も朝まで遊んでたみたいだしここら辺に詳しいのかもなと納得して、沙樹と愛海と一緒に荷物をロッカーに入れる。
クラスの大半の子がそのBARの煌びやかな雰囲気ですでに酔い始める。
それほど内装にこだわっていてこの店を経営してる人のセンスがみんなの心に刺さる。
「はーい。じゃあみんな学生証見せて。」
と、少し酒灼けしているお姉さんの声がみんなを1列に並ばせる。
俺はカバンから学生証を出して生年月日の部分を開いて順番を来るのを待ってる間、ふとお姉さんの様子を眺める。
…ん?あの唇にある織姫と彦星みたいな2つのホクロは見たことある。
俺はもしかしてと思い、携帯を開いてお客さんの情報リストしたメモ帳を見る。
ま、ま、ま、まさ…マサキさん。
俺はそのメモ帳を開こうとした時、順番が来てしまいバチっとマサキさんと目が合う。
マサキ「はい、次の子どうぞー。」
夏「はい…。」
俺はそのまま学生証を見せてノンアルコール用のスタンプを腕につけられる。
するとマサキさんは小さいメモを俺の手の中に押し込んできた。
そのまま俺は列から外れ、誰もいない角でメモを開く。
『ごめんね。一の知り合いだとは思わなかった。』
…マサキさんが謝ることないのに。
俺が昼職してるって嘘をついて学生をしてるのが悪いのに。
俺はそのメモにメッセージを書く。
『俺が嘘ついたのが悪いんです。ごめんなさい。』
そのメモを渡しに行こうとしたけれど、バーカウンターでドリンク作りの大忙しのマサキさんと一くんが息ぴったりで手早く作っていく。
俺はその様子を見て、沙樹と愛海と一緒にBARが落ち着くのを待ちながら出されたホットスナックをつまむ。
マサキさんの仕事、バーテンダーとは聞いていたけど自分のお店を持ってるとは知らなかったな。
繁華街に店を持つなんてだいぶ金がかかるはずなのに。
マサキさんは週に1度の月曜日、毎回3時間俺を指名してくれる。
見た目も心もお姉さんだけど、体だけお兄さん。
俺はそんなマサキさんの体のデトックスを手伝う。
俺の店はパネルで顔出しはしてないけど、モザイクから溢れる俺の雰囲気が気に入ったらしくて1番初めに指名をくれた大事なお客さん。
こんな近いところで仕事してるとは思わなかったな。
愛海「そろそろ行くか。」
俺たちは3人でひと段落したバーカウンターに向かう。
マサキ「はい。何にする?」
マサキさんがメニュー表を俺たちに見せてくれる。
愛海「シャンディガフお願いします。」
沙樹「一くんのおすすめは?」
一「竹鶴ストレート。」
マサキ「プランに入ってませーん。」
マサキさんは楽しそうに笑ってる。
いつもより元気そうで良かった。
沙樹「んー、じゃあモスコミュールでお願いします。」
マサキ「はーい。優くんは?」
「「「?」」」
みんながマサキさんの言葉に表情が固まる。
それを見てマサキさんの笑顔が引きつる。
一「姐さん、そいつ
一くんが冗談交じりでマサキさんの手を握る。
愛海「綺麗なお姉さんと知り合いなだけ羨ましいな!」
一「いいだろー。」
沙樹「で?夏は何にするの?」
夏「…オレンジジュースで。」
マサキ「…こ、この儚げくんタイプなの。びっくりさせちゃってごめんね!」
と、マサキさんは少し顔を引きつらせたまま、2人のドリンクを作る。
一「はい。オレンジジュース。」
ストロー付きのオレンジジュースを一くんに渡される。
夏「ありがとう。」
一「夏は呑まないのか?」
夏「この後、バイトだから…。」
じゃあしょうがないかと一くんは残念そうな顔をする。
俺は2人のドリンクを作るマサキさんの手さばきを見ながらいつあの紙を渡そうかと思ってると、一くんが俺の隣に寄ってきて耳打ちしてくる。
一「一目惚れ?」
夏「…連絡先渡そうかなと。」
すごいびっくりした顔をしている一くん。
マサキさんのことをどれくらい知ってる仲なんだろうか。
一「俺が2人連れてっとくから自分で渡せよ。」
夏「ありがとう。」
一くんはマサキさんが作った出来立てのカクテルを持って沙樹と愛海をソファ席に案内しに行く。
夏「…これ。」
その隙に俺はマサキさんにメモを渡すと、マサキさんはカウンターの下で周りに見えないようにメモを開いて文字を読む。
夏「ごめんなさい。ウソつきで。」
俺はマサキさんの濡れた手を取り、沙樹が頼んだモスコミュールの味がする指を甘噛みして指にキスする。
マサキ「…指名したら気まずい?」
夏「ううん。会えない方が寂しい。」
マサキ「…分かった。また来週ね。」
マサキさんが優しく微笑んでくれる。
良かった、ホテルを出た時と同じ顔をしてる。
夏「うん。待ってる。」
俺はそのままオレンジジュースを持って後ろを振り向くと、一くんが目の前にいた。
一「…姐さんが夏に惚れてる。」
マサキ「顔タイプだもーん。」
一「ふーん。あっそ。」
一くんは口を尖らせて自分のドリンクを手に取り、友達の元に行ってしまった。
俺はマサキさんに小さく手を振って沙樹と愛海の元に行く。
こんなところでお客さんに会うとは思わなかったけど大丈夫そう。
あとでマサキさんにメッセージ送って繋げとかないと。
俺は来週にも来てもらえるようにどんな文を送るか考えながら、その場を楽しんだ。
→ Love on the Weekend
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