7/2
7:00
久しぶりに家の天井のシミを数えながら寝たな。
俺は寝たまま、脚を四方に動かして全身の柔軟をする。
いつもはお客さんがいるからこんなこと出来なくて体が凝るんだよなと思いながら、体を動かし携帯で音楽をかけて目を覚ます。
この家からは近道を歩いて20分で学校に着く。
良物件だけれど、近くにスーパーもコンビニもないのが残念。
俺は冷蔵庫の中にあった茶色のバナナを食べながら支度を進めていると、携帯の通知音が鳴る。
『起きた?』
通知のメッセージを見ると沙樹からだ。
珍しいな、どうしたんだろう?
『起きてる。どうしたの?』
すると待つ暇もなく返信が来た。
『今日、弁当いらないのに持ってきちゃったんだ。食べる?』
その文字列に俺の腹が鳴る。
『食べたい!何時くらいに学校着く?』
『さっき電車乗ったから30分くらい。』
『分かった!屋上で待ち合わせで。』
俺は支度を終え学校に向かう。
久しぶりに歩いて学校に向かうな。
こんなにゆったりとした朝いつぶりだろうと、学校のある大通りを歩いてるとずっと前の方に昨日と同じ服の
また、朝まで遊んで今日も遊ぶのか。
その体力羨ましいな。
俺は一くんの背中を見送りつつ、沙樹の弁当のお礼に板チョコを1つコンビニで買ってから学校の屋上に駆け足で向かうとまだ扉は開いていなかった。
屋上の扉が開いてないってことは沙樹は来てないっぽいな。
俺は角に投げられていたドアストッパーを拾い、扉を開けて強風が吹いても閉まらないようにしっかりとつけて、しばらく横になり朝日で日向ぼっこをしていると沙樹が来た。
沙樹「おはよう。なんかごめんなー。」
夏「ううん。本当に弁当食べていいの?」
沙樹「僕、今日に限ってオムライス食べてきたから腹一杯なんだよね。食べてくれると助かる。」
と、沙樹は弁当箱の蓋を開けて食品が痛むのを防止するシートを箸で取る。
沙樹の弁当はいつも手作りのものばかり。
こだわりで冷凍食品は入れたくないと前に言っていた。
夏「うわぁ!沙樹の玉子焼き入ってる!美味いんだよなぁ。」
俺は沙樹の手元にある弁当の中身を見つめていると沙樹が弁当袋からソースを出してきた。
この角に詰められたコロッケ用にソース持参なんて最高な昼ご飯だな。
「おはよー。」
と、沙樹の弁当の完璧さに心踊らせていると、俺たちの背後から挨拶をされ振り向くとさっき見かけた一くんが違うシャツを着てこっちに歩いてきた。
沙樹「おはよう。やっぱり一くんは来るの早いな。」
一「2人こそ。朝弁?」
一くんが沙樹の持ってる弁当を覗き込む。
夏「うん。沙樹がお昼ないのに作ってきたから今から食べようって。」
すると一くんの目がキラキラし始めた。
朝ご飯、食べてきてないのかな?
一「…そうなんだ。俺もちょっともらっていい?」
沙樹「いいよー。僕は朝食べて来てるから2人で食べて。」
一「ありがとう。」
そう言って、一くんは俺の隣に座って最初の1口にあの美味い玉子焼きを食べる。
一「美味い。」
相当美味しかったのか、俺が見る一くん史上最高の目の輝きをしてる。
けれど、綺麗な目をしてるのに前髪がとても邪魔だ。
せっかくの綺麗な目をしている顔をもっと見せてほしいんだけどな。
沙樹「ありがとう。一くんって自炊するの?」
一「しないな。店で食っちゃう。」
目を輝かせたまま一くんは俺と一緒に沙樹の弁当をつまんで食べていると、沙樹が俺と同じ事を思っていたらしく、
「前髪、あげたらいいのに。」
と、一くんに言った。
一「…なんで?」
その言葉に一くんは何か引っかかったのか、動きを止めた。
沙樹「顔が整ってるのにもったいないなって思ってたんだ。けどその髪型気に入ってるんだね。」
沙樹は微笑んで俺があげたチョコを食べ始める。
夏「一くんは色白だから今の黒髪が映えるよね。」
きっとこのもっさりと前髪が目にかかる髪型が一くんは好きなんだろう。
色も肌に似合うように真っ黒に染めたりしてるんだろうか?
一「ブリーチ痛いって聞くから挑戦出来ないんだよな。…今度、パーマかけてみようかな。」
少し寂しそうに一くんは笑った。
…なんか嫌な事言ってしまっただろうか。
沙樹「いいじゃん。ちょうど夏だし、一くんの黒髪パーマ似合いそう。」
夏「だね。俺もヘアチェンしたくなってきた。」
俺は会話を一くんから俺に向けるように携帯を開き、あまり興味のないヘアカタログを眺める。
普段は授業の事くらいしか話さないからどこに地雷があるか分からないな。
気をつけないと痛い目にあうから言葉の選択には細心の注意を払わないと。
俺は一くんと弁当を食べながらダーク系のヘアカラーを選び、朝ご飯を済ませた。
→ 夏空
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